症状

腰痛

■ 腰痛を引き起こす主な鑑別疾患(10選)


1. 腰椎椎間板ヘルニア

比較的若年〜中年層に多く、男性にやや多い傾向があります。椎間板が突出し神経を圧迫することで、腰痛に加え坐骨神経痛(下肢のしびれや痛み)を伴うことが多いです。
検査:腰椎MRI、X線、神経学的所見の確認


2. 変形性腰椎症・脊柱管狭窄症

中高年に多く、加齢に伴う脊椎の変性や狭窄により神経を圧迫します。間欠性跛行(歩くと脚がしびれるが休むと回復)が特徴です。
検査:腰椎X線、MRI、徒手検査(SLRなど)


3. 圧迫骨折(特に骨粗鬆症性)

高齢女性に多く、転倒歴がなくても起こることがあります。背中から腰にかけての鋭い痛みが主で、寝起きや体動時に強くなる傾向があります。
検査:腰椎X線、MRI、骨密度測定(DEXA)


4. 腎盂腎炎・尿路結石

腰部〜背部にかけての片側性の痛みや鈍痛・発熱・排尿症状がある場合は腎疾患を疑います。尿路結石では突然の激痛(疝痛発作)が特徴です。
検査:尿検査、腹部エコー、CT、血液検査(炎症反応など)


5. 解離性大動脈瘤(大動脈解離)

突然発症する背部や腰部の激痛は要注意です。高血圧や動脈硬化の既往がある中高年男性に多く、生命を脅かす重大疾患です。
検査:造影CT、血圧・脈拍測定、心電図


6. 悪性腫瘍(膵がん・骨転移・多発性骨髄腫など)

夜間痛や安静時痛、原因不明の体重減少があれば注意が必要です。前立腺がん・乳がん・肺がんなどからの転移性骨腫瘍が腰椎に及ぶことがあります。
検査:腹部エコー、CT、MRI、骨シンチグラフィー、腫瘍マーカー、血液検査


7. 子宮内膜症・子宮筋腫・骨盤内炎症性疾患(女性)

月経周期に連動した腰痛や下腹部痛を伴い、骨盤内の器質的異常が関与していることがあります。若年女性に多く見られます。
検査:経腟超音波、内診、血液検査(CA125など)


8. 強直性脊椎炎

若年〜中年の男性に多く、朝方の腰のこわばりや運動で改善する痛みが特徴です。HLA-B27陽性者に多く、炎症性腰痛の代表疾患です。
検査:血液検査(CRP、HLA-B27)、X線、MRI(仙腸関節)


9. 感染性脊椎炎(脊椎カリエス、化膿性椎体炎など)

糖尿病や免疫抑制状態の患者に多く、発熱・炎症反応の上昇・持続的な腰痛が特徴です。早期診断・治療が不可欠です。
検査:血液培養、MRI、血液検査(CRP・白血球数)


10. 心因性腰痛(心身症)

身体所見に乏しく、ストレスやうつ状態と関連して慢性化しやすい腰痛です。長期にわたる痛みや治療抵抗性の場合、心理的背景にも注目します。
検査:除外診断的に行う。必要に応じて心療内科的評価


■ まとめ

腰痛は非常にありふれた症状である一方、見逃すと重大な病態に至る疾患も含まれます。年齢・性別・随伴症状に応じて整形外科・内科・泌尿器科・婦人科的視点から包括的な評価が求められます。

当院では、画像診断(X線・超音波・CT)や血液検査を活用し、早期診断と的確な治療方針の提示を行っています。気になる腰痛が続く場合は、早めの受診をおすすめします。