症状

食欲不振

■ 食欲不振を引き起こす鑑別疾患(10選)


1. 胃癌・消化管癌

中高年に多く、進行してから症状が現れることが多いため注意が必要です。体重減少、腹部不快感、吐き気、早期膨満感なども伴いやすいです。
検査:胃カメラ(上部消化管内視鏡)、腹部超音波、CT、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)


2. 慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍

ピロリ菌感染やNSAIDs(鎮痛薬)使用などが原因となります。みぞおちの痛みや胃もたれ感、吐き気を伴うことが多く、若年〜高齢まで幅広く発症します。
検査:胃カメラ、ピロリ菌検査(抗体・尿素呼気試験)、血液検査


3. うつ病・神経性食欲不振症(摂食障害)

精神的ストレスや抑うつ状態が背景にあり、食欲の低下と体重減少が目立つ症候群です。若年女性に多い傾向がありますが、高齢者のうつにも注意が必要です。
検査:問診(精神症状評価)、心理テスト、必要に応じて精神科受診


4. 慢性肝炎・肝硬変

ウイルス性、アルコール性、脂肪性肝疾患(MAFLD)などが原因となります。倦怠感や食欲不振、黄疸、腹水を伴うことがあります。進行すると重篤です。
検査:肝機能検査(AST、ALT、ALP、γ-GTP)、腹部超音波、ウイルスマーカー


5. 慢性腎臓病(CKD)・尿毒症

進行した腎機能障害では尿毒症性の悪心や嘔気、食欲低下が見られます。高齢者や糖尿病患者に多く見られるため、定期的な腎機能の確認が重要です。
検査:血液検査(クレアチニン、eGFR、BUN)、尿検査、腹部エコー


6. 甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの不足により、代謝が低下し、無気力や食欲低下、体重増加が見られます。女性に多く、中年期以降に発症しやすいです。
検査:血液検査(TSH、FT4)、自己抗体(抗TPO抗体など)


7. 心不全・うっ血性胃腸障害

高齢者に多く、心機能低下により胃腸への血流が不足し、食欲不振や腹部膨満感が出現します。下肢のむくみや労作時の息切れを伴うこともあります。
検査:心エコー、BNP測定、胸部X線、心電図


8. 感染症(結核、ウイルス感染、COVID-19など)

慢性の感染症では発熱・倦怠感とともに食欲低下が長期間続くことがあります。結核は高齢者や糖尿病患者で再活性化する場合もあります。
検査:血液検査(炎症反応)、胸部X線、結核検査(T-SPOTなど)、PCR検査


9. 悪性腫瘍(がん悪液質)

進行がんでは、腫瘍性サイトカインの影響により著しい食欲低下と体重減少(悪液質)が生じます。特に膵臓がん・肺がん・胃がんなどで顕著です。
検査:CT・MRI、PET-CT、腫瘍マーカー、血液検査


10. 薬剤性食欲不振

降圧薬、抗うつ薬、抗がん剤、糖尿病治療薬(GLP-1作動薬など)など、さまざまな薬剤が副作用として食欲低下を引き起こすことがあります。
検査:内服薬の確認と中止試験(医師の指示のもと)、血液検査


■ まとめ

食欲不振は一時的な生理的変化としても起こり得ますが、背景に重篤な疾患が潜んでいることもあります。特に、2週間以上続く・急激な体重減少を伴う・全身倦怠感や発熱を伴う場合には早期の精査が必要です。

当院では、内科・消化器科を中心に、身体的・精神的側面の両方から丁寧に評価を行っております。気になる症状がある方は、早めにご相談ください。