症状

体重減少

【体重減少を起こす病気とその鑑別】

体重減少とは、明らかな食事制限がないにもかかわらず、体重が持続的に減少する状態を指します。
短期間での体重減少(数か月で5%以上など)は、悪性疾患や内分泌疾患、代謝異常、感染症、精神疾患などの重要なサインであることがあります。


1. 悪性腫瘍(がん)

体重減少の最も重要な原因の一つで、胃がん、大腸がん、膵がん、肺がんなどで頻繁に見られます。
食欲不振、倦怠感、発熱、貧血、便通異常などを伴うことが多く、中高年以降での急激な体重減少は特に注意が必要です。
検査:血液検査(腫瘍マーカー)、腹部超音波・CT、内視鏡検査、PET-CTなど。


2. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)

代謝が過剰に亢進し、食事量が保たれていても体重が減少します。動悸、発汗、手指の震え、易疲労感などを伴うのが特徴です。
20〜40代女性に多く発症します。
検査:血液検査(TSH、FT3、FT4)、甲状腺自己抗体、超音波検査。


3. 糖尿病

インスリンの作用不足により、糖がエネルギーとして利用できず、脂肪や筋肉が分解されることで体重が減少します。
口渇・多飲・多尿・疲労感を伴うのが典型的です。
検査:血糖値、HbA1c、尿糖、尿ケトン体。


4. 慢性胃腸疾患(胃潰瘍、慢性胃炎、消化吸収障害など)

胃痛、胃もたれ、下痢、腹部膨満などの消化器症状を伴い、栄養吸収低下から体重が減少します。
ピロリ菌感染や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)も原因となります。
検査:胃内視鏡、便検査、腹部エコー、ピロリ菌検査、消化吸収機能検査。


5. うつ病・摂食障害(神経性食欲不振症など)

精神的ストレスや抑うつ気分が背景にあり、食欲の低下や摂食回避によって体重が減少します。
若年女性に多いほか、高齢者うつ病でも食欲低下・体重減少を呈することがあります。
検査:問診・心理評価(うつ尺度テスト)、除外的に血液検査・甲状腺機能検査。


6. 慢性感染症(結核、HIVなど)

発熱や倦怠感に加え、食欲低下や消耗性変化による体重減少を来します。
結核は高齢者や糖尿病患者に再活性化することがあり、肺だけでなく腎や骨にも波及する場合があります。
検査:胸部X線、CT、結核検査(T-SPOT)、HIV抗体、血液検査。


7. 慢性肝疾患(肝硬変・肝炎・肝がん)

肝臓機能の低下により、食欲不振や代謝障害による体重減少が見られます。
黄疸、浮腫、腹水、倦怠感などの随伴症状が特徴です。
検査:肝機能検査(AST、ALT、ALP、ビリルビン)、腹部超音波、腫瘍マーカー(AFPなど)。


8. 慢性腎不全・尿毒症

腎機能の低下により食欲不振、悪心、嘔吐、倦怠感が出現します。
中高年の糖尿病や高血圧の既往がある方では特に注意が必要です。
検査:血液検査(クレアチニン、eGFR、BUN)、尿検査、腹部エコー。


9. 悪性リンパ腫・白血病

体重減少、発熱、寝汗(B症状)を伴うことが特徴です。頸部・腋窩・鼠径部のリンパ節腫脹や全身倦怠感を伴います。
若年〜高齢まで幅広く発症します。
検査:血液検査(LDH、白血球分類)、造影CT、リンパ節生検。


10. 慢性心不全・悪液質

心臓のポンプ機能低下により**全身の栄養循環が悪化し、筋肉量が減少(心臓悪液質)**します。
息切れ、むくみ、倦怠感を伴います。
検査:心エコー、BNP、胸部X線、心電図。


■ 診断に必要な検査一覧

検査項目 概要
血液検査 貧血、肝腎機能、甲状腺機能、炎症反応、腫瘍マーカー、血糖値など
尿検査 糖尿・蛋白尿・感染症の評価
画像検査 胸部X線、腹部エコー、CT、MRIなどで臓器異常を評価
内視鏡検査 胃・大腸の悪性疾患や炎症の確認
心理評価 うつ病・摂食障害が疑われる場合に実施
特殊検査 甲状腺ホルモン、HIV、結核、BNPなど疾患特異的な検査

■ まとめ

体重減少は、身体のどこかに疾患が潜んでいるサインであることが多く、特に3か月以内に体重の5%以上が減少する場合は、医療機関での精査が必要です。
悪性腫瘍・内分泌疾患・感染症・精神疾患など多岐にわたるため、全身的な視点での診断と早期介入が重要です。

当院では、血液検査・画像検査・内視鏡検査などを組み合わせ、原因を的確に見極めた上で適切な治療・管理を行っております。
「最近食事量が変わっていないのに体重が減っている」と感じた際は、早めのご相談をおすすめします。