四肢・皮膚・全身

熱中症

■ 熱中症とは

熱中症とは、高温多湿な環境に長時間さらされることで、体温の調節機能が破綻し、体内に熱がこもって様々な障害を引き起こす状態を指します。軽症であればめまいや発汗異常などの症状にとどまりますが、重症化すると意識障害、臓器不全を伴い、命に関わることもあります。

屋外だけでなく、室内でも発症する可能性があり、特に高齢者や乳幼児、基礎疾患を有する方では注意が必要です。


■ 発症のメカニズム

人間の体は、汗をかいたり皮膚の血流を増やしたりすることで体温を下げています。しかし、高温多湿の環境下では汗の蒸発が妨げられ、熱が体内に蓄積しやすくなるため、体温調節が機能しなくなります。

また、脱水や塩分不足によって血液の循環が悪化し、脳や臓器への血流が不足することで様々な症状が引き起こされます。


■ 熱中症の分類(重症度による分類)

重症度

症状例

Ⅰ度(軽症)

めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉のこむら返り(熱けいれん)

Ⅱ度(中等症)

頭痛、吐き気、虚脱感、集中力の低下、脱水症状

Ⅲ度(重症)

意識障害、けいれん、高体温(40℃以上)、ショック症状、肝腎機能障害


■ 主な症状

  • 強い倦怠感や脱力感

  • めまい・ふらつき・失神

  • 大量の汗、または発汗が止まる

  • 筋肉のけいれん(足・手・腹部など)

  • 吐き気・頭痛

  • 意識のもうろう、呼びかけへの反応が鈍い

  • 呼吸が早くなる、脈が速くなる

  • 体温が異常に高い(40℃前後)

症状は突然現れることが多く、初期対応が遅れると急速に重症化することがあります


■ 発症しやすい人と環境

以下のような条件が重なると、熱中症のリスクが高まります:

  • 高齢者(特に75歳以上):体温調節機能の低下と脱水感の自覚の遅れ

  • 乳幼児:体表面積が広く、体温が上がりやすい

  • 持病のある方:心疾患、糖尿病、精神疾患、腎疾患など

  • 室内での生活環境:エアコンを使わない、風通しの悪い部屋

  • 暑さに慣れていない人(暑熱順化が不十分)

  • 水分・塩分補給が不十分な状態

  • 睡眠不足

■ 診断と必要な検査

症状と環境要因から臨床的に診断されます。重症度の評価や合併症の有無を確認するために、以下の検査が行われることがあります:

  • 体温測定(深部体温の評価)

  • 血液検査:脱水、腎機能、電解質、肝機能、筋分解(CK)などを評価

  • 尿検査:脱水の程度を反映

  • 心電図:不整脈や電解質異常のチェック


■ 治療

◉ 軽症(Ⅰ度〜Ⅱ度)

  • 涼しい場所へ移動し、衣服を緩める

  • 水分・塩分の補給(経口補水液が推奨されます)

  • 保冷剤・冷水・うちわなどによる冷却

  • 横になり足を少し上げて安静

◉ 重症(Ⅱ度〜Ⅲ度)

  • すぐに救急要請(119番)

  • 病院での輸液・電解質補正・体温管理が必要

  • 重度では集中治療室(ICU)での管理が行われることもあります


■ 熱中症の予防法

熱中症は予防可能な病気です。以下のポイントを意識しましょう。

◉ 日常生活での予防

  • こまめな水分補給(のどが渇く前に飲む)

  • 塩分も適度に摂取(特に大量に汗をかいたとき)

  • エアコンや扇風機を適切に使用

  • 涼しい服装・日よけ・帽子の活用

  • 屋外での無理な運動は避ける

  • 高温時は屋内でも注意(特に高齢者の室内熱中症)

  • 当院では漢方薬やビタミン・ミネラルを豊富に含んだ自費点滴をご用意しております。

◉ 暑さに慣れる(暑熱順化)

急に暑くなった季節の変わり目は特にリスクが高くなります。無理のない範囲で軽い運動や入浴で汗をかく習慣をつけることが有効です。


■ まとめ

熱中症は、誰にでも起こりうる身近で重篤な病気です。特に高齢者や持病をお持ちの方、小さなお子様は、重症化しやすく命に関わることもあるため、日頃からの予防と早めの対応が重要です

当院では、熱中症の早期診断と重症化リスクのある患者様への適切な対応を行っております。「体調がすぐれない」「外で倒れそうになった」などの経験がある方は、お気軽にご相談ください。