口腔内・のど・食道
食道異物
1. 疾患の概要
食道異物とは、食べ物や異物が食道内に引っかかり、自然に通過せずに停滞してしまう状態を指します。食道は、口から摂取されたものを胃に送るための管状の臓器であり、長さはおよそ25〜30cm、粘膜と筋肉から構成されています。この通路に異物が引っかかると、通過障害や炎症、まれには穿孔(穴があくこと)などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
食道異物は小児に多くみられる疾患とされてきましたが、成人では入れ歯や骨片、錠剤、食塊(特に肉やもち)などが原因で発生することがあります。高齢者や神経疾患を抱える方、咀嚼・嚥下機能が低下した方に多くみられます。
発症の原因
【主な原因】
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魚骨や鶏骨などの鋭利な食物
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肉類や餅などの大きな食塊
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誤って飲み込んだ入れ歯や義歯
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大きな薬剤(カプセルや錠剤)
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異食症による異物(硬貨、小物など)
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咀嚼不良や嚥下障害を伴う疾患(脳梗塞後遺症、パーキンソン病など)
また、加齢により嚥下機能が低下した高齢者、アルコール摂取時の咀嚼不全、急いで食事をとった際などにもリスクが高まります。
日本国内における発症傾向
食道異物に関する正確な罹患率は報告が少ないものの、救急搬送を要する消化管異物の中では比較的頻度の高い疾患とされています。特に高齢化社会を背景に、嚥下障害に起因する食塊閉塞の件数は増加傾向にあります。男女差は大きくありませんが、認知機能低下や飲酒習慣を有する中高年男性に多い傾向がみられます。
2. 主な症状
食道異物による症状は、異物の種類や大きさ、停滞している部位によって異なります。
【主な症状】
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咽喉部の違和感や圧迫感
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嚥下時の痛み(嚥下困難)
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胸部痛、胸やけ
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よだれが増える(唾液嚥下困難)
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嘔吐や食事の逆流
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呼吸困難(気道圧迫がある場合)
放置すると、粘膜損傷や食道穿孔、感染症(縦隔炎)といった重篤な合併症を招く可能性があるため、違和感が続く場合は速やかな医療機関の受診が重要です。
3. 診断に必要な検査
【診断の流れと検査】
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問診・視診
飲み込んだとされる物の内容、症状の出現時期や程度を詳しく確認します。 -
X線検査(単純撮影)
金属や骨などX線で写る異物を確認する際に有用です。 -
CT検査(必要時)
食道穿孔や縦隔への影響が疑われる場合に実施されます。 -
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
異物の位置・大きさを直接確認し、同時に内視鏡的に摘出が可能です。粘膜損傷や穿孔の有無も評価できます。
泉胃腸科外科医院では、胃カメラによる緊急検査・処置が迅速に可能な体制を整えております。
4. 主な治療方法
【内視鏡的治療】
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異物の多くは内視鏡を用いて口側から摘出が可能です。
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特殊な鉗子やネットを用いて、安全に除去します。
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粘膜が傷ついている場合は、追加の治療や観察が必要です。
【手術治療(まれ)】
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異物が食道壁を穿孔した場合や、内視鏡で摘出できない場合には外科手術が必要になります。
【薬物療法】
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胃酸抑制薬(PPI)を用いて粘膜を保護
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抗菌薬(穿孔や感染が疑われる場合)
泉胃腸科外科医院では、緊急対応可能な体制のもと、迅速な内視鏡的摘出と術後のフォローを一貫して行っております。
5. 予防や生活上の注意点
【予防のための生活習慣】
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よく噛んで食べる(特に肉類や餅など)
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入れ歯の適合確認・定期的な歯科受診
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飲酒後の食事に注意(咀嚼不良のリスク)
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小児や高齢者の誤嚥・誤飲防止策(小物や錠剤の管理)
【再発防止のための対策】
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嚥下障害がある場合は嚥下機能評価
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必要に応じて嚥下リハビリや専門医への紹介
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食事形態の見直しや栄養指導
おわりに
食道異物は決してまれな疾患ではなく、適切な対応が遅れると深刻な合併症につながる恐れがあります。
異物を飲み込んだ可能性がある、あるいは飲食後に喉や胸に違和感を感じた場合は、自己判断せず、早めの医療機関受診をおすすめします。
泉胃腸科外科医院では、内視鏡による異物除去、迅速な診断、丁寧なアフターケアを通じて、患者さまの安心と安全をサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。