上気道

かぜ(感冒)・咽頭炎・気管支炎

■ 疾患の概要

いわゆる「かぜ(風邪)」は、医学的には急性上気道炎と呼ばれ、ウイルス感染によって鼻や喉、気管支などの上気道に炎症が起こる疾患の総称です。一般的に「かぜ」としてまとめられる中には、感冒、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎などが含まれ、病原体や症状の部位によって分類されます。

  • 感冒:主に鼻水、くしゃみ、軽い喉の痛みなどが中心。

  • 咽頭炎:喉の奥にある咽頭が炎症を起こし、強い咽頭痛や発熱を伴う。

  • 気管支炎:気管支に炎症が広がり、咳や痰、喘鳴(ぜいぜいする呼吸音)を引き起こす。

かぜのほとんどはウイルスが原因で、代表的なものにライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルスなどがあります。

■ 発症の原因と流行の傾向

かぜは主に飛沫感染や接触感染によって広がります。ウイルスは空気中に咳やくしゃみによって放出され、それを吸い込むことで感染するほか、手すりやドアノブなどに付着したウイルスが手を介して目や鼻、口の粘膜から侵入することもあります。

日本では、秋から冬にかけての寒冷期に流行が多く見られ、乾燥や寒さによって粘膜の防御機能が低下しやすいため、感染リスクが高まります。小児や高齢者、基礎疾患を持つ方では特に注意が必要です。

■ 主な症状

かぜに関連する疾患には、それぞれ以下のような代表的な症状があります。

  • 感冒:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、軽い喉の痛み、微熱、だるさ

  • 咽頭炎:強い喉の痛み、発熱、飲み込み時の不快感、声のかすれ

  • 気管支炎:乾いた咳や痰、胸の違和感、微熱~高熱、呼吸音の異常(喘鳴)

咳が長引く場合や、発熱が高く持続する場合は、肺炎やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの他疾患との鑑別が重要です。

■ 診断に必要な検査

かぜは臨床症状と診察所見から診断されることがほとんどですが、必要に応じて以下のような検査を行うこともあります。

  • Nodoca(AI搭載インフルエンザ検査機器):のどの写真や症状からインフルエンザを診断する医療機器です。鼻やのどをこする検査が不要になります。
  • インフルエンザ迅速抗原検査:発症早期から使用可能で、A型・B型を判別可能。希望があれば使用します。

  • 新型コロナウイルス抗原・PCR検査:流行状況や重症度に応じて選択。

  • 血液検査(白血球数、CRP):細菌感染の有無や重症度を評価。

  • 胸部レントゲン:咳や発熱が続く場合、肺炎の除外目的で実施。

  • 咽頭培養検査:溶連菌性咽頭炎の鑑別に役立ちます。

当院では、必要最小限の検査を迅速に行い、過不足のない診断と対応を心がけています

■ 主な治療方法

かぜの多くはウイルス性であるため、特効薬は存在せず、対症療法が基本です。以下のような薬剤を症状に応じて使用します。

  • 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)

  • 鎮咳薬、去痰薬

  • 抗ヒスタミン薬(くしゃみ・鼻水に対して)

  • 消炎薬(喉の痛みや腫れに対して)

抗生物質は基本的に不要ですが、細菌感染が疑われる場合(例:化膿性咽頭炎、二次感染)には適切に処方します。

重症化のリスクがある方(高齢者、心肺疾患のある方、免疫低下のある方)には、早期の受診と経過観察が大切です。

■ クリニックで提供可能な対応

当院では、以下のような診療を行っております:

  • 一般診察と丁寧な問診による早期診断

  • インフルエンザ、新型コロナなどの迅速検査

  • 必要に応じた画像検査・血液検査

  • 患者様の症状や生活背景に応じた個別対応の薬物治療

  • 療養生活のアドバイス(栄養、水分、睡眠など)

  • 新型コロナウイルスのお薬は当院では扱っておりません。中等症以上は専門機関にご紹介します。

■ 予防と生活上の注意点

かぜの予防には、日常生活での基本的な感染対策が重要です。

  • 手洗い・うがいの励行

  • マスク着用(特に人混みでは有効)

  • 室内の加湿・換気を保つ

  • 栄養バランスの良い食事と十分な睡眠

  • 適度な運動とストレス管理

また、予防接種(インフルエンザワクチンなど)も有効な手段です。
毎年10月頃よりインフルエンザの予防接種を行っています。


「ただのかぜ」と軽視せず、適切な対応と経過観察が大切です。特に高齢の方や基礎疾患のある方では重症化のリスクもありますので、症状が長引く場合や急変があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

当院では、地域のかかりつけ医として、皆さまの健康を支える診療を提供しております。