生活習慣病

高脂血症

■ 高脂血症とは

高脂血症とは、血液中に含まれる脂質(コレステロールや中性脂肪)が正常範囲を超えて高くなった状態を指します。近年は「脂質異常症」という名称が一般的に用いられています。脂質は体にとって必要不可欠な成分ですが、過剰になると動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気を引き起こす要因となります。


■ 脂質の種類と異常のタイプ

脂質異常症には以下の3つのタイプがあります:

  • LDLコレステロール(悪玉)高値
     動脈壁に沈着して動脈硬化を進行させます。140mg/dL以上が異常とされます。
     詳細は高LDLコレステロール血症の項に記載しています。

  • HDLコレステロール(善玉)低値
     余分なコレステロールを回収する働きがあります。40mg/dL未満が異常です。

  • 中性脂肪(トリグリセライド)高値
     食事や飲酒により増えやすく、150mg/dL以上が異常です。

これらの異常が1つまたは複数組み合わさることで、心血管疾患のリスクが増大します。


■ 主な原因とリスク因子

脂質異常症は以下のような生活習慣体質により引き起こされます:

  • 高脂肪食(特に動物性脂肪の多い食事)

  • 飲酒・喫煙

  • 運動不足

  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満)

  • 糖尿病や高血圧

  • 加齢(特に中高年)

  • 遺伝的要因(家族性高コレステロール血症)

また、更年期以降の女性では女性ホルモンの減少により脂質代謝が変化し、LDLコレステロールが上昇しやすくなります。


■ 自覚症状はほとんどありません

脂質異常症は、ほとんどが無症状で進行します。自覚症状がないまま、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞などを発症するケースも少なくありません。そのため、健康診断や血液検査での早期発見・定期的なチェックが非常に重要です。


■ 診断に必要な検査

脂質異常症の診断は、空腹時の血液検査により行います。

  • LDLコレステロール

  • HDLコレステロール

  • 中性脂肪(TG)

  • 総コレステロール

  • Non-HDLコレステロール(LDL以外のアテローム性脂質)

また、動脈硬化の進行度を評価するために以下の検査も行うことがあります:

  • 頸動脈エコー(動脈硬化の有無)

  • 心電図・心エコー

  • ABI(足関節上腕血圧比)

  • CTによる冠動脈評価(必要に応じて)


■ 脂質異常症が引き起こす主な疾患

脂質異常が長期にわたり続くと、全身の血管が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行します。特に以下の病気のリスクが高くなります:

  • 心筋梗塞・狭心症

  • 脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)

  • 閉塞性動脈硬化症(ASO)

  • 大動脈瘤

  • 慢性腎臓病(CKD)


■ 治療の基本は生活習慣の改善

脂質異常症の治療は、まず生活習慣の見直しから始めます。以下の対策が有効です:

◉ 食事療法

  • 動物性脂肪やトランス脂肪酸の摂取を控える

  • 魚・大豆・野菜・食物繊維を多く摂る

  • 食塩は1日6g未満に

  • 飲酒は節度をもって

◉ 運動療法

  • 週に3〜5回、30分程度の有酸素運動(ウォーキングなど)を推奨

  • 体重の5〜10%減少でも大きな効果があります

◉ 禁煙

  • 喫煙はHDLコレステロールを低下させ、血管を傷つけます


■ 薬物療法

生活習慣の改善だけで目標値に届かない場合や、動脈硬化性疾患の既往がある方には、薬物治療が必要です。代表的な薬には以下のようなものがあります:

  • スタチン:LDLコレステロールを強力に低下

  • エゼチミブ:コレステロール吸収を抑制

  • フィブラート系薬剤:中性脂肪の低下、HDLの上昇

  • EPA製剤:中性脂肪を下げ、抗炎症効果も期待

  • PCSK9阻害薬:注射薬。重度の高LDL血症に使用されます

※ 薬の種類は、年齢・体質・他の病気の有無を考慮して個別に選択されます。


■ まとめ

脂質異常症は、日常生活の中では自覚されにくい疾患ですが、放置すると命に関わる重大な病気の引き金になることがあります。定期的な血液検査と生活習慣の見直し、必要に応じた治療の継続によって、健康的な血管と心血管イベントの予防が可能です。

当院では、脂質異常症の早期発見・予防・治療に力を入れており、患者さん一人ひとりに合った指導と管理を行っています。健康診断で「コレステロールが高い」と言われた方も、どうぞお気軽にご相談ください。