生活習慣病
高LDLコレステロール血症
■ 高LDLコレステロール血症とは
高LDLコレステロール血症とは、血液中のLDL(低比重リポタンパク)コレステロール値が慢性的に高くなっている状態を指します。LDLコレステロールは俗に「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、過剰になると血管内に沈着し、動脈硬化を進行させる大きな要因となります。
日本動脈硬化学会では、LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合を「高LDLコレステロール血症」と定義しています。症状がないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気のリスクを高めるため、定期的な血液検査による早期発見が重要です。
■ LDLコレステロールとは
コレステロールは脂質の一種で、ホルモンや細胞膜の材料として必要不可欠な成分ですが、その輸送を担うリポタンパクのうち、LDLは肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役割を果たします。
このLDLが過剰になると、血管壁に入り込んで動脈硬化の原因となり、血流障害や血栓形成を引き起こします。
■ 主な原因と危険因子
高LDLコレステロール血症は、以下のような要因によって起こります:
-
脂質の多い食生活(動物性脂肪、加工食品、トランス脂肪酸など)
-
運動不足
-
肥満(特に内臓脂肪型肥満)
-
遺伝的体質(家族性高コレステロール血症など)
-
加齢(特に閉経後の女性)
-
糖尿病や甲状腺機能低下症の合併
-
喫煙・飲酒
中でも、家族性高コレステロール血症(FH)は遺伝性疾患で、若年から著しいLDL-C高値を示し、40歳未満でも心筋梗塞のリスクが高まるため、早期発見と治療が不可欠です。
■ 自覚症状が乏しいことに注意
高LDLコレステロール血症は、自覚症状がほとんどないまま進行します。そのため、健康診断や定期的な血液検査で発見されることが多く、放置すると動脈硬化が進行して取り返しのつかない疾患を引き起こす可能性があります。
■ 合併しやすい疾患・引き起こす可能性のある病気
LDLコレステロールの高値は、血管の内側にプラーク(脂質の塊)を形成し、以下のような重大な病気を引き起こします:
-
狭心症・心筋梗塞(冠動脈疾患)
-
脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)
-
閉塞性動脈硬化症(ASO)
-
頸動脈狭窄症・大動脈瘤
-
慢性腎臓病(CKD)
■ 診断のための検査
高LDLコレステロール血症の診断には、空腹時血液検査が基本となります。以下の項目を確認します:
-
LDLコレステロール(140mg/dL以上が基準)
-
HDLコレステロール(善玉)
-
中性脂肪(TG)
-
総コレステロール
-
Non-HDLコレステロール(LDLを含む動脈硬化性脂質の指標)
加えて、以下の検査で動脈硬化の進行度を確認することもあります:
-
頸動脈エコー
-
ABI(足関節上腕血圧比)
-
心電図・心エコー
-
眼底検査
-
冠動脈CT検査(必要に応じて)
■ 治療の基本は生活習慣の改善と必要に応じた薬物療法
◉ 生活習慣の改善
-
食事指導:動物性脂肪やトランス脂肪酸を控え、野菜・魚・食物繊維を増やします
-
運動療法:週3〜5回の有酸素運動が推奨されます
-
体重管理:内臓脂肪を減らすことがLDL-Cの低下に直結します
-
禁煙・節酒:喫煙はHDLを低下させ、血管障害を加速させます
◉ 薬物療法
目標値に達しない場合や、動脈硬化性疾患をすでに有している場合には、薬物治療が必要です。
・狭心症や心筋梗塞の既往がある場合:70mg/dL以下
・慢性腎臓病、糖尿病、脳梗塞などリスクの高い場合:100mg/dL以下
・上記以外:140mg/dL以下
代表的な治療薬は以下の通りです:
-
スタチン(第一選択):LDLコレステロールを強力に低下させます
-
エゼチミブ:腸管でのコレステロール吸収を抑制
-
PCSK9阻害薬(注射製剤):家族性高コレステロール血症や高リスク症例に使用
-
レジン製剤:胆汁酸の再吸収を阻害し、コレステロールの排出を促進
薬剤は長期的な服用が必要となるため、定期的な通院と血液検査による経過観察が不可欠です。
■ まとめ
高LDLコレステロール血症は、動脈硬化の最大の危険因子のひとつです。症状が出ないからといって放置すると、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を引き起こしかねません。
しかし、生活習慣の改善と適切な治療により、十分にコントロール可能な疾患でもあります。当院では、患者さん一人ひとりのリスクに応じた治療方針を丁寧にご説明し、無理なく継続できる方法をご提案いたします。
血液検査で「LDLが高い」と指摘された方や、家族に心臓病の既往がある方は、ぜひ一度ご相談ください。