症状
下腹部痛
■ 下腹部痛を起こす主な鑑別疾患(全10疾患)
1. 膀胱炎・尿路感染症
下腹部の鈍痛や違和感、排尿時痛、頻尿を伴うことが多い疾患です。
女性に多く、特に性行為後や寒冷時に発症しやすい傾向があります。
【検査】尿検査、尿培養、血液検査(CRP、白血球)。
2. 過敏性腸症候群(IBS)
ストレスや食習慣に影響されて便通異常とともに下腹部痛を繰り返します。
20〜40代女性に多く、排便によって痛みが軽減するのが特徴です。
【検査】大腸内視鏡(除外診断)、便検査、腹部X線。
3. 便秘(慢性便秘症)
排便困難や排便回数の減少により、下腹部の張りや不快感を訴えることがあります。
高齢女性に多く、水分・運動不足、薬剤の影響が関与します。
【検査】腹部X線、触診、排便造影、大腸内視鏡(除外目的)。
4. 大腸憩室炎(特にS状結腸)
左下腹部を中心とした持続的な痛みと発熱、便通異常を認めます。
中高年に多く、食物繊維不足や便秘傾向がリスクになります。
【検査】腹部CT、血液検査、大腸内視鏡(炎症沈静後)。
5. 卵巣出血・卵巣嚢腫捻転〔女性限定〕
排卵や嚢腫のねじれによって突然の下腹部痛を生じ、悪心や出血を伴うことがあります。
妊娠可能年齢の女性に多く、月経周期と関連することもあります。
【検査】経腟超音波、血液検査、妊娠反応検査(hCG)。
6. 子宮内膜症・子宮筋腫〔女性限定〕
月経に関連した下腹部痛が特徴で、慢性的な骨盤痛や不妊の原因にもなります。
20〜40代女性に多く、性交痛・排便時痛・過多月経も認められることがあります。
【検査】経腟超音波、MRI、腫瘍マーカー(CA125など)。
7. 子宮外妊娠(異所性妊娠)〔女性限定〕
卵管などに受精卵が着床し、破裂すると激しい下腹部痛と出血をきたします。
月経遅れのある妊娠可能年齢の女性では、緊急対応が必要です。
【検査】妊娠反応検査(hCG)、経腟超音波、血液検査。
8. 骨盤内炎症性疾患(PID)〔女性限定〕
クラミジアや淋菌などによる感染が広がり、下腹部痛、発熱、帯下が見られます。
性活動のある若年女性に多く、不妊や慢性骨盤痛の原因になることもあります。
【検査】膣分泌物培養、内診、超音波検査、血液検査。
9. クローン病・潰瘍性大腸炎(炎症性腸疾患)
慢性の下痢・腹痛が持続し、体重減少や血便がみられることもあります。
10〜30代に多く、自己免疫が関与する腸管の慢性炎症です。
【検査】大腸内視鏡+生検、血液検査(CRP、貧血)、便中カルプロテクチン。
10. 虫垂炎(初期)
典型的には右下腹部痛を呈しますが、発症初期には下腹部中央や臍周囲に痛みを感じることもあります。
若年層に多く、発熱・食欲不振・悪心などを伴います。
【検査】腹部CT、血液検査、腹部超音波。
■ 補足
下腹部痛は、消化器・泌尿器・婦人科系・感染症・機能性疾患など多彩な原因によって生じます。
痛みの性質・持続時間・周期性・随伴症状(排尿異常、月経との関連、発熱など)を総合的に判断し、適切な画像・血液・尿検査を組み合わせることで正確な診断に導くことが重要です。