胃腸・消化器の疾患
咽頭がん
1. 疾患の概要
咽頭がんとは、鼻の奥から喉頭(のどぼとけ)までを含む「咽頭」と呼ばれる部位に発生する悪性腫瘍のことです。咽頭は大きく以下の3つに分類され、それぞれでがんの性質や症状が異なります。
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上咽頭がん(鼻の奥)
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中咽頭がん(口の奥・扁桃部)
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下咽頭がん(喉頭のすぐ上)
いずれも、がんが進行するにつれて周囲の組織やリンパ節、肺・骨などの遠隔臓器に転移することがあります。
咽頭がんの発症には、以下のような要因が関与するとされています:
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長期間の喫煙・飲酒(特にアルコールとタバコの併用)
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ヒトパピローマウイルス(HPV)感染(特に中咽頭がん)
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慢性的な咽頭への刺激(胃酸逆流、粉塵の吸入など)
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栄養状態の不良や口腔衛生不良
日本国内では、年間1万人以上が咽頭がんと診断されており、その大半は中高年の男性です。特に50〜70代の喫煙・飲酒歴がある男性に多く、上咽頭がんでは若年層の発症も報告されています。
2. 主な症状
咽頭がんの症状は、がんの発生部位と進行度によって異なります。以下に主な部位ごとの症状を示します。
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上咽頭がん
・鼻づまり、鼻出血、耳閉感、聴力低下(耳管開口部の圧迫による)
・首のリンパ節の腫れ(初発症状となることも)
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中咽頭がん(扁桃や舌根部)
・のどの痛み、違和感
・飲み込みづらさ(嚥下障害)
・声のかすれ、口臭
・耳の奥の痛み(放散痛)
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下咽頭がん
・食物がつかえる感じ
・声のかすれ、呼吸困難(進行例)
・咳、痰、血痰
いずれの部位においても、早期は無症状のことも多く、風邪や咽頭炎と間違われやすいため注意が必要です。また、進行により頸部リンパ節や遠隔転移を来すこともあるため、早期発見・早期治療が極めて重要です。
3. 診断に必要な検査
咽頭がんの診断では、内視鏡検査を中心に、組織検査や画像検査を組み合わせて行います。
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咽頭内視鏡検査(ファイバースコープ)
鼻や口から内視鏡を挿入し、咽頭全体の粘膜を直接観察します。腫瘍の大きさ・色調・出血の有無を評価し、必要に応じて**組織を採取(生検)**します。
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血液検査
炎症反応や腫瘍マーカー(SCC、CYFRAなど)、全身状態の評価に用います。
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CT・MRI検査
がんの進行度(深達度や周囲への浸潤)、リンパ節転移や骨浸潤の有無を確認します。
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PET-CT検査(必要に応じて)
全身の遠隔転移(肺、骨、肝など)を評価するために行われます。
診断は、初診での視診・問診→内視鏡→病理診断→画像検査によるステージ分類という流れで行われます。
4. 主な治療方法
治療法は、がんの部位・ステージ・全身状態により異なりますが、主に以下の選択肢があります。
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手術療法
がんを切除する方法で、早期がんでは内視鏡的切除や部分切除が選択されます。進行例では咽頭の一部または全部の切除を伴う大がかりな手術が必要となることもあります。
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放射線療法
がん細胞を死滅させる治療で、早期例では根治的に使用されるほか、術後補助療法や再発予防として併用されます。
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化学療法(抗がん剤)
放射線療法と併用する化学放射線療法として行う場合や、手術前後の補助療法、または再発例の全身治療として使用されます。
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免疫療法・分子標的薬(一部進行例)
近年、免疫チェックポイント阻害薬が一部の咽頭がんに使用可能となり、治療の幅が広がっています。
当院では、診断後の精査を速やかに行い、必要に応じて耳鼻咽喉科・がん治療専門施設との連携を図りながら、患者さまに最も適した治療方針をご提案いたします。
5. 予防や生活上の注意点
咽頭がんは生活習慣病の一種とされ、予防には日々の心がけが極めて重要です。
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禁煙・節酒の徹底
タバコや多量のアルコール摂取は、咽頭がんの最大の危険因子です。特に両者を併用している場合、発がんリスクが飛躍的に高まるため注意が必要です。
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口腔・咽頭の衛生管理
うがいや歯みがきなどを習慣づけ、口腔内の清潔を保つことががん予防につながります。
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バランスの取れた食生活
野菜や果物に含まれる抗酸化物質(ビタミンA、C、E)は、発がんを抑制する作用があるとされています。
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咽頭の違和感や痛みが続く場合は早めに受診
2週間以上続く喉の違和感、声のかすれ、耳の痛みなどがある場合は、風邪と自己判断せず、医療機関を受診してください。
咽頭がんは、初期には症状が乏しいことが多いため、早期発見が非常に重要です。
泉胃腸科外科医院では、口腔・咽頭領域の異変にも丁寧に対応し、必要に応じて専門医療機関との連携を行いながら、地域の皆さまの健康を支える医療を提供しています。
違和感がある、喉の症状が続くなど、気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。