胃・十二指腸

十二指腸ポリープ(十二指腸腺腫)

1. 疾患の概要

十二指腸ポリープとは、胃の出口に続く腸管である「十二指腸」の内側にできる隆起性の粘膜病変を指します。一般的に「ポリープ」とは、腸管の内腔へ向かって盛り上がった病変の総称であり、良性のものから、がん化の可能性を含むものまで幅広く存在します。

十二指腸ポリープは、胃や大腸に比べて発生頻度は少ないものの、消化器内視鏡の発展により発見される機会が増加しています。発見されたポリープは、腺腫性(前がん病変)非腺腫性(過形成性や炎症性など)かによって治療方針が異なります。


発症の原因

十二指腸ポリープの原因は多岐にわたり、明確に特定できないこともありますが、以下のような因子が関与していると考えられています。

  • 加齢に伴う粘膜の変性

  • 慢性的な刺激や炎症(胃酸の逆流など)

  • ヘリコバクター・ピロリ感染

  • 脂質の多い食生活、喫煙、過度の飲酒

  • 遺伝的要因(家族性大腸腺腫症など)

  • 内分泌疾患の一部

特に、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)と呼ばれる遺伝性疾患では、十二指腸に多数のポリープが形成されることがあります。


日本国内における発症傾向

十二指腸ポリープは一般人口では比較的稀で、内視鏡検査を受けた人の1〜2%程度に発見されるとされています。50歳以上の中高年に多くみられ、男性にやや多い傾向があります。自覚症状に乏しいため、健康診断や他疾患の精査中に偶然発見されることがほとんどです。


2. ポリープの種類

十二指腸ポリープにはいくつかの種類があり、それぞれ臨床的な対応が異なります。

① 腺腫性ポリープ(Adenomatous polyp)

  • 最も重要な病変で、腺腫性変化を伴う前がん病変

  • 大腸ポリープと類似の性質を持ち、将来的にがん化するリスク

  • 発見された場合、多くは内視鏡的切除が推奨

② 過形成性ポリープ(Hyperplastic polyp)

  • 良性病変で、炎症や再生過程で発生

  • 通常はがん化のリスクが非常に低く、小さければ経過観察

③ 炎症性ポリープ(Inflammatory polyp)

  • 潰瘍や炎症の治癒過程で発生する一過性の隆起

  • 基本的に治療の必要はないが、大きさや形状によっては切除対象

④ 脂肪腫(Lipoma)

  • 粘膜下の脂肪細胞からなる良性腫瘍

  • 出血や閉塞などの症状があれば治療対象

⑤ ブルンナー腺過形成(Brunner’s gland hyperplasia)

  • 十二指腸特有の分泌腺(ブルンナー腺)の過形成によるポリープ様病変

  • 一般に良性であり、経過観察が可能

⑥ 神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor)

  • 小さなポリープ状にみえることがあり、生検による組織診断が必須

  • がんとの鑑別が重要

これらのポリープの性状を正確に評価するには、内視鏡観察と病理検査(生検)が不可欠です。


3. 診断に必要な検査

十二指腸ポリープの診断には、以下の検査を組み合わせて行います。

① 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

  • ポリープの形態、大きさ、数、出血の有無を直接観察

  • **組織を採取して病理検査(生検)**を行うことで、良性か悪性かを判別可能

② 腹部超音波検査(腹部エコー)

  • 十二指腸近傍の胆のうや膵臓などの関連臓器評価

③ CT検査

  • ポリープの大きさや周囲組織への影響を精査

  • 膵・胆道系の合併疾患の有無も確認

④ 血液検査

  • 貧血の有無(出血を伴う場合)

  • 肝機能・膵酵素値の確認

必要に応じて、初診から内視鏡、病理診断までを当院で一貫して行うことが可能です。


4. 主な治療方法

治療方針は、ポリープの種類(良性・悪性)、大きさ、形態、患者様の全身状態により決定されます。

【経過観察】

  • 小さく、良性と判断されるポリープ

  • 無症状かつ変化の兆候がない場合

  • 定期的な内視鏡フォローが必要

【内視鏡的切除】

  • 腺腫性ポリープや出血・増大傾向のある病変が対象

  • 高周波スネアなどを用いてポリープを切除

  • 日帰りまたは短期入院での処置が可能

【外科的治療】

  • 大きくて内視鏡切除が困難な場合や悪性の可能性が高い場合

  • 消化管の一部を切除する手術が必要になることもあります(稀)


5. 予防や生活上の注意点

【予防のための生活習慣】

  • 野菜や食物繊維を多く含むバランスの取れた食事

  • 過度な脂肪・アルコール摂取の制限

  • 禁煙の継続

  • ピロリ菌感染が疑われる場合は早期の検査・除菌

【再発予防とフォローアップ】

  • 一度ポリープが見つかった方は、定期的な内視鏡検査が重要

  • 腺腫性ポリープは再発・多発しやすいため、特に注意が必要です

  • FAPなどの遺伝的背景がある方は家族性リスクの評価も検討


おわりに

十二指腸ポリープは多くが良性ですが、がん化のリスクを伴うものもあり、発見後の適切な評価と管理が重要です。
内視鏡技術の進歩により、早期発見・低侵襲な治療が可能となっております。

泉胃腸科外科医院では、精密な内視鏡検査と患者様に応じた治療方針のご提案を通じて、安心して受診できる医療を提供しています。「健診でポリープを指摘された」「消化器の不調が続く」といった方は、ぜひお気軽にご相談ください。