肝臓・胆のう・膵臓
脂肪肝
1. 疾患の概要
脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積された状態で、健康な肝臓に比べて脂肪の割合が異常に増加している状態を指します。
以前は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」や「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と呼ばれていましたが、現在では国際的に「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MAFLD:Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease)」および「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:Metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」という名称が推奨されています。
この名称変更は、単にアルコール摂取の有無に焦点を当てるのではなく、代謝異常(肥満、糖尿病、高脂血症など)との関連性を重視する観点から行われたものです。
2. 発症の原因
脂肪肝(MAFLD)は主に以下のような代謝異常を背景として発症します。
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肥満(特に内臓脂肪型)
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2型糖尿病
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高脂血症(中性脂肪やLDLコレステロールの増加)
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高血圧
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運動不足や過栄養(高カロリー・高脂肪食)
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遺伝的素因や一部の薬剤の影響
特に肥満やインスリン抵抗性を有する方に多く、代謝に関わる生活習慣病を抱えている方は注意が必要です。
3. 日本における傾向と罹患率
日本国内における脂肪肝の有病率は成人の約30%とされており、その多くがMAFLDに該当します。さらに進行性のMASH(炎症と線維化を伴う状態)は全体の1〜2割に認められ、放置すると肝硬変や肝がんへ進行するリスクがあるため、早期の診断と介入が重要です。
4. 主な症状
初期の脂肪肝(MAFLD)は多くの場合無症状です。しかし、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
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倦怠感
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右上腹部の違和感
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食欲不振
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肝機能検査異常(ASTやALTの上昇)
MASHに進展すると、慢性的な炎症や線維化が進み、肝硬変や肝がんを引き起こす可能性があります。
5. 診断に必要な検査
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血液検査:AST、ALT、γ-GTP、脂質、血糖、HbA1cなどを測定します。
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腹部エコー検査:肝臓の脂肪蓄積を視覚的に確認します。
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腹部CT検査:肝臓の密度低下を評価し、脂肪量を推定します。
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肝線維化マーカー:FIB-4 indexやFibroScanなどで線維化の進行度を評価します。
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肝生検:必要に応じて確定診断や重症度の判定を行います(MASHの評価)。
6. 主な治療方法
脂肪肝(MAFLD/MASH)には、現時点で承認された特効薬はありません。治療の基本は以下のような生活習慣の改善です。
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体重の適正化(目標は5〜10%の減量)
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食事療法:高脂肪・高糖質の制限、バランスの取れた食事を意識
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運動療法:有酸素運動を中心に週3〜5日
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併存疾患の管理:糖尿病、高血圧、高脂血症の薬物治療
当院では、血液検査・腹部エコー・CT・生活指導に基づく総合的な診療体制を整えております。
7. 予防および生活上の注意点
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適正な体重管理
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バランスの取れた食生活
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継続的な運動習慣
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定期的な肝機能チェックと医療機関でのフォロー
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過度なアルコール摂取の回避
当院での対応
泉胃腸科外科医院では、脂肪肝(MAFLD/MASH)に対して以下のようなサポートを行っています。
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肝機能異常の精査(血液検査、エコー、CT)
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代謝異常のスクリーニングと治療
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食事・運動に関する生活指導
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必要に応じた専門機関への紹介
「脂肪肝は放っておかないことが大切です」
ご自身の健康状態が気になる方は、お早めにご相談ください。
健康診断で肝機能異常を指摘された方、生活習慣病をお持ちの方は特に注意が必要です。
当院では丁寧な診察と分かりやすい説明を心がけております。