症状

しゃっくり

【しゃっくりを起こす病気とその鑑別】

しゃっくりは、横隔膜が不随意にけいれんする現象です。
一過性の生理的なものから、脳・胸部・消化器・代謝異常などの重篤な疾患に伴う病的しゃっくりまで、原因は多岐にわたります。


1. 胃拡張・過食・炭酸飲料摂取

最も一般的な原因で、食べすぎや早食い、炭酸飲料・飲酒によって胃が急に膨張すると、横隔膜が刺激されてしゃっくりが出ます。
健康な人にも起こりますが、慢性的な頻発は他の疾患を疑う必要があります。
検査:問診・腹部X線(胃内ガス確認)、上部消化管内視鏡。


2. 逆流性食道炎(胃食道逆流症/GERD)

中高年や肥満の方に多く、胃酸が食道に逆流して横隔膜や迷走神経を刺激します。
しゃっくり・胸やけ・げっぷ・喉の違和感などを伴います。
検査:上部消化管内視鏡、pHモニタリング、食道内圧測定。


3. 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)

高齢者や高血圧・糖尿病のある方で、持続的なしゃっくりが出る場合は中枢性の原因が疑われます。
特に延髄(脳幹部)の病変でしゃっくりが出やすく、構音障害・手足のしびれ・めまいなどを伴うことがあります。
検査:頭部MRI/CT、神経学的所見の確認。


4. 脳腫瘍・頭蓋内病変

長期間続くしゃっくりや吐き気・頭痛を伴う場合、脳腫瘍・髄膜炎・脳炎などの可能性があります。
特に延髄・小脳の病変ではしゃっくりが出やすいとされています。
検査:頭部MRI、神経学的診察、髄液検査(感染性疾患の疑い時)。


5. 肺炎・胸膜炎・肺癌

高齢者や喫煙歴のある方に多く、胸部の炎症や腫瘍が横隔神経を刺激してしゃっくりを誘発します。
咳・発熱・胸痛・体重減少などの症状を伴います。
検査:胸部X線、胸部CT、腫瘍マーカー(CEAなど)。


6. 横隔膜刺激を伴う疾患(膿瘍・肝腫大など)

肝膿瘍・肝腫瘍・胆嚢炎・横隔膜下膿瘍などで横隔膜が直接刺激されるとしゃっくりが生じます。
右上腹部痛・発熱・倦怠感を伴うことが多いです。
検査:腹部超音波、腹部CT、肝胆道系酵素(AST・ALT・γ-GTP)。


7. 心筋梗塞・心膜炎

中高年男性に多く、心臓周囲の炎症や虚血によって横隔膜神経が刺激される場合があります。
胸痛・息切れ・冷や汗・倦怠感を伴うことがあり、緊急対応が必要です。
検査:心電図、トロポニン、心エコー、胸部X線。


8. 腎不全・尿毒症

慢性腎臓病の進行例で、体内の代謝異常や毒素蓄積が神経を刺激してしゃっくりを起こします。
倦怠感・吐き気・むくみを伴い、進行すると意識障害に至ることもあります。
検査:血液検査(BUN、クレアチニン、電解質)、尿検査。


9. 薬剤性しゃっくり

**ステロイド・ベンゾジアゼピン系・抗がん剤・鎮痛薬(モルヒネ系)**などの服用後にみられることがあります。
薬剤性の場合は中枢性または末梢性刺激によるものが多く、服薬歴の確認が重要です。
検査:服薬歴・血液検査(肝腎機能)、医師による薬剤評価。


10. 糖尿病性神経障害

長期の糖尿病罹患者で、迷走神経障害によりしゃっくりが出現することがあります。
だるさ・胃もたれ・立ちくらみなど自律神経症状を伴うことが多いです。
検査:血糖、HbA1c、自律神経機能検査。


■ 診断に必要な主な検査

検査 内容
上部消化管内視鏡 逆流性食道炎・胃炎・潰瘍の確認
胸部X線・CT 肺炎・腫瘍・横隔膜病変の評価
頭部MRI/CT 中枢性しゃっくり(脳梗塞・腫瘍など)の鑑別
腹部エコー/CT 肝胆膵疾患や横隔膜下膿瘍の検出
血液検査 肝腎機能、電解質、炎症反応、血糖の確認
心電図・心エコー 心疾患や心膜炎の鑑別
服薬歴・問診 薬剤性やストレス関連の確認

■ まとめ

しゃっくりは多くの場合一過性で自然に治まりますが、

  • 48時間以上続くしゃっくり

  • 吐き気・頭痛・胸痛・黄疸・意識障害を伴う場合
    には、中枢神経疾患・心疾患・肝胆膵疾患の可能性があります。

当院では、内視鏡・画像検査・血液検査を組み合わせた総合的評価により、
一見軽いしゃっくりの背後にある疾患を正確に見極め、適切な治療を行います。