症状
排尿時痛
【排尿時痛を起こす病気とその鑑別】
排尿時痛は、尿路(尿道・膀胱・前立腺など)の炎症や感染によって起こることが多い症状ですが、結石や腫瘍などの構造的異常、さらには性行為感染症や婦人科疾患が原因となる場合もあります。
軽症であっても放置すると重症化することがあるため、早期の原因特定と治療が重要です。
1. 急性膀胱炎
女性に最も多い排尿時痛の原因で、細菌(多くは大腸菌)が膀胱に感染して起こります。
排尿時痛・頻尿・残尿感が特徴で、発熱は軽度またはなし。再発しやすい傾向があります。
検査:尿検査(白血球・細菌)、尿培養。
2. 尿道炎(淋菌性・非淋菌性)
男性では主な原因疾患で、性行為による感染が多いです。
排尿時の強い痛み・尿道からの分泌物・尿道口の赤みを伴います。女性は自覚症状が軽いこともあります。
検査:尿培養、PCR検査(淋菌・クラミジア)、分泌物検査。
3. 腎盂腎炎
膀胱炎から感染が腎臓に波及することで起こり、発熱・背部痛・倦怠感を伴います。
女性に多く、重症化すると敗血症を起こすこともあります。
検査:尿検査(白血球・細菌)、尿培養、血液検査(CRP・白血球)、腹部エコー・CT。
4. 尿路結石症
尿の通り道に結石ができ、**排尿時痛や血尿、背部・側腹部の激痛(疝痛)**を生じます。
男性に多く、中高年で再発しやすい傾向があります。水分不足や食生活が関与します。
検査:尿検査(血尿)、腹部エコー、CT、尿pH測定。
5. 前立腺炎
男性特有の疾患で、前立腺への細菌感染や炎症により排尿時痛・会陰部痛・発熱が出現します。
急性型は若年〜中年男性に多く、慢性型は不定愁訴が持続します。
検査:直腸診、尿検査、前立腺液培養、超音波。
6. 前立腺肥大症に伴う尿路感染
高齢男性に多く、排尿障害(勢いが弱い・残尿感)から感染を起こすことがあります。
排尿時痛・頻尿・夜間排尿を訴えることが多いです。
検査:尿検査、超音波(残尿量測定)、前立腺特異抗原(PSA)。
7. 膀胱がん
高齢者の無痛性血尿が特徴ですが、腫瘍が進行すると排尿時痛や頻尿感を生じます。
喫煙歴・化学物質曝露がリスク因子で、男女ともに注意が必要です。
検査:尿細胞診、膀胱鏡、腹部エコー、CT。
8. 女性の外陰部炎・膣炎
女性に特有の疾患で、外陰部のかゆみ・腫れ・おりもの増加を伴い、排尿時にしみるような痛みを感じます。
カンジダや細菌性膣炎が多く、性交後や免疫低下時に発症します。
検査:膣分泌物検査、培養検査、内診。
9. 性感染症(クラミジア感染症・淋菌感染症など)
若年層に多い感染症で、排尿痛や下腹部痛、分泌物を伴います。
放置すると男性では精巣上体炎、女性では卵管炎や不妊症の原因になります。
検査:PCR検査(尿・分泌物)、血液検査(HIV・梅毒など併発確認)。
10. 膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)
細菌感染がなくても膀胱粘膜に炎症を起こし、排尿時痛や頻尿、膀胱の違和感が慢性的に続く病態です。
中年女性に多く、ストレスとの関連も指摘されています。
検査:尿培養(陰性であることの確認)、膀胱鏡、尿細胞診。
■ 診断に必要な主な検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| 尿検査 | 白血球・細菌・血尿・蛋白の有無を確認 |
| 尿培養検査 | 起因菌の特定と抗菌薬感受性の確認 |
| 腹部エコー/CT | 結石・腫瘍・腎盂腎炎などの評価 |
| 膀胱鏡検査 | 腫瘍・間質性膀胱炎・出血部位の確認 |
| PCR検査 | 性感染症(クラミジア・淋菌など)の検出 |
| 血液検査 | 炎症反応、腎機能、貧血の有無を確認 |
| 前立腺関連検査 | PSA測定、前立腺液培養(男性の場合) |
| 婦人科的検査 | 膣分泌物検査、内診(女性の場合) |
■ まとめ
排尿時痛は、膀胱炎などの軽症感染症から腎盂腎炎・膀胱がんなどの重篤な疾患まで多岐にわたります。
特に、
-
発熱・背部痛・血尿・悪寒を伴う場合
-
症状が繰り返す、または長引く場合
は、早急な検査と治療が必要です。
当院では、尿検査・エコー・培養・内視鏡検査などを組み合わせて原因を的確に診断し、再発予防も含めた包括的な治療を行っております。
排尿時に痛みを感じた際は、早めの受診をおすすめします。