症状

呼吸困難

【呼吸困難を起こす病気とその鑑別】

呼吸困難とは、「息がしにくい」「呼吸が浅い」「胸が苦しい」と感じる状態を指します。
原因は、呼吸器・循環器・代謝・神経筋疾患など全身に及ぶため、症状の出方や経過から慎重に鑑別する必要があります。


1. 気管支喘息

若年〜中年に多く、アレルギー体質の方に好発します。
ヒューヒュー・ゼーゼーという呼吸音(喘鳴)と呼吸困難・咳発作を繰り返します。
検査:呼吸機能検査(スパイロメトリー)、FeNO測定、血中好酸球・IgE、胸部X線。


2. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

喫煙歴のある中高年男性に多い疾患です。
咳や痰が続き、次第に労作時の息切れが進行します。進行すると安静時も息苦しさを感じます。
検査:呼吸機能検査、胸部CT、血液ガス分析。


3. 肺炎

高齢者に多く、発熱・咳・痰・胸痛を伴うことが一般的です。
細菌やウイルスによる感染で肺が炎症を起こし、重症化すると呼吸不全を来します。
検査:胸部X線・CT、血液検査(白血球・CRP・プロカルシトニン)、喀痰培養。


4. 肺塞栓症(肺血栓塞栓症)

長時間の安静・手術・長距離移動後などに起こりやすく、突然の息切れ・胸痛・冷や汗を伴います。
血栓が肺動脈を塞ぐことで急性の呼吸困難を生じ、生命に関わる緊急疾患です。
検査:造影CT(肺動脈造影)、Dダイマー、心電図、心エコー。


5. 心不全

高齢者や高血圧・心疾患のある方に多く、心臓のポンプ機能が低下して息苦しさを感じます。
横になると息がしにくい・夜間の呼吸困難・下肢のむくみを伴うことが特徴です。
検査:心電図、BNP(心不全マーカー)、心エコー、胸部X線。


6. 気胸

若年や長身・痩せ型男性に多く、片側の胸の痛みと突然の息切れで発症します。
肺に穴が開き、空気が胸腔内に漏れることで肺が縮んでしまう疾患です。
検査:胸部X線、胸部CT。


7. 過換気症候群(不安発作・パニック発作)

若年女性に多く、緊張や不安がきっかけで呼吸が速く浅くなることで発症します。
息苦しさ・胸の圧迫感・手足のしびれ・めまいなどを伴いますが、器質的異常はありません。
検査:血液ガス(呼吸性アルカローシス)、心電図、心理評価。


8. 貧血

女性や高齢者に多く、酸素を運ぶ赤血球が減ることで息切れや倦怠感を感じます。
顔色が悪く、動悸やめまいを伴うことがあります。
検査:血液検査(Hb、鉄、フェリチン、網赤血球数)。


9. 間質性肺炎

中高年男性に多く、進行すると乾いた咳と労作時呼吸困難が出現します。
肺組織の線維化が進むと酸素交換が障害され、呼吸不全に至ることがあります。
検査:胸部CT(蜂巣肺所見)、肺拡散能検査、血液(KL-6・SP-D)。


10. 気道閉塞・喉頭浮腫(アナフィラキシーなど)

アレルギー反応や異物、腫瘍などにより気道が狭くなり呼吸困難を呈する危険な疾患です。
声のかすれ・喘鳴・顔面の腫れ・じんましんを伴うことがあります。
検査:喉頭内視鏡、胸部CT、血中トリプターゼ、アレルギー検査。


■ 診断に必要な主な検査

検査 内容
胸部X線/CT 肺炎・気胸・間質性肺炎・腫瘍の評価
心電図・心エコー 心不全・不整脈・虚血性心疾患の確認
血液検査 貧血・炎症・心不全(BNP)・酸素飽和度・電解質
血液ガス分析 呼吸不全や過換気の有無を確認
スパイロメトリー(呼吸機能検査) COPDや喘息の鑑別
Dダイマー/造影CT 肺塞栓症の評価
喉頭・気道内視鏡 上気道閉塞やアレルギー反応の確認

■ まとめ

呼吸困難は、軽い運動時の息切れから、命に関わる急性呼吸不全まで多様な原因があります。
特に以下のような症状を伴う場合は、緊急受診が必要です。

  • 突然の息切れ・胸痛・冷や汗・失神(→ 肺塞栓・心筋梗塞)

  • 発熱・咳・痰がある(→ 肺炎)

  • 横になると息が苦しい・足がむくむ(→ 心不全)

  • のどの腫れ・喘鳴・蕁麻疹を伴う(→ アナフィラキシー)

当院では、胸部画像・血液検査・呼吸機能検査・心エコーなどを組み合わせ、
呼吸器・循環器・代謝の異常を総合的に評価します。
息苦しさを感じた際は、早めのご相談をおすすめします。