症状
右季肋部痛(右上腹部の痛み)
■ 右季肋部痛を起こす主な鑑別疾患(全10選)
1. 胆石症・急性胆嚢炎
脂っこい食事の後に右季肋部の激しい痛みが出現し、背部へ放散することがあります。
中高年女性に多く、発熱や悪心・嘔吐を伴うことがあります。
【検査】腹部エコー、血液検査(白血球、CRP、肝機能)、腹部CT。
2. 胆管炎・総胆管結石
胆管に石や炎症が起きることで、右季肋部痛に加えて発熱・黄疸を呈します。
高齢者や胆嚢摘出後の方に多く、三徴(発熱・黄疸・右上腹部痛)に注意。
【検査】腹部エコー、MRCP、血液検査(ビリルビン、ALP、AST、ALT)。
3. 急性肝炎(ウイルス性・薬剤性)
肝細胞の炎症により右季肋部の鈍痛や違和感が出現します。
若年〜中年層に多く、全身倦怠感、食欲低下、黄疸を伴います。
【検査】肝機能(AST・ALT・ビリルビン)、ウイルスマーカー、超音波検査。
4. 肝腫瘍(良性・悪性)
進行性の右季肋部の違和感や痛みとして発症し、体重減少・黄疸を伴うことがあります。
肝硬変やB型・C型肝炎ウイルス感染歴のある方に多くみられます。
【検査】腹部エコー、造影CT、腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-II)。
5. 肝膿瘍
感染により肝臓内に膿がたまり、右季肋部痛と発熱、食欲低下が生じます。
糖尿病や高齢者に多く、放置すると敗血症に進行することもあります。
【検査】造影CT、腹部超音波、血液培養、白血球・CRP。
6. 右腎盂腎炎
腎臓に細菌感染が起こることで、右季肋部から背部の痛みと発熱が出現します。
女性に多く、頻尿・排尿痛・悪寒を伴う場合は要注意です。
【検査】尿検査、尿培養、血液検査、腎エコー、腹部CT。
7. 右腎結石・尿管結石
突然の右側背部〜季肋部の激しい痛みが特徴で、血尿を伴うこともあります。
30〜50代男性に多く、脱水や夏季に発症しやすい傾向があります。
【検査】腹部CT(非造影)、尿検査(潜血)、腹部超音波。
8. 胸膜炎・肺炎(右肺下葉)
肺の炎症が横隔膜近くに及ぶことで、右季肋部に痛みを感じることがあります。
発熱、咳、呼吸時痛を伴い、高齢者では症状が不明瞭な場合もあります。
【検査】胸部X線、胸部CT、血液検査(白血球、CRP)。
9. 心不全・うっ血性肝障害
右心不全により肝臓に血液がうっ滞し、右季肋部に鈍痛が生じることがあります。
下肢のむくみや息切れ、頸静脈怒張などを伴うことがあります。
【検査】心エコー、BNP、肝機能検査、胸部X線。
10. 筋・肋骨由来の痛み(肋間神経痛・筋膜炎)
体動や圧痛で誘発される右季肋部の局所的な痛みで、姿勢や咳で悪化することがあります。
外傷や無理な動作の後に生じることが多く、年齢問わず起こります。
【検査】身体診察、必要に応じてX線・超音波。
■ 補足
右季肋部痛は主に胆道系・肝臓・腎臓・肺・筋骨格に由来することが多く、**痛みの性質(鈍痛か激痛か)、随伴症状(発熱・黄疸・排尿症状・食欲不振など)**を丁寧に評価することで、適切な診断に繋がります。