裂肛(切れ痔)

裂肛（れっこう）とは、排便時に肛門の皮膚や粘膜が切れてしまう疾患で、一般的には「切れ痔」と呼ばれています。痔の中でも女性に多くみられるタイプで、便秘傾向のある方や、硬い便が出やすい方に多く見られます。

裂肛は排便時に強い痛みを伴うことが特徴で、進行すると傷が慢性化し、治癒しにくくなるだけでなく、肛門の筋肉が収縮してさらに症状が悪化するという悪循環に陥ることもあります。

裂肛の主な原因は、硬く太い便が通過することによって肛門が裂けることです。以下のような生活習慣や状態がリスク因子となります：

特に女性は便秘傾向や冷えを伴いやすいため、女性に多い痔疾患の一つとされています。

裂肛の主な症状は以下の通りです：

痛みのために排便を我慢するようになると、便がさらに硬くなり、症状が悪化するという悪循環に陥りやすい点に注意が必要です。

診断は主に視診と触診で行われます。痛みのある部位を確認し、慢性化の程度を見極めます。

視診・触診：肛門周囲を観察し、裂けた部位の有無や出血・炎症の程度を確認します。
肛門鏡検査：必要に応じて肛門内を詳細に観察するために使用します。
大腸内視鏡検査：出血の原因が裂肛に限らないと考えられる場合（年齢や出血量などにより）、大腸ポリープや大腸がんなどの除外診断のために行うことがあります。

裂肛の治療は急性期（初期）と慢性期（繰り返す・長期化したもの）で方針が異なります。

急性裂肛
- 軟膏治療（抗炎症薬、鎮痛剤、血流改善薬など）
- 坐浴（ぬるま湯で肛門を温める）による血行促進
- 便を柔らかくする薬（緩下剤）を使用し、排便時の刺激を軽減
- 食生活の改善（水分・食物繊維の摂取）
慢性裂肛
- 繰り返す裂肛では、傷が瘢痕化し、肛門の筋肉（内肛門括約筋）が収縮しやすくなります。
- この場合、血流を改善する薬や、肛門の筋肉を緩める薬を併用します。
- 重度の場合は手術（内肛門括約筋の一部切開）が必要になることもありますが、日帰り手術で対応可能なこともあります。

当院では、保存的治療を基本とし、症状に応じた薬物療法や生活指導を行っています。必要に応じて、専門医による外科的対応もご案内可能です。

裂肛を予防し、再発を防ぐためには、日々の排便習慣と食生活の見直しが不可欠です。

便通の改善
- 水分をしっかり摂取し、食物繊維の多い食事（野菜・果物・海藻類など）を心がけましょう。
- 排便は我慢せず、便意を感じたらすぐにトイレへ。
- トイレで長時間いきむことは避けてください。
冷えの予防
- 下半身を温め、血行を促進することで痔全般の予防にもつながります。
ストレスの軽減や適度な運動
- 腸の働きを整え、便通のリズムを整えるのに役立ちます。

裂肛は、早期に治療を始めることで痛みを和らげ、再発を予防できる疾患です。症状を我慢し続けることは、日常生活の質を大きく損ないます。肛門の痛みや出血に気づいた場合には、恥ずかしがらず、早めの受診をお勧めします。

当院では、女性医師・スタッフによる対応やプライバシーに配慮した診療体制も整えておりますので、安心してご相談ください。