症状
下肢のしびれ
【下肢のしびれを起こす病気とその鑑別】
下肢のしびれは、神経・血流・代謝異常など多様な原因によって起こります。
多くは神経の圧迫や循環障害によるものですが、糖尿病や脳・脊髄疾患など全身性疾患が背景にある場合もあります。
しびれの部位・左右差・経過などを丁寧に評価することが診断の鍵となります。
1. 腰椎椎間板ヘルニア
20〜50代の男性に多く、重い物を持った後などに発症します。
腰の椎間板が突出して坐骨神経を圧迫し、お尻〜太もも〜足先にかけてのしびれや痛みを引き起こします。
検査:MRI、神経学的診察、下肢伸展挙上テスト。
2. 腰部脊柱管狭窄症
中高年男性に多く、加齢による脊椎の変形が原因です。
歩行中に**下肢のしびれや痛みが出現し、休むと軽快(間欠性跛行)**するのが特徴です。
検査:MRI、X線(骨変形の確認)、神経学的評価。
3. 坐骨神経痛
腰椎疾患・梨状筋症候群などにより坐骨神経が圧迫または刺激されることで発症します。
片側の太もも・ふくらはぎ・足先にしびれや放散痛が出現し、腰痛を伴うことも多いです。
検査:MRI、筋電図、徒手神経伸展試験。
4. 糖尿病性神経障害
糖尿病の長期経過中に最も頻度の高い合併症の一つです。
足先から左右対称にしびれ・感覚鈍麻・灼熱感が生じ、進行すると感覚消失により潰瘍を生じることもあります。
検査:血糖・HbA1c、神経伝導速度検査、足底感覚検査。
5. 末梢動脈疾患(PAD/閉塞性動脈硬化症)
高齢男性・喫煙者・糖尿病・高脂血症の方に多くみられます。
歩行時にふくらはぎの痛みやしびれが出て、休むと軽快するのが特徴です。
検査:ABI(足関節上腕血圧比)、下肢血流エコー、造影CT・MRA。
6. 脊髄腫瘍・脊髄損傷
脊髄や神経根を圧迫する腫瘍・外傷により、進行性のしびれや脱力を伴います。
しびれが左右対称または体の上下で境界をもつ場合は中枢性疾患を疑います。
検査:脊髄MRI、神経伝導検査、髄液検査。
7. 多発性硬化症・視神経脊髄炎
20〜40代の女性に多い自己免疫性の中枢神経疾患です。
一時的なしびれ・視力低下・筋力低下が再発・寛解を繰り返すことがあります。
検査:MRI(脱髄病変の確認)、髄液検査、自己抗体(AQP4抗体)。
8. ビタミンB12欠乏性末梢神経障害
高齢者や胃切除後、長期PPI使用者に多く見られます。
足先のしびれ・歩行時のふらつきが特徴で、貧血や舌炎を伴うこともあります。
検査:血液検査(ビタミンB12、葉酸、貧血)、神経伝導検査。
9. 甲状腺機能低下症
中年女性に多く、代謝低下により手足のしびれ・むくみ・倦怠感・寒がりが出現します。
しびれは末梢神経の浮腫性圧迫によるもので、適切なホルモン補充で改善します。
検査:血液検査(TSH、FT4、FT3)、甲状腺エコー。
10. 脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)
高血圧・糖尿病・動脈硬化を有する中高年に多く見られます。
突然片側の手足のしびれや脱力を呈し、言語障害やめまいを伴うことがあります。
検査:頭部MRI・MRA、頸動脈エコー、血液検査(凝固系)。
■ 診断に必要な主な検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| MRI(腰椎・脊髄・頭部) | 椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、脳梗塞などの鑑別 |
| 神経伝導速度検査 | 末梢神経障害の有無・範囲の評価 |
| 血液検査 | 糖尿病、ビタミン欠乏、甲状腺機能、炎症、腫瘍マーカーなど |
| ABI・下肢血流エコー | 末梢動脈疾患による循環障害の確認 |
| 髄液検査 | 多発性硬化症や感染性疾患の鑑別 |
| 筋電図 | 神経・筋肉の伝達異常の評価 |
| CT・MRA | 血管性疾患(脳梗塞・動脈閉塞)の評価 |
■ まとめ
下肢のしびれは、神経・血管・代謝異常・脊椎疾患など多彩な原因が関与する症状です。
特に、
-
急に出た片側のしびれや脱力(脳梗塞の可能性)
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歩行時のしびれや痛み(脊柱管狭窄・動脈疾患)
-
糖尿病の既往がある方の足先のしびれ
などは早期受診が重要です。
当院では、神経・血流・代謝の3つの側面から総合的に評価し、MRI・血液・神経伝導検査などを組み合わせて原因を特定します。
しびれが続く、悪化する場合はお早めにご相談ください。