小腸・大腸・肛門
便秘症
1. 疾患の概要
慢性便秘症とは、排便の回数が少ない、または排便時に困難や不快感が伴う状態が長期間にわたって続く疾患です。便秘は一時的なもの(急性便秘)と、3か月以上継続する慢性的なものに分けられます。慢性便秘症は単なる生活習慣の問題ではなく、医学的に治療が必要な「疾患」として位置づけられています。
発症の背景には、食事内容の偏り、水分摂取不足、運動不足、加齢、ストレス、腸の運動機能の低下、服薬の副作用など多くの要因が関係しています。日本人の約5人に1人が便秘の症状を自覚しているとされ、特に女性や高齢者に多い傾向があります。
2. 主な症状
慢性便秘症における主な症状は以下の通りです:
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排便回数の減少(週3回未満)
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排便時のいきみ・腹部不快感
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硬い便やコロコロした便
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便が残っている感じ(残便感)
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排便後のすっきりしない感じ
慢性便秘症は、便の通過に時間がかかる「通過遅延型」と、排便する力が弱い「排出困難型」、両方を併せ持つ「混合型」に分類されます。また、過敏性腸症候群(IBS)の便秘型とは異なり、腹痛との関連性が少ないことが特徴です。
まれに大腸がんや腸閉塞といった器質的疾患が便秘の原因となることもあるため、急激な症状の変化や血便を伴う場合は早急な精査が必要です。
3. 診断に必要な検査
慢性便秘症の診断では、まず問診や生活習慣の確認が重要です。そのうえで、他の疾患との鑑別や、便秘のタイプの特定を目的に以下の検査を行います。
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血液検査:甲状腺機能低下症や電解質異常の有無を確認
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腹部X線検査:腸内のガスや便の貯留状態を評価
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大腸内視鏡検査:大腸がんや炎症性腸疾患、狭窄の有無を確認
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CT検査:腸管の形態や周囲臓器との関係を評価
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排便造影・肛門内圧検査(専門施設で実施):排出困難型の評価
当院では、大腸内視鏡検査を含めた精密検査体制を整えており、必要に応じて他施設との連携による機能検査のご案内も行っております。
4. 主な治療方法
治療は便秘のタイプや症状の程度に応じて個別に対応します。以下に主な治療法を挙げます。
(1)生活習慣の改善
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食物繊維の摂取(野菜・海藻・果物など)
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十分な水分補給
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毎日一定の時間にトイレに行く習慣
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適度な運動(ウォーキングなど)
(2)薬物療法
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浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど):水分を引き込んで便を柔らかくします
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刺激性下剤(センノシドなど):腸の運動を促進します(連用には注意が必要)
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新しい作用機序の慢性便秘治療薬:ルビプロストン(アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)、エロビキシバット(グーフィス)
当院では、患者様の状態に応じて複数の薬剤を組み合わせる治療を行っており、副作用のリスクや長期使用の影響も考慮しながら処方を行っております。
刺激性の下剤は耐性ができたり、さらなる便秘の原因になる可能性があるのでなるべく毎日内服しないように指導しています。
酸化マグネシウムや新しい慢性便秘治療薬の中から合うものを探して内服していきます。
5. 予防や生活上の注意点
慢性便秘症は日常生活の見直しにより改善可能な部分も多い疾患です。以下のポイントにご留意ください。
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毎日の排便リズムを整える
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ストレスの軽減
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加工食品や脂質の摂取過多を避け、和食中心の食事に
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牛乳やヨーグルト、納豆などの発酵食品で腸内環境を整える
また、過度の下剤使用は腸の機能低下を招くことがあるため、自己判断での市販薬の連用は避け、医師の指導のもとで治療を進めることが大切です。
当院では、内視鏡検査による精査から生活指導・薬物療法まで一貫して対応しております。便秘でお悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。