胃潰瘍

胃潰瘍とは、胃の内側を覆っている粘膜が傷つき、深くえぐれた状態になる病気です。胃は、食べ物を消化するために強い酸（胃酸）を分泌していますが、この酸から胃壁を守る「粘膜の防御機能」とのバランスが崩れることで、粘膜が損傷を受け、潰瘍が形成されます。

主な原因としては、ヘリコバクター・ピロリ（H. pylori）感染と非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）やアスピリンなどの薬剤の服用が挙げられます。また、過度なストレス・喫煙・アルコール摂取・不規則な生活習慣も発症に関与するとされています。

日本国内では、ピロリ菌の感染率が高かった世代（中高年層）を中心に罹患者が多く見られます。近年は若年層の感染率は低下していますが、高齢化の進展とともに、薬剤性潰瘍の頻度が増加しています。男女比では、男性にやや多く発症する傾向があります。

胃潰瘍の代表的な症状は以下の通りです。

症状の強さには個人差があり、無症状で経過する「無症候性胃潰瘍」もあります。とくに高齢者では痛みが出にくいため、出血や穿孔（胃壁に穴が開く）などの合併症で初めて発見されるケースもあります。

症状は胃炎や機能性ディスペプシア、胃がんとも似ているため、正確な診断が必要です。

胃潰瘍の診断には、以下の検査が行われます。

上部消化管内視鏡検査（胃カメラ）

　胃の内部を直接観察し、潰瘍の有無や大きさ、位置、深さを確認します。同時に、がんとの鑑別のために**組織検査（生検）**も行います。
ヘリコバクター・ピロリ検査

　潰瘍の根本的な原因のひとつであるピロリ菌の感染を調べます。当院ではまず血液検査による血清抗体検査を行います。除菌後の効果判定には尿素呼気試験を実施します。
血液検査

　炎症の程度、貧血の有無、栄養状態などを評価します。出血がある場合は、ヘモグロビン値の低下などが認められます。

診察では、まず症状や既往歴を確認し、必要に応じて上記の検査を組み合わせて確定診断に至ります。

胃潰瘍の治療は、原因の除去と粘膜の修復促進を目的として行われます。

薬物療法

　・胃酸分泌抑制薬（PPI、P-CAB、H2ブロッカー）

　・胃粘膜保護薬（レバミピド、スクラルファートなど）

　・制酸薬や消化酵素薬（症状に応じて）

　・止血剤（出血がある場合）

　ピロリ菌感染がある場合は、**抗生物質と胃酸抑制薬を用いた除菌治療（一次・二次除菌）**を行います。
生活習慣の見直し

　薬の効果を最大限に引き出すため、食事や嗜好品、ストレス管理などの生活習慣の改善が重要です。
外科的治療

　極めてまれですが、出血が止まらない場合や穿孔を起こした場合は、緊急手術が必要になることがあります。

当院では、内視鏡検査による精密診断、薬物療法、ピロリ菌除菌、生活指導まで一貫した治療体制を整えております。症状やライフスタイルに合わせて、最適な治療をご提案いたします。

胃潰瘍を予防・再発防止するためには、以下のような生活習慣の見直しが大切です。

胃潰瘍は、適切な治療によって多くの場合は数週間〜数か月で治癒しますが、放置すると出血や穿孔といった重篤な合併症を招くことがあります。早期発見・早期治療が何よりも大切です。

胃の痛みや不調を感じたら、ぜひ当院にご相談ください。丁寧な診察とわかりやすい説明、患者さまに寄り添った診療で、安心して治療を受けていただける体制を整えております。