症状

発熱

【発熱を起こす病気とその鑑別】

発熱は、体内で炎症・感染・免疫反応・腫瘍性変化などが起きていることを示す重要なサインです。
多くは一過性の感染症ですが、発熱が長引く場合(3日以上)や高熱が続く場合は、重篤な疾患の可能性もあります。


1. かぜ症候群(上気道炎)

最も頻度の高い発熱の原因で、**ウイルス感染(ライノ・コロナ・アデノなど)**が主因です。
のどの痛み・鼻水・咳・倦怠感を伴います。通常は数日で自然軽快します。
検査:咽頭診察、インフルエンザ・コロナ抗原検査、血液検査(白血球・CRP)。


2. インフルエンザ

冬季に多い急性ウイルス感染症で、38〜40℃の高熱・頭痛・筋肉痛・倦怠感が特徴です。
全年齢層で発症しますが、高齢者や基礎疾患のある方では重症化することがあります。
検査:迅速抗原検査、PCR検査、血液検査(白血球減少)。


3. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

近年最も注目される感染症で、発熱・咽頭痛・咳・嗅覚障害・倦怠感が多く見られます。
高齢者や免疫低下者では肺炎や呼吸不全に至ることもあります。
検査:抗原検査・PCR検査、胸部X線・CT。


4. 急性扁桃炎・咽頭炎

細菌(特に溶連菌)やウイルスによる咽頭の炎症です。
のどの痛み・発熱・リンパ節の腫れを伴い、若年者に多い傾向があります。
検査:咽頭視診、溶連菌迅速検査、血液検査(白血球・CRP)。


5. 肺炎

ウイルス・細菌・マイコプラズマなどによる肺の感染症です。
発熱・咳・痰・息苦しさ・胸痛を伴い、高齢者では症状が軽くても重症化することがあります。
検査:胸部X線・CT、血液検査(白血球・CRP・プロカルシトニン)、喀痰培養。


6. 尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)

特に女性に多く発熱・排尿時痛・頻尿を伴う場合は尿路感染を疑います。
腎盂腎炎では背部痛や悪寒戦慄を伴い、高熱となることがあります。
検査:尿検査(白血球・亜硝酸塩)、尿培養、血液検査、腹部エコー。


7. 虫垂炎・胆嚢炎・腎盂腎炎などの腹部感染症

腹部臓器の感染や炎症で、発熱に加えて局所の腹痛を伴います。
右下腹部痛・右上腹部痛・背部痛などの部位により原因臓器を推測します。
検査:腹部エコー、CT、血液検査(白血球・CRP)。


8. 感染性腸炎(細菌性・ウイルス性)

食中毒や汚染食品の摂取後に発症し、発熱・下痢・腹痛・嘔吐を伴います。
サルモネラ・カンピロバクター・ノロウイルスなどが主な原因菌です。
検査:便培養、便抗原検査、血液検査(脱水評価)。


9. 膠原病・自己免疫性疾患(SLE・成人スティル病など)

感染症以外の原因として、免疫の異常により炎症を起こす疾患です。
発熱・関節痛・皮疹・倦怠感など多彩な症状を呈します。
検査:血液検査(ANA、抗dsDNA抗体、フェリチン)、CRP、骨髄検査。


10. 悪性腫瘍・血液疾患(白血病・悪性リンパ腫)

原因不明の発熱が長期に続く場合には腫瘍性疾患を考慮します。
倦怠感・体重減少・貧血・リンパ節腫脹を伴うことが多いです。
検査:血液検査(白血球・LDH)、骨髄検査、CT・PET検査。


■ 診断に必要な主な検査

検査 内容
血液検査(白血球・CRP・プロカルシトニン) 炎症や感染の有無を確認
尿検査 尿路感染や腎臓疾患の評価
胸部X線/CT 肺炎・結核などの呼吸器疾患の診断
腹部エコー/CT 腹部臓器感染や胆石症などの評価
咽頭検査・培養 溶連菌・ウイルス感染の確認
便検査・便培養 感染性腸炎や食中毒の診断
自己抗体検査 膠原病や自己免疫性疾患の鑑別
腫瘍マーカー・骨髄検査 発熱の原因が腫瘍性疾患の場合に実施

■ まとめ

発熱は身体の防御反応であり、多くは感染による一過性のものですが、
高熱が続く・局所症状がある・解熱剤で下がらない・原因不明のまま長引く場合には、
肺炎・尿路感染・膠原病・腫瘍性疾患など重篤な疾患の可能性もあります。

当院では、血液・尿・画像検査などを組み合わせ、感染症から全身疾患まで幅広く鑑別しています。
発熱が続く、原因が分からないといった場合は、早めにご相談ください。