小腸・大腸・肛門

痔核(いぼ痔)

1. 疾患の概要

痔核(じかく)とは、いわゆる「いぼ痔」のことを指し、肛門やその周辺の血管がうっ血してふくらみ、いぼ状になった状態をいいます。痔の中でも最も多く見られるタイプで、内痔核(肛門の内側にできるもの)と外痔核(肛門の外側にできるもの)の2種類に大別されます。これらが同時に発生することもあり、その場合は混合痔核と呼ばれます。

痔核は成人の多くが経験する疾患であり、日本国内では成人の2人に1人が何らかの痔の症状を有するといわれるほど、非常に一般的です。特に30~60代の男女に多く、男女比に大きな差はありません。


2. 発症の原因とリスク因子

痔核の発症には、以下のような生活習慣や身体的要因が関係しています:

  • 排便時のいきみ(便秘・下痢)

  • 長時間の座位・立位

  • 妊娠・出産による腹圧上昇

  • 過度なアルコール摂取や香辛料の多い食事

  • 加齢による血流のうっ滞

便秘などにより排便時に強くいきむことが、血管に負担をかけ、痔核の形成・悪化につながります。


3. 主な症状

痔核の症状は、できた場所や重症度によって異なります

  • 内痔核

    • 初期は痛みを伴わず、排便時の出血(鮮血)で気づかれることが多いです。

    • 進行すると、脱出(痔核が肛門の外に出る)を起こすことがあり、違和感や不快感を伴います。

  • 外痔核

    • 表面に皮膚があるため、強い痛みを伴うことが多く、特に血栓ができた場合は急激な腫れと激痛を引き起こします。

  • 共通症状

    • 出血、腫れ、痛み、肛門部の違和感、排便時の苦痛などが見られます。

他の疾患(直腸がん、大腸ポリープ、裂肛など)との鑑別が必要なため、出血や肛門の異常を感じた際には早期の受診が重要です。


4. 診断に必要な検査

当院では、以下のような検査を通じて痔核の有無や重症度を判断します:

  • 視診・触診:肛門部の腫れや痔核の大きさを確認します。

  • 肛門鏡検査:肛門の内側の痔核を直接観察します。

  • 直腸指診:指で肛門内を触診し、腫瘤の有無を確認します。

  • 必要に応じた大腸内視鏡検査:出血が長期にわたる場合や他の疾患が疑われる場合に行います。


5. 主な治療方法

痔核の治療は、症状の程度に応じて保存的治療(薬や生活指導)から外科的治療(手術)まで多岐にわたります。

  • 保存的治療

    • 座薬・軟膏・内服薬による炎症の軽減と血流改善

    • 排便習慣の改善(便秘・下痢のコントロール)

    • 温浴(坐浴)による血行促進と疼痛緩和

  • 外科的治療

    • ジオン注射療法(ALTA療法):内痔核に対して注射で血流を遮断し、痔核を縮小させる治療。日帰り手術として行うことも可能です。

    • 痔核切除術:痔核を切除する根治的治療法。外痔核や重度の内痔核に適応されます。

患者さんの症状やご希望に応じた治療方針をご提案いたします。
当院では、保存的治療のみ対応しており、外科的治療が必要な場合は専門施設にご紹介します。


6. 予防や生活上の注意点

痔核の予防と再発防止には、日々の生活習慣の見直しが重要です。

  • 排便習慣の改善

    • トイレに長時間こもらず、いきまずに排便する

    • 規則正しい食生活と十分な水分・食物繊維の摂取で便通を整える

  • 生活習慣の見直し

    • 長時間の座りっぱなしを避け、適度に体を動かす

    • 入浴や坐浴で肛門部を清潔に保ち、血行を促進する

    • アルコール・香辛料・刺激物の摂り過ぎに注意する

    • ドーナツ型の座布団を使用する

当院からのメッセージ

痔核は恥ずかしさから受診が遅れることもありますが、早期に診断・治療を行うことで、痛みや不快感から早く解放され、生活の質も向上します。症状が軽いうちにご相談いただくことが、治療期間や負担を軽減する第一歩となります。

どんな小さなお悩みでも、お気軽に当院へご相談ください。