症状

動悸

【動悸を起こす病気とその鑑別】

動悸は、心拍数の増加、心拍の乱れ、拍出量の変動などによって感じられる症状です。
一時的なストレスや疲労によるものから、不整脈・心不全・甲状腺疾患などの重大な疾患まで幅広くみられます。


1. 心房細動(不整脈)

高齢者や高血圧・心疾患をもつ方に多く、心拍が不規則に乱れ、突然の動悸として自覚されます。
息切れ・めまい・ふらつきを伴うこともあり、脳梗塞の原因となることがあります。
検査:心電図、ホルター心電図、心エコー、甲状腺機能検査。


2. 上室性期外収縮・発作性上室性頻拍

比較的若年者にもみられ、突然のドキドキ感として自覚されます。
数秒〜数分で自然に収まることもありますが、ストレス・カフェイン・睡眠不足が誘因になることがあります。
検査:心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査。


3. 洞性頻脈(生理的動悸)

運動・発熱・精神的緊張・カフェイン摂取などで心拍数が一時的に上昇します。
健康な方でも起こり得る反応ですが、頻発する場合は他疾患のサインです。
検査:心電図、血液検査(甲状腺機能・貧血)、自律神経評価。


4. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)

20〜40代の女性に多く、甲状腺ホルモンの過剰分泌により心拍数が上昇します。
動悸・体重減少・手の震え・発汗過多を伴い、放置すると心不全を来すこともあります。
検査:甲状腺ホルモン(FT3・FT4・TSH)、甲状腺抗体、エコー検査。


5. 貧血(特に鉄欠乏性貧血)

月経のある女性や消化管出血のある高齢者に多く、酸素運搬能力の低下によって動悸・息切れが出ます。
顔色の蒼白・倦怠感・めまいを伴います。
検査:血算(Hb・MCV・フェリチン)、便潜血、上部・下部消化管内視鏡。


6. 心不全

高齢者や高血圧・心筋梗塞の既往がある方で、心臓のポンプ機能低下により動悸・息切れが出現します。
体のむくみ・体重増加・夜間呼吸困難を伴うことが特徴です。
検査:心電図、心エコー、BNP、胸部X線。


7. 心筋梗塞・狭心症

中高年男性・喫煙者・糖尿病患者に多く、冠動脈の血流障害により心臓が虚血状態になります。
動悸・胸の圧迫感・息苦しさ・冷や汗を伴う場合は緊急性が高いです。
検査:心電図、トロポニン(心筋マーカー)、冠動脈CT、心エコー。


8. パニック障害・自律神経失調症

若年〜中年の女性に多く、突然の動悸・呼吸困難・不安感・手足のしびれを伴います。
心臓に異常がなくとも、強いストレスや不安が原因で症状が出ます。
検査:心電図・甲状腺機能・血液検査(除外診断)、心理評価。


9. 薬剤性動悸

気管支拡張薬・甲状腺薬・カフェイン・抗うつ薬などによって心拍数が上昇することがあります。
服薬開始後に症状が出現した場合は薬剤との関連を疑います。
検査:服薬歴の確認、心電図、血中薬物濃度。


10. 脱水・電解質異常

発熱・下痢・嘔吐・多量の発汗などで体内の水分や塩分が失われると、循環量低下によって動悸を自覚します。
口渇・倦怠感・血圧低下を伴うことがあります。
検査:血液検査(Na・K・Cl・BUN・Cr)、血圧測定。


■ 診断に必要な主な検査

検査 目的
心電図・ホルター心電図 不整脈や発作性頻拍の検出
心エコー検査 心筋・弁膜症・心不全の評価
血液検査 貧血・甲状腺機能・電解質・心筋マーカーなど
胸部X線・心胸比 心拡大やうっ血の有無を確認
甲状腺エコー/ホルモン検査 甲状腺疾患の有無を確認
自律神経・心理評価 パニック障害・ストレス性動悸の評価

■ まとめ

動悸の原因は心臓・内分泌・自律神経・代謝性疾患など多岐にわたり
中には脳梗塞や心筋梗塞のリスクとなる重篤な不整脈も含まれます。

  • 発作的にドキドキする → 不整脈の可能性

  • 体重減少・発汗を伴う → 甲状腺機能亢進症

  • 貧血や倦怠感を伴う → 鉄欠乏性貧血

  • 強い不安感や呼吸困難を伴う → パニック障害

など、症状の組み合わせが診断の手がかりとなります。

当院では、心電図・ホルター検査・血液検査・エコーなどを用いて、
動悸の原因を総合的に診断し、必要に応じて循環器内科とも連携しています。
一時的なものと思わず、症状が続く際は早めの受診をおすすめします。