検査異常・健診異常

便潜血

【便潜血陽性の際に考えられる主な病気】

便潜血は、消化管(口から肛門まで)のどこかで出血が起きていることを示すサインです。
痔などの良性疾患から、大腸がんなど早期発見が重要な疾患まで幅広くみられるため、
内視鏡検査などによる精密検査が推奨されます。


1. 大腸ポリープ

40歳以降に増加し、特に男性にやや多い傾向があります。
良性のポリープでも、大きくなると出血を起こしたり、がん化するリスクがあります。
検査:大腸内視鏡検査(ポリープ切除も同時に可能)。


2. 大腸がん

50歳以上に多く、早期では無症状のこともあります。
進行すると血便・便通異常・体重減少・貧血などを伴います。
検査:大腸内視鏡(生検)、便潜血再検査、CTコロノグラフィ。


3. 痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)

若年〜中高年まで幅広くみられ、排便時の出血や痛みを伴います。
出血が軽度でも便潜血陽性となることがあります。
検査:肛門視診、直腸指診、肛門鏡検査。


4. 虚血性腸炎

高齢者や動脈硬化のある方に多く、一過性の血流障害で腸の粘膜が傷つきます。
突然の腹痛・下痢・血便が特徴です。
検査:大腸内視鏡、腹部CT、血液検査(炎症反応)。


5. 憩室出血(大腸憩室症)

中高年層に多く、腸の壁の一部が袋状に突出して出血する疾患です。
出血は突然起こり、痛みを伴わないこともあります。
検査:大腸内視鏡、腹部CT、血液検査(貧血の評価)。


6. 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

若年〜中年層に多く、腸の慢性的な炎症が続く自己免疫性疾患です。
粘血便・下痢・腹痛・体重減少などを伴い、再燃を繰り返します。
検査:大腸内視鏡(生検)、便カルプロテクチン、血液検査(CRP)。


7. 感染性腸炎

細菌やウイルス感染により、腸粘膜が炎症を起こし便潜血陽性となることがあります。
下痢・発熱・腹痛を伴い、多くは一過性です。
検査:便培養、便PCR、血液検査。


8. 上部消化管出血(胃潰瘍・十二指腸潰瘍など)

便潜血反応は上部消化管の出血でも陽性になります。
胃痛・黒色便・貧血を伴う場合は、上部の精査が必要です。
検査:胃カメラ(上部内視鏡)、ピロリ菌検査、血液検査(Hb値)。


9. 薬剤性腸炎・NSAIDs潰瘍

**鎮痛薬(ロキソニンなど)**の常用で腸管の粘膜が傷つき、慢性的な出血を起こすことがあります。
胃痛・下痢・黒色便がみられることがあります。
検査:内視鏡検査、服薬歴の確認、血液検査。


10. 小腸出血(小腸腫瘍・血管奇形など)

まれですが、高齢者や原因不明の貧血で見つかることがあります。
痛みが少なく、便潜血のみ陽性の場合も多いです。
検査:小腸カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡、造影CT。


■ 診断に必要な主な検査

検査名 目的
大腸内視鏡検査 出血部位の特定、ポリープやがんの診断・治療
上部消化管内視鏡 胃や十二指腸の潰瘍、腫瘍の確認
便潜血再検査 一過性の出血かを確認
血液検査(Hb・鉄・CRP) 貧血や炎症の有無を評価
腹部CT・超音波 憩室や腫瘍、炎症性変化の確認
小腸内視鏡/カプセル内視鏡 小腸病変の評価(上・下部で異常がない場合)

■ まとめ

便潜血陽性は、「がんがある」という意味ではなく、出血がどこかで起きている可能性のサインです。
しかし、早期大腸がんの唯一の兆候である場合も少なくないため、
陽性となった場合は必ず大腸内視鏡検査で確認することが大切です。

特に、

  • 50歳以上

  • 便秘や下痢など便通異常が続く

  • 家族に大腸がんの既往がある
    といった方は、早期の受診をおすすめします。


当院では、鎮静剤を用いた苦痛の少ない大腸カメラ検査を実施しています。
便潜血陽性の方はもちろん、症状のない方でも予防的な内視鏡検査を推奨しています。