症状

胸痛

■ 胸痛を起こす主な鑑別疾患(全10選)

1. 急性心筋梗塞

心臓の血管が閉塞し、心筋が壊死する重大な疾患で、突然の胸痛が典型です。

50歳以上の男性に多く、冷汗、息切れ、吐き気を伴うこともあります。

【検査】心電図、心筋マーカー(トロポニン)、心エコー、冠動脈CT。


2. 不安定狭心症

心筋梗塞の前段階で、労作時に限らず安静時にも胸痛が出現します。

高血圧・糖尿病・喫煙などのリスクを持つ中高年に多くみられます。

【検査】心電図、心筋酵素、運動負荷試験、冠動脈造影。


3. 大動脈解離

大動脈の壁が裂けることで、激烈な胸背部痛とショック症状を引き起こします。

高血圧を持つ50〜70代男性に多く、致死率が非常に高いため緊急対応が必要です。

【検査】造影CT、心エコー(TEE)、血圧左右差の確認。


4. 肺塞栓症

血栓が肺動脈に詰まり、胸痛や呼吸困難を引き起こす危険な疾患です。

長時間の座位や手術後、妊娠・経口避妊薬使用者に多く見られます。

【検査】Dダイマー、胸部造影CT、心エコー、動脈血ガス分析。


5. 自然気胸

肺に穴が開いて空気が漏れることで、突然の胸痛と呼吸困難を生じます。

若年の痩せ型男性に多く、再発しやすい傾向があります。

【検査】胸部X線、胸部CT、呼吸音の左右差の確認。


6. 肋間神経痛

肋骨に沿って走る神経が刺激され、鋭い痛みや電撃様の胸痛が起こります。

中年以降に多く、動作や姿勢で痛みが増強し、皮膚の知覚異常を伴うことも。

【検査】診察による圧痛点確認、必要に応じて画像検査(X線、MRIなど)。


7. 逆流性食道炎(GERD)

胃酸の逆流により、胸の中心に焼けつくような痛みが起こります。

食後や横になると増悪し、胸やけや喉の違和感を伴うことが多いです。

【検査】胃カメラ、24時間pHモニタリング、除外診断。


8. 食道けいれん(食道運動障害)

食道の不規則な収縮により、心臓由来と区別しづらい胸痛が起こります。

高齢者に多く、嚥下障害やつかえ感を伴う場合があります。

【検査】胃カメラ、食道内圧測定、バリウム造影検査。


9. 心膜炎

心臓を包む心膜の炎症で、胸の中央部に持続する痛みを感じます。

ウイルス感染後の若年者に多く、深呼吸や体位で痛みが変化するのが特徴です。

【検査】心電図(ST上昇)、心エコー、CRP・白血球などの血液検査。


10. 帯状疱疹(胸部)

ウイルスの再活性化により、皮膚とその下の神経に沿って痛みが出ます。

中高年〜高齢者に多く、胸部の一側にピリピリとした痛みが現れ、数日後に発疹が出現します。

【検査】診察による視診、必要に応じて血液検査・PCRなど。


■ 補足

胸痛の原因は心疾患・呼吸器疾患・消化器疾患・神経性・感染症など多岐にわたり、中には命に関わる緊急疾患も含まれます。発症状況や随伴症状(呼吸困難、冷汗、発疹、姿勢で変化するかなど)を丁寧に確認し、適切な検査を組み合わせることで、的確な診断が可能となります。