症状

めまい

【めまいを起こす病気とその鑑別】

めまいは、内耳(平衡器官)・脳・自律神経・循環系など、多くの要因で生じる症状です。
軽度なものから命に関わる疾患まで幅広く、発症のきっかけ・持続時間・随伴症状から原因を見極めることが重要です。


1. 良性発作性頭位めまい症(BPPV)

中高年女性に多く、寝返り・起き上がり・上を向く動作で一瞬の回転性めまいが起こります。
耳石が半規管内に入り込むことが原因で、難聴や耳鳴りは伴わないのが特徴です。
検査:頭位変換試験(Dix-Hallpike法)、眼振検査、頭部MRI(中枢性めまいとの鑑別)。


2. メニエール病

30〜50代の女性に多く回転性めまい・耳鳴り・耳の詰まり感・難聴が発作的に出現します。
内耳のリンパ液循環異常(内リンパ水腫)が原因で、ストレスや睡眠不足が誘因となります。
検査:聴力検査、グリセロール試験、平衡機能検査、内耳MRI。


3. 前庭神経炎

風邪やウイルス感染後に発症し、突然の強い回転性めまいと歩行困難を呈します。
難聴を伴わないことが特徴で、めまいは数日続く場合もあります。
検査:平衡機能検査(眼振・VEMP)、頭部MRI(小脳・脳幹梗塞の除外)。


4. 片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)

若年〜中年女性に多く頭痛の有無にかかわらず繰り返すめまいを生じます。
光や音への過敏、吐き気、集中困難などを伴うことが多く、ストレスや睡眠不足が誘因です。
検査:神経学的診察、MRI(中枢性病変除外)、聴力検査。


5. 起立性低血圧/自律神経失調症

若年女性や高齢者に多く、立ち上がった際にふらつき・冷や汗・動悸が出現します。
血圧や脈拍の調整が一時的に乱れることで起こり、脱水や薬剤も関係します。
検査:起立試験(血圧変化確認)、心電図、自律神経機能検査、電解質・ホルモン測定。


6. 心因性めまい(不安・パニック障害)

ストレス・不安感・緊張を背景に、浮動感・ふらつき・動悸・息苦しさを訴えます。
検査で明らかな異常が見られないことが多く、心理的要因が関与します。
検査:血液検査、心電図、心理スクリーニング(不安尺度評価)。


7. 脳梗塞・一過性脳虚血発作

突然発症の持続する回転性めまいで、手足のしびれ・構音障害・歩行失調を伴う場合は注意が必要です。
高血圧・糖尿病・動脈硬化のある中高年に多く、緊急対応が求められます。
検査:頭部MRI(拡散強調画像)、MRA、神経学的診察。


8. 不整脈・心疾患によるめまい

心拍が速すぎる/遅すぎることで脳血流が減少し、ふらつき・冷や汗・意識消失を伴うことがあります。
高齢者や既往のある方では失神の前兆として現れる場合もあります。
検査:心電図、ホルター心電図、心エコー、血圧測定。


9. 貧血・低血糖・甲状腺機能異常

貧血や低血糖による脳への酸素・糖供給不足が原因で、ふらつき・動悸・倦怠感を伴います。
女性や糖尿病治療中の方に多く、全身のだるさを訴えることもあります。
検査:血液検査(Hb、血糖、甲状腺ホルモン)、鉄・フェリチン値測定。


10. 耳鼻咽喉科疾患(中耳炎・耳硬化症など)

耳の炎症や加齢性変化により、めまいや難聴、耳鳴りを伴います。
中耳炎では発熱や耳痛を伴うこともあり、慢性化すると平衡感覚が乱れます。
検査:鼓膜所見、聴力検査、耳内CT。


■ 診断に必要な主な検査

検査項目 内容
神経学的診察 中枢性(脳)と末梢性(内耳)の鑑別
聴力検査 メニエール病や突発性難聴の確認
平衡機能検査(眼振・VEMPなど) 前庭機能の異常を評価
頭部MRI・MRA 脳梗塞・腫瘍など中枢疾患の除外
起立試験・血圧測定 自律神経や循環の関与を評価
血液検査 貧血・低血糖・甲状腺異常の確認
心電図・ホルター心電図 不整脈・虚血性心疾患の確認

■ まとめ

めまいは「耳の病気」と思われがちですが、脳・心臓・自律神経・血液疾患など全身の異常が関係することもあります。
特に、

  • 手足のしびれ・ろれつの回りにくさ・歩行のふらつき

  • 胸の圧迫感・冷や汗・意識のもうろう
    といった症状を伴う場合は、救急対応が必要です。

当院では、耳・脳・循環・代謝の各側面から包括的に検査を行い、原因を明確にした上で最適な治療を提案しています。
めまいが繰り返す、あるいは長引く場合は、早めの受診をお勧めいたします。