胃腸・消化器の疾患
舌がん
1. 疾患の概要
舌がんとは、舌の表面を覆う粘膜にできる悪性腫瘍(がん)の一種で、多くは扁平上皮がんと呼ばれるタイプです。がんが発生する部位としては、舌の前方2/3(可動部)にできることが多く、特に舌の縁(側縁)に好発します。
舌は食べ物を噛んだり飲み込んだりする際に重要な働きをする器官であり、がんの進行とともに会話や食事が困難になることがあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
発症の要因としては以下が知られています:
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喫煙および過度の飲酒
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慢性的な機械的刺激(合わない入れ歯や尖った歯など)
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口腔衛生状態の不良
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ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
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加齢や遺伝的素因
日本国内では、年間約8,000人以上が口腔がんと診断されており、そのうち約半数が舌がんとされています。特に50歳以上の男性に多く見られますが、近年では若年層や女性の発症例も増加傾向にあります。
2. 主な症状
舌がんの初期症状は軽度であることが多く、口内炎と間違えられることも少なくありません。主な症状は以下の通りです:
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治りにくい口内炎や潰瘍(2週間以上持続)
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舌のしこりや硬く盛り上がった部分
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舌にできた白い(白斑)または赤い(紅斑)変化
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話しづらい、舌の動きに違和感がある
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食事時の痛みや出血
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舌や顎のしびれ、リンパ節の腫れ
症状はがんの進行に伴い悪化し、痛みやしこりが強くなっていきます。また、進行がんでは頸部リンパ節への転移が起こりやすくなるため、早期に医療機関を受診することが大切です。
3. 診断に必要な検査
舌がんが疑われる場合には、視診・触診をはじめとする詳細な検査を行い、確定診断と病期の把握を行います。
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視診・触診
口腔内の状態を直接確認し、病変部の形状・硬さ・大きさを評価します。
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生検(組織検査)
病変部の組織を一部採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる確定診断法です。
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超音波検査(頸部エコー)
リンパ節の腫大や転移の有無を確認します。
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CT検査・MRI検査
がんの広がりや深達度、周囲組織や骨への浸潤、リンパ節や遠隔転移の評価に用います。
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PET-CT検査(必要に応じて)
全身の転移評価に有効で、進行がんで特に有用です。
診断は、初診時の所見・生検結果をもとに確定し、画像検査でステージを判定した上で、治療方針が決定されます。
4. 主な治療方法
舌がんの治療は、がんの進行度(ステージ)、年齢、全身状態、発音や咀嚼などの機能維持を考慮して個別に決定されます。
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手術療法
がんを切除し、必要に応じてリンパ節郭清も行います。早期であれば部分切除、進行例では広範切除および再建術が選択されることもあります。
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放射線療法
早期がんでは根治を目的に放射線治療単独で行われることもあります。手術後の補助療法や、手術困難例にも適応されます。
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化学療法(抗がん剤治療)
再発防止や、放射線治療との併用(化学放射線療法)として使用されます。進行例や手術不適応例では、全身化学療法が選択されます。
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免疫療法(一部進行例)
近年では、がん免疫チェックポイント阻害薬の使用も一部で検討されています。
舌がんは、早期発見であれば治療効果が高く、機能温存も可能です。当院では、口腔内の異常に対する早期対応、適切な医療機関との連携、術後の生活支援までを一貫してサポートいたします。
5. 予防や生活上の注意点
舌がんは、生活習慣や口腔内の衛生状態と深く関わっているがんのひとつです。以下の点に注意することで、予防および早期発見につながります。
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禁煙・節酒の徹底
喫煙と飲酒は、舌がんの最大の危険因子です。とくに両方を併用する方はリスクが高まります。
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口腔内の清潔保持
日常的な歯磨き・うがい、歯科検診を怠らず、合わない入れ歯や尖った歯は早めに調整しましょう。
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食生活の改善
野菜や果物、ビタミン類を多く摂り、栄養バランスの取れた食事を心がけることもがん予防に効果的です。
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定期的な口腔内チェック
特に喫煙歴・飲酒歴のある方は、年に1回程度、歯科や内科での口腔内診察を受けることをおすすめします。
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治りにくい口内炎があれば早期受診を
「2週間以上治らない口内炎」や「しこり・痛みが続く」といった症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
舌がんは、初期症状が見逃されやすいものの、早期発見と適切な治療により、機能温存と予後改善が可能ながんです。
泉胃腸科外科医院では、口腔内の異変にも注意を払い、必要に応じて専門機関への紹介やフォローアップ体制を整えています。
気になる症状がある方や、口の中に異常を感じた方は、どうぞお気軽にご相談ください。