生活習慣病
高血圧
■ 高血圧とは
高血圧とは、血圧が慢性的に基準より高い状態を指します。血圧とは、心臓が血液を送り出す際に血管にかかる圧力のことで、「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」の2つで表されます。日本高血圧学会では、診察室血圧で140/90mmHg以上、または家庭血圧で135/85mmHg以上を高血圧と定義しています。ガイドラインでは年齢やご病気によって目標血圧が変わります。
高血圧は自覚症状が乏しく、気づかないうちに血管や臓器に負担をかけ、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全などの重篤な疾患を引き起こすリスクがあるため、「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれます。
■ 高血圧の分類
高血圧は大きく以下の2つに分類されます:
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本態性高血圧(一次性高血圧):
高血圧の約90〜95%を占め、明確な原因は不明ですが、遺伝的素因、生活習慣、加齢などが複合的に関与します。 -
二次性高血圧:
腎臓病や内分泌異常(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など)、睡眠時無呼吸症候群、薬剤の影響など、明らかな原因が存在するタイプです。若年発症や治療抵抗性の場合は、精査が必要です。
■ 高血圧の原因とリスク因子
高血圧の発症・悪化には、以下のような要因が関係します:
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塩分の過剰摂取
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肥満
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運動不足
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喫煙・過度の飲酒
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ストレス
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加齢(特に60歳以降に多い)
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家族歴(遺伝的体質)
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糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病
■ 高血圧による主な症状
軽度〜中等度の高血圧では、ほとんど症状を感じません。ただし、以下のような症状が現れることがあります:
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頭痛(特に後頭部)
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肩こり
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動悸
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めまい
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耳鳴り
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視力のかすみ
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ふらつき
これらの症状は、他の病気でも起こりうるため、「血圧測定」での確認が重要です。
■ 高血圧が引き起こす合併症
高血圧は、長期間にわたり全身の血管に負担をかけ、以下のような重篤な合併症を引き起こします:
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脳血管障害(脳出血・脳梗塞・一過性脳虚血発作)
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心疾患(狭心症、心筋梗塞、心不全)
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腎障害(慢性腎臓病、腎不全)
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大動脈瘤や解離
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網膜症(視力低下、眼底出血)
■ 診断に必要な検査
高血圧の診断と評価には以下のような検査が行われます:
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血圧測定(診察室・家庭)
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血液検査(腎機能、脂質、血糖など)
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尿検査(蛋白尿、尿潜血など)
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心電図・心エコー(左室肥大や不整脈の評価)
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胸部X線検査(心拡大の有無)
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頸動脈エコー、眼底検査(動脈硬化の評価)
また、若年者や薬剤抵抗性の高血圧では、二次性高血圧を疑ってホルモン検査や腎動脈造影、睡眠検査が追加されることもあります。
■ 高血圧の治療
治療は「生活習慣の改善」を基本とし、必要に応じて薬物療法を行います。
高血圧治療ガイドラインにもとづいた目標血圧は原則として75歳未満は 家庭血圧125/75mmHg, 診察室血圧130/80mmHg
75歳以上は家庭血圧135/85mmHg, 診察室血圧140/90mmHgです。
◉ 生活習慣の改善
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減塩(1日6g未満を目標)
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体重管理(適正BMIを目指す)
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適度な運動(有酸素運動を週3回以上)
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禁煙
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節酒
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ストレス対策(十分な睡眠、リラクゼーション)
◉ 薬物療法
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Ca拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬などを体質や合併症に応じて選択します。
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長期にわたる服薬管理が必要であり、継続的な通院と血圧チェックが重要です。
- 当院では合剤を積極的に採用しています。初回導入には血圧に応じてCa拮抗薬またはARB、もしくはその両方を使用します。
- 2回目からは必要に応じて2剤の合剤を使用します。血圧を見ながら腎機能や心機能に応じて利尿薬やβ遮断薬を追加していきます。
■ 高血圧の予防と自己管理
高血圧は、発症前からの予防と、診断後の自己管理がとても重要です。家庭での定期的な血圧測定を習慣づけること、診察時には「朝・夜の家庭血圧の記録」を持参することが望まれます。
■ まとめ
高血圧は放置すると命にかかわる病気を引き起こすリスクがある一方で、早期発見と継続的な治療により、十分にコントロール可能な病気でもあります。自覚症状が乏しいからこそ、定期的な健康診断と家庭での血圧チェック、日々の生活習慣の見直しが重要です。
当院では、患者さん一人ひとりに合わせた高血圧の管理と指導を行っております。ご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。