胃腸・消化器の疾患
口内炎
1. 疾患の概要
口内炎(こうないえん)とは、口腔内の粘膜に生じる炎症性の病変の総称で、唇の内側・頬粘膜・舌・歯肉・口蓋など、さまざまな部位に発症します。一般的には白っぽい潰瘍(かいよう)や赤みを伴ったびらんとして現れ、痛みやしみる感覚を伴うことが多く、日常生活や食事に支障をきたします。
口内炎にはいくつかの種類があり、最も一般的なのはアフタ性口内炎と呼ばれるタイプです。他にもウイルス性、カンジダ性、外傷性、薬剤性、全身疾患に伴うものなど、原因や症状の現れ方により分類されます。
口内炎の発症には以下のような要因が関与します:
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栄養バランスの乱れ(ビタミンB群・鉄・亜鉛の不足)
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免疫力の低下(疲労、ストレス、睡眠不足など)
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ウイルス感染(ヘルペスウイルス、カンジダ菌など)
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口腔内の外傷(入れ歯、矯正器具、誤って噛むなど)
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薬剤の副作用(抗がん剤、免疫抑制剤など)
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自己免疫疾患や血液疾患(ベーチェット病、潰瘍性大腸炎など)
日本においては、日常的によく見られる症状であり、男女問わず全年齢層で発症します。とくに仕事や家事で疲労がたまりやすい成人女性や高齢者に多い傾向があります。
2. 主な症状
口内炎の主な症状は以下のとおりです:
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口の中にできる白っぽい潰瘍(直径数ミリ〜1センチ程度)
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しみるような痛み(食事中や会話時に悪化しやすい)
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赤み、腫れ、発赤を伴うびらん
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口臭の増加
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発熱やリンパ節の腫れ(感染性や重症の場合)
多くの場合、数日~1週間程度で自然に軽快しますが、再発を繰り返す方や、2週間以上治らない、または頻繁に多発する場合には、背景に全身疾患や免疫異常が隠れていることもあり、医療機関での診察が推奨されます。
がん性病変(口腔がん)などとの区別も重要で、潰瘍が硬く盛り上がっている、出血しやすい、治癒しないといった特徴がある場合は精密検査が必要です。
3. 診断に必要な検査
通常のアフタ性口内炎であれば、問診と視診による診断が可能です。ただし、難治性または再発性の場合、以下のような検査が行われます。
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血液検査
貧血(鉄・ビタミンB12・葉酸の不足)、白血球の異常、自己免疫疾患の有無を確認します。
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培養検査
ヘルペスやカンジダ菌など感染性病変が疑われる場合に、病変部のぬぐい液を培養して病原体を特定します。
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組織検査(生検)
潰瘍が長期間治らない、がんとの鑑別が必要な場合に、病変部の組織を採取し病理検査を行います。
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アレルギー検査、自己抗体検査
ベーチェット病や膠原病など、全身疾患との関連を調べるために実施されることがあります。
診断の流れとしては、まず問診で症状の経過や生活習慣、既往歴を確認し、必要に応じて追加検査を行います。
4. 主な治療方法
口内炎の治療は、原因に応じた対症療法と予防的ケアの組み合わせによって行います。
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薬物療法
・ステロイド軟膏・含嗽薬(うがい薬):炎症を抑え、治癒を促進
・ビタミンB群や鉄剤の補充:栄養バランスの是正
・抗ウイルス薬、抗真菌薬:感染性口内炎に対する治療
・鎮痛薬や麻酔薬含有の口腔ジェル:痛みの緩和
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生活習慣の改善
・栄養バランスの良い食事
・十分な休養と睡眠
・禁煙と節酒
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根本治療(全身疾患の治療)
・ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などが背景にある場合は、原疾患に対する専門的治療が必要です。
当院では、視診・血液検査による診断と、薬物療法を中心とした対処治療に加え、再発を防ぐための生活指導を行っております。必要に応じて、耳鼻咽喉科や皮膚科、内科など他科との連携も行います。
5. 予防や生活上の注意点
口内炎を予防し、再発を防ぐためには、日常生活でのセルフケアが非常に重要です。
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口腔内を清潔に保つ:歯磨きやうがいを習慣化し、虫歯や歯周病を予防
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バランスのとれた食事を摂る:ビタミンB群、鉄、亜鉛の補給を意識する
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睡眠と休養をしっかり取る:免疫力を保つために規則正しい生活を
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喫煙・過度の飲酒を控える:粘膜を荒らしやすいため、口内炎の引き金になります
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ストレスを溜めすぎない:適度な運動やリラクゼーションを取り入れる
また、入れ歯や矯正器具が口内に接触している方は、装着状態の調整が必要な場合もあります。当院では、口腔内の状態に応じたアドバイスを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
口内炎は軽度であっても、食事や会話に支障をきたし、日常生活の質を下げてしまうことがあります。頻繁に繰り返す方、長引く症状がある方は、ぜひ一度ご受診ください。
当院では、丁寧な診察と検査に基づいた正確な診断と、再発防止を含む包括的な治療と生活指導をご提供しております。