症状

胸やけ

■ 胸やけを起こす主な鑑別疾患(全10選)

1. 逆流性食道炎(GERD)

もっとも頻度の高い原因で、胃酸が食道に逆流することで胸やけや喉の違和感を生じます。

肥満・加齢・脂肪食の影響を受けやすく、中高年男性にやや多く見られます。

【検査】胃カメラ、24時間食道pHモニタリング、食道内圧検査。


2. 食道裂孔ヘルニア

横隔膜を通る食道の開口部から胃の一部が胸腔内に滑り込む状態で、GERDの一因にもなります。

高齢者や肥満の方に多く、食後や前屈時に胸やけが強くなります。

【検査】胃カメラ、胸部CT、胃食道造影。


3. バレット食道食道腺がん

GERDが長期間続くと、食道下部の粘膜が変性し、がん化するリスクがあります。

中高年男性に多く、胸やけや飲み込みづらさ、体重減少を伴う場合があります。

【検査】胃カメラ、組織生検、胸部CT、腫瘍マーカー。


4. 食道カンジダ症

免疫低下時にカンジダ菌が食道粘膜に感染し、胸やけや嚥下痛を生じます。

高齢者やがん患者、糖尿病、ステロイド・抗菌薬使用中の方に多く見られます。

【検査】胃カメラ、組織生検、真菌染色・培養。


5. 食道アカラシア

食道下部の括約筋が緩まないため、食物の通過障害と胸やけ様症状が出現します。

比較的稀な疾患ですが、30〜60代に発症し、食後のつかえ感や体重減少を伴います。

【検査】胃カメラ、食道造影検査、内圧検査。


6. 薬剤性食道炎

特定の薬剤(抗生物質、ビスホスホネート製剤など)が食道に滞留し、炎症や胸やけを引き起こします。

高齢者や水分摂取が少ない方、就寝前服薬で発症しやすくなります。

【検査】胃カメラ、服薬歴の確認。


7. 機能性ディスペプシア(FD)

明らかな器質的異常がないにもかかわらず、食後の不快感や胸やけ、胃もたれが現れます。

20〜50代に多く、ストレスや胃運動の異常が関与します。

【検査】胃カメラ(除外診断)、ピロリ菌検査、超音波検査。


8. 胃潰瘍十二指腸潰瘍急性胃炎

胃酸と粘膜の防御バランスが崩れ、潰瘍や胃炎ができることで胸やけやみぞおちの痛みが起こります。

どの年齢でも発症し、ピロリ菌感染や暴飲暴食や薬剤(NSAIDs)、アルコール、ストレスが関係します。

【検査】胃カメラ、ピロリ菌検査、便潜血検査、血液検査(炎症反応、貧血評価)。


9. 胆石症・胆道系疾患

食後に右上腹部痛とともに、胸のつかえや胸やけ感が出ることがあります。

中高年女性に多く、脂肪食摂取後に悪化する傾向があります。

【検査】腹部エコー、腹部CT、肝胆道系血液検査(AST、ALT、ALPなど)。


10. 狭心症心筋梗塞(非典型例)

ときに胸やけのような圧迫感や灼熱感として自覚されることがあり、特に注意が必要です。

高齢男性に多く、運動後の胸部違和感、呼吸困難、冷汗などが伴うことがあります。

【検査】心電図、心筋マーカー、心エコー。


■ 補足事項

胸やけは一見軽症に思われがちですが、逆流性食道炎から消化管出血・がん・虚血性心疾患に至るまで、原因は多岐にわたります。特に、体重減少、嚥下障害、貧血、黒色便などの症状を伴う場合には、速やかな精密検査が必要です。