症状
心窩部痛(胃痛、みぞおちの痛み)
■ 心窩部痛を起こす主な鑑別疾患(全10選)
1. 急性胃炎
暴飲暴食やストレス、薬剤(NSAIDsなど)が原因で胃粘膜に急性の炎症を起こします。
心窩部の灼熱感や不快感、悪心・嘔吐を伴うことが多く、全年齢にみられます。
【検査】胃カメラ、血液検査(炎症反応)、ピロリ菌検査。
2. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸の影響で粘膜が損傷し、心窩部の鈍い痛みや空腹時の胃痛がみられます。
中高年男性に多く、ピロリ菌感染やNSAIDs使用が背景にあります。
【検査】胃カメラ、ピロリ菌検査、便潜血検査。
3. 急性膵炎
心窩部から背中に放散する激しい痛みが特徴で、嘔吐や発熱を伴います。
アルコール多飲や胆石が主な原因で、中年男性に多くみられます。
【検査】血液検査(アミラーゼ・リパーゼ)、腹部CT、腹部エコー。
4. 逆流性食道炎(GERD)
胃酸が食道に逆流し、心窩部や胸の中心に焼けつくような痛みや違和感が出現します。
肥満、脂肪食、加齢が関係し、中高年に多く見られます。
【検査】胃カメラ、食道pHモニタリング、除外診断。
5. 胃がん
初期には症状が乏しいことが多く、進行すると心窩部痛、食欲低下、体重減少などを認めます。
50歳以上に多く、ピロリ菌感染や慢性胃炎の既往がリスクとなります。
【検査】胃内視鏡、組織生検、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)、腹部CT。
6. 胆石症(胆嚢結石)
胆石が胆嚢や胆道に詰まることで、右上腹部から心窩部にかけて痛みが放散します。
脂っこい食事の後に起こりやすく、中高年女性に多く見られます。
【検査】腹部エコー、血液検査(肝胆道系酵素)、腹部CT。
7. 機能性ディスペプシア(FD)
器質的異常がないにもかかわらず、食後の心窩部不快感や早期膨満感が持続します。
20~50代の女性にやや多く、ストレスや胃運動機能の異常が関与します。
【検査】胃内視鏡(除外診断)、ピロリ菌検査、腹部エコー。
8. 狭心症・心筋梗塞(下壁型)
典型的な胸痛ではなく、心窩部痛として現れることがあり、消化器症状と間違われやすい疾患です。
高齢男性に多く、冷汗・動悸・嘔気を伴う場合は要注意です。
【検査】心電図、心筋マーカー(トロポニン)、冠動脈CT。
9. 大動脈瘤破裂・解離(上腹部型)
突発的な激しい心窩部痛を呈し、背部への放散や血圧低下を伴う重篤な疾患です。
動脈硬化や高血圧のある高齢男性に多く、救急対応が必要です。
【検査】造影CT、心エコー(経胸壁・経食道)、血圧測定。
10. 食中毒・感染性腸炎(ノロウイルスなど)
急性の腹痛、心窩部不快感、嘔吐・下痢が発症する消化管感染症です。
全年齢に見られ、潜伏期間は数時間〜1日程度と短く、集団感染もみられます。
【検査】便培養、便ウイルス抗原検査、血液検査。
■ 補足
心窩部痛は、消化器・胆道・心臓・膵臓など複数の臓器に由来する可能性があり、鑑別には**症状の経過、随伴症状(吐き気、胸痛、発熱など)**の把握と適切な検査の組み合わせが重要です。特に、突然の激痛や意識障害、血圧低下を伴う場合には、速やかな医療介入が必要です。