肝臓・胆のう・膵臓

MASH / MAFLD (代謝機能障害関連脂肪肝炎/肝疾患)

1. 疾患の概要

MAFLD(Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease/代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、2020年に国際的に提唱された新たな病名で、従来「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていた病態をより実態に即して再定義したものです。MAFLDは、肝臓に脂肪が蓄積し、糖尿病・肥満・脂質異常症・高血圧などの代謝異常を背景に発症する疾患を指します。

MAFLDの中でも、肝臓の炎症や線維化(肝硬変の前段階)が進行した病態をMASH(Metabolic dysfunction-associated steatohepatitis/代謝機能障害関連脂肪肝炎)と呼びます。これは旧来の「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」に相当する病名で、進行すると肝硬変や肝細胞がんのリスクが高まるため、早期発見・管理が重要です。

日本国内では、MAFLDは40歳以上の約3人に1人が該当するとの報告もあり、生活習慣病の一環として非常に身近な疾患です。男女ともに発症しますが、中年以降の肥満傾向のある方や糖尿病患者で多くみられるのが特徴です。

 

2. 主な症状

MAFLDおよびMASHは初期には自覚症状がほとんどありません。多くの場合、健康診断などで「肝機能異常(AST・ALTの上昇)」や「脂肪肝を指摘された」といった所見から発見されます。

進行した場合には以下のような症状が現れることがあります:

  • 倦怠感や疲労感

  • 右上腹部の違和感や痛み

  • 食欲低下や体重減少

  • 腹水や黄疸(肝硬変へ進行した場合)

MASHに進展すると、肝線維化が進行し、やがて肝硬変・肝細胞癌へ至るケースもあります。症状が乏しいまま進行する点が大きなリスクであり、定期的な検査が極めて重要です。

 

3. 診断に必要な検査

MAFLDやMASHの診断には以下のような検査を組み合わせて行います:

  • 血液検査:肝酵素(AST・ALT・γ-GTP)、脂質、血糖、HbA1c、インスリン抵抗性などを確認します。

  • 腹部超音波(エコー)検査:脂肪肝の有無や腫瘤の有無を評価します。
    当院のエコーは脂肪沈着度合い、肝の硬さを数値化する機能を搭載しております。
    脂肪沈着が続くと肝臓は炎症により線維化し硬くなります。それらの数値をフォローアップに使用します。

  • 腹部CT検査:肝臓の脂肪量や線維化の進行を評価するために有効です。

  • 肝生検(必要に応じて):確定診断のために肝組織を採取し、脂肪の沈着や炎症、線維化の程度を直接評価します。

当院では、血液検査と腹部エコーに加えて、必要に応じてCTや他院との連携による高度な検査のご案内も行っております。

 

4. 主な治療方法

MAFLD・MASHの治療は、生活習慣の改善が基本となります。進行例や高リスク例では、薬物療法を併用することもあります。

  • 食事療法:カロリー制限、糖質や脂質の過剰摂取を避け、栄養バランスを整える食事指導を行います。

  • 運動療法:週3~5回、1回30分以上の有酸素運動(ウォーキングなど)を推奨します。

  • 減量指導:体重の5~10%の減量により、肝機能の改善が期待できます。

  • 薬物療法:現時点でMAFLD/MASHに対する承認薬はありませんが、糖尿病や高脂血症、高血圧などの基礎疾患の治療を通じて肝病態の改善が期待できます。

当院では、食事指導、運動のアドバイス、内服治療、定期的な肝機能モニタリングを通じて、患者様一人ひとりに合った治療を行っております。

 

5. 予防や生活上の注意点

MAFLDおよびMASHは、日々の生活習慣を見直すことで発症や進行を予防できる疾患です。

  • バランスの取れた食事:野菜・魚中心の和食が推奨されます。

  • 適度な運動:習慣的な身体活動が代謝改善に寄与します。

  • 禁酒・節酒:少量でもアルコールが肝臓に負担をかける場合があります。

  • 禁煙:喫煙は動脈硬化や肝機能低下のリスクとなります。

  • 定期的な健診:無症状のうちに異常を早期に発見することが重要です。


当院では、脂肪肝の早期発見・診断から生活指導、継続的なフォローアップまで一貫してサポートしています。健康診断で「脂肪肝」と言われた方や、生活習慣病を指摘された方は、早めの受診をおすすめします。