症状

背部痛

【背部痛を起こす病気とその鑑別】

背部痛は、筋骨格系の疾患に加え、心臓・大動脈・肺・消化器・腎臓などの内臓疾患でも生じることがあり、原因は多岐にわたります。
特に突然の激痛や呼吸困難を伴う場合は、命に関わる重篤な疾患のサインであることもあります。


1. 筋・筋膜性腰背部痛(筋肉痛・筋緊張)

長時間のデスクワークや姿勢不良、運動不足により筋肉が緊張・炎症を起こします。
鈍い痛みが持続し、姿勢や動作で悪化します。若年〜中年層に多い日常的な原因です。
検査:身体診察、必要に応じてX線・MRI(骨・神経圧迫の有無を確認)。


2. 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症

腰椎や胸椎の神経が圧迫され、背部から下肢にかけての痛みやしびれを伴います。
**中高年男性に多く、歩行時に悪化し休むと軽快(間欠性跛行)**が見られます。
検査:MRI、X線、神経学的検査。


3. 帯状疱疹

50歳以上に多く、片側の背部に痛みが先行し、数日後に水ぶくれが出現します。
発疹が出る前から焼けるような痛みを訴えることが特徴です。
検査:皮膚所見、血液検査(VZV抗体)。


4. 心筋梗塞・狭心症

心臓の血流障害により、背中や肩甲骨の間に放散する痛みを感じることがあります。
中高年男性・喫煙・高血圧・糖尿病がリスク因子で、胸痛・冷汗・息苦しさを伴う場合は緊急です。
検査:心電図、心筋トロポニン、心エコー、冠動脈CT。


5. 大動脈解離

突然発症する激しい背部痛が特徴で、「引き裂かれるような痛み」と表現されます。
高血圧や動脈硬化のある中高年男性に多く、命に関わる緊急疾患です。
検査:造影CT(大動脈造影)、心エコー、血圧測定。


6. 肺塞栓症・肺梗塞

長時間の安静(飛行機・手術後)の後に突然の背部痛・息苦しさ・胸痛を伴います。
深部静脈血栓症に続発することが多く、迅速な診断と治療が必要です。
検査:造影CT(肺動脈)、Dダイマー、心電図。


7. 膵炎(急性・慢性)

膵臓の炎症により、みぞおちから背中に抜けるような痛みが出ます。
アルコール多飲や胆石が主な原因で、悪心・嘔吐・発熱を伴うことがあります。
検査:血液検査(アミラーゼ・リパーゼ)、腹部CT、超音波。


8. 胆石症・胆嚢炎

右上腹部〜背部にかけて放散痛を生じ、**食後(特に脂っこい食事後)**に起こることが多いです。
女性・中年以降・肥満傾向の方に多い疾患です。
検査:腹部エコー、血液検査(炎症反応・肝胆道系酵素)、CT。


9. 腎盂腎炎・尿路結石

背部や側腹部の痛み・発熱・排尿時痛を伴うことが多く、片側性の痛みが特徴です。
尿路結石は**突然の疝痛発作(激しい痛み)**を伴い、男性に多く見られます。
検査:尿検査、腹部エコー、CT、血液検査(白血球・CRP)。


10. 悪性腫瘍(転移性骨腫瘍・膵がんなど)

安静時や夜間に強い痛みが持続する場合は、悪性疾患を考慮します。
特に前立腺・乳がん・肺がん・膵がんの骨転移が背部痛の原因となることがあります。
検査:MRI、骨シンチ、CT、腫瘍マーカー。


■ 診断に必要な主な検査

検査 内容
X線・MRI 骨・椎間板・神経圧迫の有無を確認
CT(造影を含む) 大動脈・膵臓・胆道・肺・腎の評価
心電図・心エコー 心疾患の確認(狭心症・心筋梗塞など)
血液検査 炎症反応、肝腎機能、膵酵素、貧血の評価
尿検査 尿路感染症や結石の有無を確認
腹部超音波 胆石・腎結石・膵臓・肝胆道系の評価
骨シンチ・腫瘍マーカー 悪性腫瘍や転移性骨病変の精査

■ まとめ

背部痛は一見「筋肉痛」と思われがちですが、心臓・大動脈・膵臓・腎臓などの重大な疾患が原因のこともあります。
特に、

  • 急に強い痛みが出た

  • 息苦しさ・発熱・吐き気・冷汗を伴う

  • 夜間も痛みが続く・体重減少がある
    といった場合は、早急な精査・受診が必要です。

当院では、超音波・CT・血液検査などを組み合わせ、整形外科疾患から内科的疾患まで幅広く鑑別しております。
気になる背中の痛みが続く場合は、お早めにご相談ください。