症状

下痢

■ 下痢を起こす主な鑑別疾患(全10選)

1. 感染性腸炎細菌ウイルス

突然の水様性下痢や腹痛、発熱、嘔吐などがみられる急性の疾患です。
全年齢に発症し、夏は非特異的なウイルス性、冬はノロウイルスなどが多く見られます。
【検査】血液検査(白血球・炎症反応)、便培養、便ウイルス抗原検査、腹部エコー。


2. 抗菌薬関連下痢(CD腸炎・偽膜性腸炎を含む)

抗生物質使用中または使用後に起こる下痢で、重症化すると偽膜性大腸炎を引き起こします。
高齢者や入院中の患者で頻度が高く、発熱や腹痛を伴うことがあります。
【検査】便中クロストリジウム・ディフィシル毒素検査、便培養、血液検査。


3. 過敏性腸症候群(IBS)〔下痢型〕

ストレスや食事が誘因となり、腹痛とともに繰り返す下痢を伴う機能性疾患です。
20〜40代の女性に多く、排便によって症状が軽快するのが特徴です。
【検査】大腸カメラ(除外診断)、便検査、腹部X線。


4. 潰瘍性大腸炎(UC)

大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘血便・腹痛・下痢が繰り返されます。
若年〜中年に多く、自己免疫の関与が示唆されています。
【検査】大腸カメラ、組織生検、便中カルプロテクチン、血液検査(貧血・炎症反応)。


5. クローン病

消化管全体に炎症や潰瘍を形成し、下痢・腹痛・体重減少が特徴です。
10〜30代に好発し、若年男性にやや多い傾向があります。
【検査】大腸カメラ、組織生検、便中カルプロテクチン、血液検査(貧血・炎症反応)。


6. 大腸がん

進行すると腸管通過障害を引き起こし、下痢や便秘、血便を繰り返します。
50歳以上に多く、体重減少や貧血を伴う場合は特に要注意です。
【検査】大腸内視鏡、組織生検、便潜血、腹部CT、腫瘍マーカー。


7. 胆汁性下痢(胆嚢摘出後や胆道疾患に関連

胆汁酸の過剰な排出により、大腸が刺激されて水様性下痢が生じます。
胆嚢摘出後の中高年にみられ、早朝の下痢や食後の排便が特徴です。
【検査】病歴聴取、便性評価、除外診断(大腸カメラ)。


8. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)

代謝亢進によって腸の動きが活発になり、頻回の軟便や下痢を呈します。
20〜40代女性に多く、動悸、発汗、体重減少を伴うことがあります。
【検査】血液検査(甲状腺ホルモン[TSH・FT4])、甲状腺エコー。


9. 膵外分泌不全(慢性膵炎、膵がんなど)

消化酵素の分泌が不足し、脂肪便や水様便が慢性的にみられます。
中高年男性に多く、食後の下痢や体重減少、脂っぽい便が特徴です。
【検査】便中脂肪、血清アミラーゼ・リパーゼ、腹部CT、腹部エコー。


10. 寄生虫感染(ジアルジア、アメーバ赤痢など)

発展途上国からの帰国者や免疫抑制状態にある方で見られる慢性下痢の原因です。
水様便や粘液便、腹痛が持続し、時に発熱や体重減少を伴います。
【検査】便虫卵検査、便PCR・抗原検査、血清学的検査。


■ 補足

下痢は一過性の症状として軽視されがちですが、感染・炎症性疾患・内分泌異常・悪性疾患など、多様な疾患の兆候である可能性があります。症状の持続性・性状・出血や発熱の有無などを的確に把握し、必要な検査を組み合わせて的確な診断へ導くことが重要です。