症状

倦怠感・だるさ

【倦怠感・だるさを起こす病気とその鑑別】

倦怠感や全身のだるさは、一時的な疲労や睡眠不足によるものから、内臓疾患・感染症・内分泌異常・心身の不調まで、原因は多岐にわたります。
特に長期間続く場合や、他の症状を伴う場合には、重大な疾患が隠れていることもあります。


1. 鉄欠乏性貧血

女性に多く、月経過多や胃腸出血が原因で起こります。
酸素を運ぶ赤血球が減ることで、だるさ・息切れ・動悸・顔色不良が生じます。
検査:血液検査(Hb、鉄、フェリチン、TIBC)、便潜血検査。


2. 甲状腺機能低下症

中年女性に多く、甲状腺ホルモンの低下により代謝が落ちることで生じます。
だるさ・体重増加・寒がり・むくみ・便秘などを伴います。
検査:血液検査(TSH、FT4、FT3)、抗甲状腺抗体。


3. 慢性肝疾患(肝炎・脂肪肝・肝硬変など)

**飲酒・肥満・ウイルス感染(B型・C型)**などが原因です。
肝機能の低下により、全身の倦怠感・食欲低下・黄疸を生じることがあります。
検査:肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP、ALP)、腹部超音波、HBs抗原、HCV抗体。


4. 糖尿病

中高年男性に多く、血糖コントロール不良による慢性的な疲労感・口渇・多尿・体重減少が特徴です。
軽症でも「だるさ」や「集中力低下」として現れることがあります。
検査:血糖、HbA1c、尿糖、肝腎機能。


5. うつ病・適応障害

全年齢層に発症しうる心の病気です。
やる気の低下・疲労感・睡眠障害・食欲低下・集中力低下などが特徴です。
検査:心理評価(PHQ-9など)、血液検査で身体疾患を除外。


6. 慢性腎臓病(CKD)

高血圧や糖尿病が背景にあることが多く、老廃物の排泄が低下します。
だるさ・食欲不振・むくみ・貧血が進行により顕著になります。
検査:血液検査(クレアチニン、eGFR、BUN)、尿蛋白、尿沈渣。


7. 慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)

感染やストレスをきっかけに、休息をとっても回復しない強い倦怠感が続く疾患です。
集中力低下・筋肉痛・睡眠障害などを伴い、社会生活に支障を来すこともあります。
検査:除外診断(血液・甲状腺・感染症検査)、自律神経機能評価。


8. 感染症(ウイルス性肝炎・EBウイルス・新型コロナ後遺症など)

感染後の免疫反応や臓器障害によって、長期のだるさ・微熱・関節痛を伴います。
特にウイルス性肝炎COVID-19後遷延症状では慢性倦怠が続くことがあります。
検査:血液検査(肝機能、CRP、ウイルスマーカー)、胸部画像。


9. 心不全

心臓のポンプ機能低下により、全身への酸素供給が不足します。
息切れ・むくみ・疲労感・体重増加などを伴い、高齢者では倦怠感が主症状となることもあります。
検査:心電図、BNP、心エコー、胸部X線。


10. 悪性腫瘍(がん)

早期には自覚症状が乏しく、倦怠感・体重減少・食欲不振のみで発見されることがあります。
特に中高年では注意が必要です。
検査:血液検査(腫瘍マーカー含む)、腹部・胸部CT、内視鏡検査。


■ 診断に必要な主な検査

検査 内容
血液検査 貧血、肝機能、腎機能、血糖、甲状腺機能、炎症反応を評価
尿検査 糖尿病・腎疾患の確認
胸部・腹部エコー/CT 肝臓・腎臓・心臓・腫瘍性病変の評価
心電図・心エコー 心疾患・心不全の診断
ホルモン検査 甲状腺・副腎など内分泌異常の確認
心理評価スクリーニング うつ病やストレス性疾患の鑑別
感染症検査 肝炎ウイルス・EBウイルス・COVID関連抗体など

■ まとめ

倦怠感は「疲れ」として見過ごされがちですが、内臓疾患・ホルモン異常・貧血・心不全・感染症・がんなどの初期サインであることも少なくありません。
特に、

  • 体重減少・微熱・むくみ・黄疸・息切れを伴う場合

  • 数週間以上続く強いだるさ
    は、医療機関での精査が推奨されます。

当院では、血液・内分泌・肝腎機能・画像検査を総合的に行い、原因を早期に特定します。
「最近疲れが取れない」「朝から体が重い」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。