症状
足の親指の痛み
【足の親指の痛みを起こす病気とその鑑別】
足の親指(母趾)の痛みは、関節・腱・骨・神経・循環障害など、多彩な要因で起こります。
特に急に腫れて強く痛む場合や、しびれ・発赤を伴う場合には、炎症性疾患や代謝異常、感染症などを考慮する必要があります。
1. 痛風(高尿酸血症による急性関節炎)
中年男性に多く、夜間に突然親指の付け根(母趾MTP関節)が腫れて激痛を生じます。
高尿酸血症により関節内に尿酸結晶が沈着し、炎症が起こります。アルコールや肉類の過剰摂取が誘因です。
検査:血液検査(尿酸値・CRP)、関節穿刺液(尿酸結晶の確認)、X線。
2. 変形性足趾関節症(母趾MTP関節症)
中高年女性に多く、長年の歩行・立ち仕事により関節軟骨がすり減ることで発症します。
歩行時や踏み込み時の痛み・関節のこわばり・変形がみられます。慢性的に進行するのが特徴です。
検査:X線(関節裂隙の狭小化や骨棘形成)、MRI。
3. 外反母趾
女性に圧倒的に多く、ハイヒールや幅の狭い靴が原因で母趾が外側に変形します。
靴との摩擦により母趾の付け根に痛み・腫れ・炎症を起こし、進行すると歩行障害にもつながります。
検査:X線(母趾角測定)、足底圧解析。
4. 陥入爪(巻き爪)・爪囲炎
若年〜中年層の男女に見られ、爪が皮膚に食い込むことで炎症や感染を起こします。
親指の爪のわきの腫れ・膿・強い圧痛が特徴です。糖尿病の方では重症化することがあります。
検査:視診、細菌培養検査(感染合併時)。
5. 滑液包炎(母趾種子骨炎・バニオン)
外反母趾や長時間の立位・歩行によって関節周囲の滑液包が炎症を起こす疾患です。
赤く腫れて熱を帯び、靴を履くと強く痛むのが特徴です。
検査:X線、超音波検査(滑液包の腫脹確認)、MRI。
6. 感染性関節炎
細菌が関節内に侵入して炎症を起こし、発熱・腫脹・強い痛みを伴います。
糖尿病や免疫低下のある方では発症リスクが高く、放置すると関節破壊や敗血症に至ることがあります。
検査:関節穿刺液培養、血液培養、CRP、X線。
7. 関節リウマチ
女性に多く、両側の足趾関節を含む多関節痛・朝のこわばりを特徴とします。
進行すると関節変形や歩行障害を来します。左右対称性の痛みが鑑別のポイントです。
検査:血液検査(RF、抗CCP抗体、CRP)、X線、関節エコー。
8. モートン病(足趾神経腫)
中年女性に多く、**足の指の間(特に第2〜3趾間)**の神経が圧迫されることでしびれや灼熱痛が生じます。
母趾に放散痛を感じることもあり、締め付けの強い靴が誘因になります。
検査:超音波検査、MRI、神経伝導検査。
9. 末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)
高齢男性や喫煙者、糖尿病患者に多く、足先の冷感・しびれ・潰瘍を伴います。
血流障害が進行すると安静時にも痛みを感じ、壊疽に至ることもあります。
検査:ABI(足関節上腕血圧比)、下肢動脈エコー、造影CT・MRA。
10. 痛風以外の代謝性疾患(偽痛風・カルシウム沈着性関節症)
高齢者に多く、関節内にピロリン酸カルシウム結晶が沈着することで関節炎を起こします。
急性の発赤・腫脹・疼痛を伴い、痛風と似た症状を呈します。
検査:関節穿刺液検査(結晶分析)、X線(石灰化像)、血液検査。
■ 診断に必要な主な検査
| 検査 | 内容 |
|---|---|
| X線検査 | 関節変形・骨棘・石灰化の有無を確認 |
| 血液検査 | 尿酸値・炎症反応(CRP)・リウマチ関連抗体の評価 |
| 関節穿刺液検査 | 結晶(尿酸・ピロリン酸)や細菌感染の確認 |
| 超音波・MRI検査 | 滑液包炎・軟部組織炎症・神経障害の評価 |
| 培養検査 | 感染性関節炎や爪囲炎の起因菌同定 |
| ABI・血流評価 | 動脈硬化による循環障害の有無を確認 |
| 足底圧解析 | 外反母趾や歩行バランス異常の評価 |
■ まとめ
足の親指の痛みは、痛風・外反母趾・変形性関節症などの整形外科的疾患から、
感染・血流障害・代謝性疾患まで多岐にわたります。
特に、
-
急な腫れと激痛 → 痛風・感染性関節炎
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慢性的な変形や摩擦痛 → 外反母趾・変形性関節症
-
潰瘍や冷感を伴う → 末梢動脈疾患
など、症状の経過が診断の重要な手がかりとなります。
当院では、血液検査・X線・エコー・関節液検査などを組み合わせ、整形外科的・内科的原因を総合的に評価いたします。
足趾の痛みや腫れを繰り返す場合は、早めの受診をお勧めします。