肝臓・胆のう・膵臓

胆のう炎

■ 疾患の概要

胆嚢炎は、胆嚢(たんのう)に炎症が起こる病気で、主に胆嚢内にある胆石によって胆汁の流れが滞り、感染や炎症を引き起こすことで発症します。胆嚢は肝臓の下に位置し、胆汁を一時的に貯めておく役割がありますが、この胆汁の排出が妨げられると細菌感染や組織障害が生じ、急性胆嚢炎として発症します。

多くは胆石を原因とする「胆石性胆嚢炎」ですが、ごくまれに胆石を伴わない「無石性胆嚢炎」もあり、特に高齢者や重症の基礎疾患を持つ方に見られます。

日本では高齢化の進行に伴い、胆石の保有率が上昇傾向にあり、50歳以上の男女で胆石を有する方が増加していることから、胆嚢炎の罹患も決して少なくありません。男性よりも女性の方が若干多く、特に40代以降での発症が目立ちます。

■ 主な症状

胆嚢炎の典型的な症状には以下のようなものがあります:

  • 右上腹部の痛み(特に肋骨の下)

  • 発熱(38℃以上のことが多い)

  • 吐き気・嘔吐

  • 食欲不振

  • 右肩や背中への放散痛

特に右上腹部の持続的な痛みは胆嚢炎の特徴で、脂っこい食事の後に悪化する傾向があります。高齢者では痛みが軽く、発熱や倦怠感のみを訴えることもあり、注意が必要です。

また、病状が進行すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)や敗血症性ショックに至ることもあり、早期の診断と治療が重要です。

■ 診断に必要な検査

胆嚢炎の診断には、以下の検査が用いられます:

  • 血液検査:炎症の有無(白血球数、CRPなど)、肝機能や胆道系酵素(AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン)を確認します。

  • 腹部超音波検査(エコー):胆嚢壁の肥厚、胆石の有無、胆嚢周囲の液体貯留などを確認します。最も初期診断に有用です。

  • 腹部CT検査:胆嚢の形態や周囲への炎症波及の評価、胆嚢穿孔や膿瘍の有無などをより詳細に調べることができます。

  • MRI(MRCP)検査:胆管結石や総胆管の閉塞など、胆道全体の評価に用いられます(症例に応じて)。

当院では、初診時に迅速な血液検査および腹部エコーを実施し、必要に応じてCT検査を追加して診断を進めています。

■ 主な治療方法

治療方針は症状の重症度によって異なりますが、基本的には以下のような流れとなります:

  • 抗生物質による治療:軽症〜中等症の急性胆嚢炎では、点滴での抗菌薬投与が基本です。

  • 絶食・点滴管理:胆嚢の安静を保ちつつ、水分・栄養は点滴で補います。

  • 鎮痛薬の使用:痛みや吐き気の緩和のために必要に応じて投薬します。

  • 胆嚢摘出手術(胆嚢摘除術):再発予防のため、炎症が落ち着いた段階で腹腔鏡下手術による胆嚢摘出を行うことが一般的です。重症例では緊急手術が必要なこともあります。

  • ドレナージ処置:手術が困難な高齢者や重症例では、経皮的胆嚢ドレナージ(PTGBD)により胆汁の排出を図ります。

当院では、初期治療を行った後、必要に応じて専門医療機関との連携を図り、外科的治療が必要な場合は迅速にご紹介いたします。

■ 予防や生活上の注意点

胆嚢炎は、胆石や生活習慣の改善によって予防が可能な疾患です。

  • 脂肪分の多い食事を控える

  • 暴飲暴食を避け、規則正しい食習慣を保つ

  • 肥満・メタボリック症候群の改善

  • 適度な運動習慣の継続

  • 胆石を指摘された方は定期的なフォローアップを受ける

また、過去に胆嚢炎を経験された方や胆石を有する方は、食後の違和感や軽い痛みを軽視せず、早めの受診を心がけることが大切です。


当院では、胆嚢炎の早期診断・内科的治療から、必要時の手術対応まで一貫して患者様の状態に合わせた診療を行っております。右上腹部の痛みや胆石を指摘されたことのある方は、ぜひ一度ご相談ください。