症状

冷や汗

【冷や汗を起こす病気とその鑑別】

冷や汗(冷感を伴う発汗)は、自律神経の異常反応として起こります。
血圧・血糖・循環・痛み・ストレスなど、身体が「危険」や「不調」を感じる際に生じることが多く、なかには心筋梗塞やショックなど命に関わる疾患の初期症状であることもあります。


1. 心筋梗塞・狭心症

中高年男性に多く、冷や汗を伴う代表的な重篤疾患です。
胸の圧迫感・息苦しさ・左肩や顎への放散痛を伴い、悪心や吐き気を伴うこともあります。
検査:心電図、トロポニンなどの心筋酵素、心エコー、冠動脈CTまたは心臓カテーテル検査。


2. ショック(循環性・アナフィラキシーなど)

血圧低下により全身の循環が保てなくなり、顔面蒼白・冷汗・脈拍微弱・意識低下を伴います。
外傷・出血・敗血症・アレルギー反応などが原因となり、救急対応が必要です。
検査:血圧・SpO₂・血液ガス・血液培養・アレルギー関連検査(トリプターゼなど)。


3. 低血糖症

糖尿病治療中や絶食・過労・飲酒後に起こりやすい疾患です。
冷や汗・動悸・手の震え・強い空腹感・意識もうろうなどが特徴で、放置すると昏睡に至ります。
検査:血糖測定、HbA1c、インスリン値、肝機能検査。


4. 自律神経失調症/起立性低血圧

**ストレスや疲労、脱水、薬剤(降圧薬など)**によって血圧調整が乱れる疾患です。
立ち上がり時のふらつき・冷や汗・動悸・倦怠感を生じ、若年女性や高齢者に多くみられます。
検査:起立試験、心電図、ホルモン検査(コルチゾール・カテコラミン)。


5. 不整脈(徐脈・頻脈発作)

心拍の乱れにより脳血流が一時的に減少し、冷や汗・めまい・失神を伴います。
心房細動や洞不全症候群などが代表的で、高齢者や心疾患のある方に多いです。
検査:心電図、ホルター心電図、心エコー、電解質・甲状腺機能。


6. パニック発作・過換気症候群

突然の強い不安感・動悸・息苦しさ・冷や汗・手足のしびれが出現します。
発作は10〜20分程度で自然に軽快することが多く、精神的ストレスや疲労が誘因です。
検査:血液ガス(呼吸性アルカローシス確認)、心電図、心理評価。


7. 発熱・感染症(インフルエンザ・敗血症など)

感染初期には発汗・悪寒・倦怠感・発熱前の冷や汗がみられることがあります。
特に**高齢者や免疫低下患者では発熱を伴わない「隠れ感染」**のこともあります。
検査:血液検査(白血球・CRP・プロカルシトニン)、尿検査、培養検査。


8. 急性腹症(胃潰瘍穿孔・胆石・膵炎など)

突然の強い腹痛に加えて冷や汗・吐き気・血圧低下を伴うことがあります。
中高年男性や飲酒歴のある方に多く、緊急手術が必要な場合もあります。
検査:腹部CT、血液検査(アミラーゼ・リパーゼ)、腹部超音波、心電図。


9. 熱中症

炎天下や高温環境下での作業・運動後冷や汗・めまい・倦怠感を伴います。
重症化すると発汗が止まり、意識障害や高体温に至る危険があります。
検査:体温測定、電解質・腎機能検査、血圧・脱水評価。


10. 更年期障害・ホルモン変動

40〜60代女性に多く、ホットフラッシュ(ほてり・発汗)と冷や汗を繰り返します。
自律神経の乱れやエストロゲン低下が関与し、不眠・気分変動を伴うことがあります。
検査:ホルモン検査(エストラジオール・FSH・LH)、甲状腺機能、血圧測定。


■ 診断に必要な主な検査

検査 目的
心電図・ホルター心電図 不整脈・虚血性心疾患の評価
血糖測定・HbA1c 低血糖・糖尿病の確認
血液検査(CRP・白血球・電解質) 感染・炎症・脱水の評価
起立試験 自律神経性起立性低血圧の評価
腹部CT/超音波 急性腹症・膵炎・胆石の診断
ホルモン検査(甲状腺・性腺・副腎) 内分泌疾患の鑑別
血液ガス分析 過換気や代謝異常の確認

■ まとめ

冷や汗は、**体の異常を知らせる「緊急サイン」**の一つです。
特に、

  • 胸の圧迫感・吐き気・意識のもうろうを伴う → 心筋梗塞の可能性

  • 激しい腹痛・顔面蒼白・発熱を伴う → 感染症や急性腹症

  • 動悸・手の震え・ふらつきを伴う → 低血糖や自律神経障害
    といった症状がある場合は、早急な受診が必要です。

当院では、血糖・心電図・血圧・画像検査を即時に実施できる体制を整え、緊急疾患を迅速に鑑別しています。
「冷や汗が出る」「体が冷たく感じる」といった症状も、軽視せず一度ご相談ください。