肝臓・胆のう・膵臓
急性膵炎
■ 疾患の概要
急性膵炎は、膵臓(すいぞう)という消化酵素を分泌する臓器が、自らの酵素によって自己消化され、炎症を起こす病気です。膵臓は胃の裏側、みぞおちの奥に位置しており、消化や血糖の調節に重要な役割を果たしています。
急性膵炎の原因としては、アルコールの過剰摂取や胆石が最も多く、その他にも高脂血症、ウイルス感染、薬剤性、外傷など多岐にわたります。中でもアルコール性膵炎は男性に多く、胆石性膵炎は女性に多い傾向があります。
日本においては、年々アルコール消費量の増加や高齢化に伴い、急性膵炎の患者数は増加傾向にあります。
■ 主な症状
急性膵炎の症状は、炎症の程度や広がりによって異なりますが、代表的なものは以下の通りです:
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みぞおちから左上腹部にかけての激しい痛み
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背中に響くような痛み(放散痛)
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吐き気・嘔吐
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発熱
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腹部膨満感や圧痛
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食欲不振
特に痛みは、食後や飲酒後に強く現れることが多く、横になっても改善せず、背中を丸めると少し楽になることがあります。重症化すると、呼吸困難や意識障害、血圧低下などの全身症状を呈することもあります。
■ 診断に必要な検査
急性膵炎の診断は、症状に加えて以下の検査結果を組み合わせて行われます:
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血液検査:膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の上昇が診断の重要な指標となります。また、白血球数、CRP、肝機能、腎機能、電解質なども併せて評価します。
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腹部超音波検査(エコー):胆石の有無、胆嚢の腫れ、膵周囲の炎症や液体貯留の有無を確認します。
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腹部CT検査:膵臓の腫れ、壊死や膿瘍の有無、周囲臓器への影響をより詳細に評価します。中等症以上の診断に必須です。
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腹部MRI(MRCP):胆管や膵管の詳細な評価に有用で、胆石の原因検索にも適しています。
当院では、初診時に血液検査と腹部エコーを迅速に実施し、必要に応じて高度医療機関でのCT・MRI検査をご案内いたします。
■ 主な治療方法
急性膵炎の治療は、炎症の進行を抑え、合併症を防ぐための全身管理が中心となります。主な治療内容は以下の通りです:
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絶食・点滴:膵臓を安静に保ち、消化酵素の分泌を抑えるため、一定期間の絶食を行い、必要な栄養や水分、電解質は点滴で補います。
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鎮痛剤の投与:強い痛みに対して適切な鎮痛管理を行います。
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抗生剤の使用:感染の兆候がある場合に限り、抗菌薬を使用します(予防的な使用は原則行いません)。
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原因の治療:胆石が原因の場合は、胆嚢摘出術や内視鏡的治療(ERCP)を検討します。アルコール性であれば禁酒指導が重要です。
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重症例への対応:膵臓壊死や膿瘍、呼吸・腎機能の低下を伴う場合は、集中治療管理や外科的処置が必要となることもあります。
当院では、軽症から中等症の急性膵炎に対し、初期対応と全身管理を行い、重症化の兆候がある場合は速やかに専門病院と連携し、適切な加療に移行いたします。
■ 予防や生活上の注意点
急性膵炎の再発を防ぐためには、以下のような生活習慣の見直しが非常に重要です:
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過度の飲酒を避ける(または完全に禁酒)
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脂肪分の多い食事を控える
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胆石がある方は、定期的なフォローと早期の胆嚢摘出を検討する
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食後すぐの激しい運動を避ける
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高脂血症や糖尿病のコントロール
また、急性膵炎の既往がある方は、軽い腹痛でも早めに受診することが再発予防につながります。
当院では、急性膵炎の早期診断と内科的初期治療に加え、再発防止に向けた生活指導や必要な場合の専門機関への紹介を行っております。強い腹痛や飲酒後の体調不良を感じた際は、お早めにご相談ください。