胸部
心筋梗塞
■ 心筋梗塞とは
心筋梗塞とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を届ける冠動脈が完全に詰まり、心筋の一部が壊死してしまう病気です。血流が途絶えることで心筋細胞は短時間のうちにダメージを受け、迅速な治療を行わなければ命に関わる重大な状態となります。
多くの場合、動脈硬化によって冠動脈の内側にできたプラーク(脂肪やコレステロールの塊)が破れ、そこに血栓ができて完全に血管が詰まることが発症のきっかけとなります。
■ 主な原因と危険因子
心筋梗塞の最も多い原因は、冠動脈硬化による血流障害です。以下のような要因が危険因子として知られています:
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高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
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高血圧
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糖尿病
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喫煙
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加齢(男性は45歳以上、女性は55歳以上でリスク増加)
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肥満・内臓脂肪の蓄積
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家族歴(心疾患の既往)
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運動不足や過度なストレス
これらの要因が重なるほど、発症リスクは高まります。
■ 症状
心筋梗塞は突然発症し、以下のような激しい症状が現れます:
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胸の中央の強い痛みや圧迫感(20分以上持続する)
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左腕・背中・あご・首などへの放散痛
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冷や汗、吐き気、呼吸困難
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意識がもうろうとする、顔面蒼白
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不整脈、心停止を伴う場合もあり
なお、高齢者や糖尿病患者では、胸痛を伴わず「息苦しさ」や「強い倦怠感」として出現することもあります。こうした「非典型的症状」にも注意が必要です。
■ 診断に必要な検査
心筋梗塞の診断は、迅速かつ正確に行う必要がある緊急疾患です。主に以下の検査が用いられます:
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心電図検査(ECG):特徴的なST上昇や異常Q波を確認
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血液検査:トロポニン、CK-MBなど心筋障害マーカーの測定
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心エコー検査:心筋の動きや壁運動の異常を評価
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冠動脈造影(カテーテル検査):詰まっている血管の位置を特定し、必要に応じて治療(PCI)を同時に実施
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胸部X線検査・CT:心不全や大動脈解離との鑑別に用います
■ 治療
心筋梗塞の治療は一刻を争う対応が求められます。治療の柱は以下の2つです:
◉ 血流の再開(再灌流療法)
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経皮的冠動脈形成術(PCI):カテーテルにより詰まった血管をバルーンで拡げ、ステントを留置
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血栓溶解療法:状況に応じて、血栓を溶かす薬剤を点滴投与(特に搬送まで時間がかかる場合)
◉ 薬物療法(急性期および再発予防)
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抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)
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抗凝固薬
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β遮断薬、ACE阻害薬、スタチンなどを使用し、心機能の保護と再発予防を図ります
■ 入院後の管理と回復
急性期治療後は、心機能の評価と合併症の管理が必要です。数日〜2週間程度の入院管理ののち、**心臓リハビリテーション(心リハ)**を通じて、体力の回復・再発予防・精神的サポートを行います。
■ 心筋梗塞の予防
心筋梗塞は、生活習慣の改善と危険因子のコントロールにより予防が可能です。
◉ 予防のポイント
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高血圧・高脂血症・糖尿病などの管理
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禁煙(再発リスクを大幅に減らします)
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塩分・脂質を控えたバランスの良い食事
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定期的な有酸素運動(医師と相談のうえ)
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適正体重の維持
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ストレスの軽減と十分な睡眠
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定期健診や血液検査による早期発見
■ まとめ
心筋梗塞は発症すると短時間で命に関わる重篤な疾患ですが、発症前の予防と、早期の対応によって予後を大きく改善できる病気です。
「胸が締めつけられるような痛み」「息苦しさ」「異常な冷や汗」などの症状を感じた場合は、すぐに医療機関を受診または救急要請してください。当院では、心疾患の予防から早期診断・適切な治療・再発予防まで、一貫したサポートを行っております。