症状

右下腹部痛・右側腹部痛

■ 右下腹部痛・右側腹部痛を起こす主な鑑別疾患(全10選)

1. 急性虫垂炎(いわゆる盲腸)

発症初期は臍周囲に痛みを感じ、右下腹部へ移動するのが典型的です。
10〜30代の若年層に多く、悪心・発熱・食欲不振を伴います。
【検査】腹部CT、血液検査(白血球、CRP)、腹部エコー。


2. 大腸憩室炎(右側型)

大腸壁の憩室に炎症が起こり、右下腹部に持続的な痛みと発熱を認めます。
比較的若年男性に多く、虫垂炎との鑑別が必要です。
【検査】腹部CT、血液検査、腹部エコー。


3. 尿管結石(右側)

右の側腹部から下腹部にかけての激しい疝痛が特徴で、血尿や吐き気を伴うことも。
30〜50代の男性に多く、発作性に強い痛みを生じます。
【検査】非造影腹部CT、尿検査(潜血)、超音波検査。


4. 腸炎(感染性)

ウイルスや細菌感染により腸管が炎症を起こし、右下腹部を中心に痛みが出ることがあります。
下痢、発熱、嘔吐などを伴い、幅広い年齢層で発症します。
【検査】便培養、便ウイルス抗原検査、血液検査、腹部超音波。


5. 卵巣出血・卵巣嚢腫捻転(右側)〔女性限定〕

排卵時の卵巣出血や嚢腫の捻転により、右下腹部に突然の鋭い痛みが出現します。
妊娠可能年齢の女性に多く、月経周期との関連が見られることもあります。
【検査】経腟超音波、血液検査(貧血・炎症反応)、妊娠反応検査。


6. 子宮外妊娠(異所性妊娠)〔女性限定〕

受精卵が卵管に着床し、妊娠初期に右下腹部の痛みと不正出血を引き起こします。
妊娠可能年齢の女性で、月経遅れがある場合には緊急対応が必要です。
【検査】妊娠反応検査(hCG)、経腟超音波、血液検査。


7. クローン病

小腸末端(回腸)に好発し、右下腹部痛と慢性的な下痢・体重減少を認めます。
10〜30代の若年層に多く、再発と寛解を繰り返します。
【検査】小腸内視鏡(バルーン内視鏡など)、腹部CT・MRI、血液検査。


8. 腸閉塞(イレウス)

腸の通過障害により、右側腹部に張るような痛み、吐き気、排便停止が起こります。
手術歴のある中高年者に多く、癒着や腫瘍が原因になることがあります。
【検査】腹部X線、腹部CT、血液検査(電解質、炎症反応)。


9. 腹部大動脈瘤の破裂・解離(右側の関連痛)

大動脈の拡張または破裂が、右側腹部に放散する激痛として現れることがあります。
高齢男性、高血圧や喫煙歴がある方では緊急疾患として要注意です。
【検査】造影CT、腹部超音波、血圧・ショック指数の評価。


10. 筋・神経由来の痛み(筋膜炎・肋間神経痛など)

運動や姿勢の負担で筋肉や神経に炎症が起こり、体動で誘発される右側腹部痛を生じます。
年齢を問わず発症し、局所圧痛や動作痛が特徴です。
【検査】身体診察、必要に応じてX線や超音波、MRI。


■ 補足

右下腹部・右側腹部の痛みは、消化器・泌尿器・婦人科・血管系・筋骨格系など、多様な原因が考えられます。
痛みの性質、発症のきっかけ、随伴症状(発熱、下痢、出血など)を丁寧に評価し、適切な画像・血液・尿検査を組み合わせることで、迅速かつ的確な診断が可能となります。