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鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血について
■ 疾患の概要
鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)とは、体内の鉄が不足することによって赤血球中のヘモグロビンが十分に作られなくなり、血液の酸素運搬能力が低下する状態を指します。貧血の中でも最も頻度が高く、日本では特に女性に多くみられる疾患です。
ヘモグロビンは赤血球の中に存在するタンパク質で、肺で取り込んだ酸素を全身の組織へ運ぶ重要な役割を担っています。このヘモグロビンを作るためには鉄が不可欠であり、鉄が不足すると赤血球の数や質が低下し、貧血が生じます。
鉄欠乏性貧血の原因としては、主に以下のようなものがあります。
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月経による慢性的な出血(女性で最も多い原因)
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消化管からの出血(胃潰瘍、大腸ポリープ、大腸がんなど)
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鉄の摂取不足(偏った食事、極端なダイエット)
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妊娠や授乳による鉄需要の増加
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鉄の吸収障害(胃切除後など)
特に成人男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、消化管からの出血が隠れている可能性があるため、原因の精査が重要になります。
■ 主な症状
鉄欠乏性貧血では、血液中のヘモグロビンが減少することで全身への酸素供給が不足し、さまざまな症状が現れます。
主な症状には以下のようなものがあります。
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疲れやすい、だるい(倦怠感)
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動悸、息切れ
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めまい、立ちくらみ
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頭痛
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顔色が悪い(蒼白)
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集中力の低下
鉄欠乏特有の症状として、以下のような変化がみられることもあります。
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爪が薄くなり割れやすくなる
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スプーン状の爪(匙状爪)
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口角炎(口の端が切れる)
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舌の痛みや違和感
また、氷を無性に食べたくなる氷食症がみられることもあります。
症状はゆっくり進行することが多いため、健康診断で初めて指摘されることも少なくありません。
■ 診断に必要な検査
鉄欠乏性貧血の診断には、血液検査が重要です。
血液検査
以下の項目を確認します。
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ヘモグロビン(Hb)値
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赤血球数
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平均赤血球容積(MCV)
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血清鉄
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フェリチン(体内の鉄の貯蔵量を示す指標)
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総鉄結合能(TIBC)
鉄欠乏性貧血では一般的に以下の特徴がみられます。
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ヘモグロビン低下
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フェリチン低下
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小球性貧血(赤血球が小さい)
原因検索のための検査
成人男性や閉経後女性では、消化管出血の可能性を確認するために以下の検査を行うことがあります。
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胃カメラ(上部消化管内視鏡)
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大腸カメラ(下部消化管内視鏡)
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腹部CT検査
当院では、血液検査による貧血の評価に加え、必要に応じて胃カメラや大腸カメラによる消化管出血の原因検索も行っています。
■ 主な治療方法
鉄欠乏性貧血の治療では、鉄不足の改善と原因疾患の治療が重要です。
鉄剤による治療
最も一般的な治療は**経口鉄剤(鉄の飲み薬)**の服用です。鉄剤を継続して服用することで、数週間から数か月かけてヘモグロビン値が改善します。
ヘモグロビンが正常化した後も、体内の鉄貯蔵を回復させるために数か月間治療を継続することが推奨されます。
鉄剤の副作用として、
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胃の不快感
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便秘
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黒色便
などがみられることがありますが、多くは服用方法の調整で対応可能です。
原因疾患の治療
消化管出血や婦人科疾患などが原因となっている場合は、原因疾患の治療を並行して行うことが重要です。
当院では、鉄欠乏性貧血の診断から原因検索、治療まで総合的に対応しています。
■ 予防や生活上の注意点
鉄欠乏性貧血の予防には、日常の食生活が重要です。
鉄を多く含む食品
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レバー
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赤身肉
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魚
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ほうれん草
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大豆製品
特に動物性食品に含まれるヘム鉄は吸収率が高いとされています。
また、ビタミンCは鉄の吸収を高める作用があるため、野菜や果物を一緒に摂取することが推奨されます。
一方で、以下のものは鉄の吸収を妨げる可能性があります。
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緑茶やコーヒー(タンニン)
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カルシウムの過剰摂取
そのため、鉄剤を服用する際は、これらの飲料を避けることが勧められることがあります。
鉄欠乏性貧血は適切な診断と治療により改善が期待できる疾患ですが、背後に消化管疾患などの原因が隠れていることもあります。
健康診断で貧血を指摘された方や、疲れやすさや息切れなどの症状が気になる方は、早めの受診をおすすめします。当院では血液検査や内視鏡検査を含め、原因の精査と治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。