症状

喘鳴(ヒュー音)

【喘鳴を起こす病気とその鑑別】

喘鳴とは、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音が聞こえる状態を指します。
主に気道の狭窄(空気の通り道が細くなること)によって起こり、原因は気管支・喉頭・肺・心臓・アレルギー反応など多岐にわたります。
一時的な発作から、生命に関わる重篤な状態まで含まれるため、原因の早期特定が重要です。


1. 気管支喘息

若年〜中年のアレルギー体質の方に多く、喘鳴の最も代表的な疾患です。
夜間や明け方の咳・呼吸困難・胸部圧迫感を伴い、季節や環境で悪化することがあります。
検査:呼吸機能検査(スパイロメトリー)、FeNO測定、血中好酸球・IgE、胸部X線。


2. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

喫煙歴のある中高年男性に多く、気道の慢性炎症により喘鳴や呼吸困難を生じます。
慢性的な咳・痰・労作時息切れが特徴で、進行すると呼吸不全に至ることもあります。
検査:呼吸機能検査、胸部CT、血液ガス分析。


3. アナフィラキシー(重度アレルギー反応)

薬剤・食物・昆虫刺傷などが原因で、急激に喉頭浮腫や気道狭窄を起こし喘鳴を伴います。
呼吸困難・じんましん・顔面腫脹・血圧低下を伴い、緊急治療が必要です。
検査:血中トリプターゼ、IgE、アレルゲン特異抗体検査。


4. 上気道閉塞(喉頭浮腫・異物誤嚥など)

高齢者や幼児で誤嚥・腫脹・腫瘍などにより上気道が狭くなることで喘鳴が出現します。
吸気時のヒューヒュー音・声のかすれ・呼吸困難を伴う場合は緊急性が高いです。
検査:喉頭内視鏡、頸部CT、胸部X線。


5. 急性気管支炎

風邪(ウイルス感染)後に多く、咳とともに一時的な喘鳴が出現します。
高熱は少なく、咳が長引く場合は気管支喘息や肺炎との鑑別が必要です。
検査:胸部X線、CRP・白血球、呼吸機能検査。


6. 心不全(心臓喘息)

高齢者や心疾患のある方に多く、肺うっ血により喘鳴や夜間の息苦しさを起こします。
むくみ・体重増加・起座呼吸(座ると楽になる)が特徴です。
検査:心電図、BNP、心エコー、胸部X線。


7. 異物吸引(特に小児)

幼児・高齢者に多く、食べ物や小物が気道に入ることで片側性の喘鳴が出現します。
突然の咳・チアノーゼを伴い、重度の場合は窒息に至ることもあります。
検査:胸部X線(透視)、気管支鏡検査。


8. 気管支拡張症

慢性の咳・膿性痰を特徴とし、炎症により気管支が拡張して喘鳴を伴うことがあります。
呼吸音の粗雑化・再発性肺炎を繰り返すこともあります。
検査:胸部CT(気管支拡張像)、喀痰培養。


9. 肺がんによる気道狭窄

中高年男性や喫煙者に多く、腫瘍が気道を圧迫することで喘鳴や咳が出現します。
血痰・体重減少・嗄声を伴う場合は早期精査が必要です。
検査:胸部CT、気管支鏡、喀痰細胞診。


10. ウイルス性クループ症候群(小児)

乳幼児に多く、パラインフルエンザウイルス感染により喉頭が腫れ、**犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)**と喘鳴を起こします。
夜間悪化し、呼吸困難を伴う場合は入院管理が必要です。
検査:喉頭内視鏡、ウイルス抗原検査、血液検査。


■ 診断に必要な主な検査

検査 内容
胸部X線/CT 肺炎・腫瘍・気胸・気道閉塞の有無を確認
呼吸機能検査 喘息・COPD・気道狭窄の評価
喉頭・気管支内視鏡 上気道や気道内の浮腫・異物・腫瘍の確認
血液検査 炎症反応(CRP・白血球)、好酸球、IgE、BNPなどを確認
心電図・心エコー 心不全(心臓喘息)の鑑別
アレルギー検査 アレルゲン特定、IgE測定
血中ガス分析 呼吸不全や換気障害の評価

■ まとめ

喘鳴は「気管支喘息」に限らず、心不全・アレルギー・腫瘍・異物誤嚥など多彩な疾患で生じます。
特に、

  • 突然の喘鳴・呼吸困難・声のかすれ・顔の腫れを伴う場合 → アナフィラキシーや喉頭浮腫の可能性

  • 夜間悪化・むくみ・体重増加 → 心不全の可能性

  • 慢性の咳・喫煙歴 → COPDや肺がんの可能性
    があり、早期受診が必要です。

当院では、呼吸機能検査・胸部画像・内視鏡・血液検査を組み合わせた総合的診断を行い、喘鳴の原因を正確に特定します。
呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と音がする方は、ぜひ一度ご相談ください。