胸部

夏型過敏性肺臓炎

■ 疾患の概要

夏型過敏性肺炎(なつがたかびんせいはいえん)とは、住宅内に発生するカビ(真菌)に対するアレルギー反応によって起こる肺の炎症性疾患で、**過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)**の一種です。特に日本では、夏から秋にかけて発症することが多いため、この名称で呼ばれています。

主な原因は、トリコスポロン(Trichosporon)属という酵母様真菌です。このカビは、古い木造住宅や湿度の高い環境で増殖しやすく、畳、壁、浴室、エアコン内部、押し入れなどに生息することがあります。これらのカビの胞子を繰り返し吸入することで、免疫反応が起こり肺に炎症が生じます。

日本では、過敏性肺炎の中で最も多いタイプとされており、特に高温多湿の夏季に発症することが多いのが特徴です。発症はどの年代にもみられますが、住宅環境の影響を受けやすいため、同じ家に住む複数の家族が発症することもあります。

■ 主な症状

夏型過敏性肺炎の主な症状は、以下のような呼吸器症状と全身症状です。

  • 咳(乾いた咳)

  • 息切れ(呼吸困難)

  • 発熱

  • 倦怠感(体のだるさ)

  • 胸の違和感

特徴的なのは、自宅にいると症状が悪化し、外出すると症状が軽くなることがある点です。これは原因となるカビが住宅内に存在しているためです。

症状は風邪や気管支炎に似ていることがあり、初期には単なる呼吸器感染症と考えられることもあります。しかし、原因環境に繰り返し曝露されると炎症が慢性化し、**肺の線維化(肺が硬くなる状態)**が進行する可能性もあります。

そのため、早期に原因を特定し、環境を改善することが重要です。

■ 診断に必要な検査

夏型過敏性肺炎の診断には、症状や生活環境の情報とともに、複数の検査を組み合わせて行います。

血液検査

血液検査では、炎症の程度やアレルギー反応を評価します。また、原因となるカビに対する**特異抗体(トリコスポロン抗体)**を調べることがあります。

胸部X線検査

胸部レントゲンでは、肺の炎症によるびまん性の陰影がみられることがあります。ただし初期には異常がはっきりしない場合もあります。

胸部CT検査

CT検査はより詳細に肺の状態を確認でき、すりガラス影や小葉中心性結節影など、過敏性肺炎に特徴的な所見が確認されることがあります。

呼吸機能検査

肺の換気機能や酸素交換能力を評価するために行われます。

また、症状と住宅環境の関係が重要であるため、自宅を離れると症状が改善するかどうかも診断の手がかりになります。

■ 主な治療方法

夏型過敏性肺炎の治療では、原因となるカビへの曝露を避けることが最も重要です。

環境改善

以下のような対策が推奨されます。

  • 室内のカビ除去

  • エアコンの清掃

  • 押し入れや浴室の換気

  • 除湿器の使用

  • 古い畳や壁材の交換

場合によっては、一時的に住環境を離れることが症状改善につながることもあります。

薬物療法

症状が強い場合や炎症が高度な場合には、以下の治療が行われることがあります。

  • 副腎皮質ステロイド(ステロイド薬)

  • 咳止めや去痰薬などの対症療法

多くの場合、原因環境から離れることで症状は改善しますが、長期間曝露が続くと慢性化する可能性があるため、早期の対応が重要です。

■ 予防や生活上の注意点

夏型過敏性肺炎の予防には、住宅内のカビ対策が重要です。

以下の点に注意しましょう。

  • 室内の湿度を60%以下に保つ

  • 定期的な換気を行う

  • エアコンや換気扇の定期清掃

  • 浴室や押し入れなど湿気の多い場所のカビ対策

  • 古い畳やカーペットの交換

また、夏から秋にかけて、咳や息切れが長く続く場合には、風邪と自己判断せず医療機関での評価が必要です。


夏型過敏性肺炎は、原因となる環境を改善することで症状が大きく改善する疾患です。

長引く咳や息切れ、発熱などの症状がある場合や、家にいると症状が悪化する場合には、早めの受診をおすすめします。当院では呼吸器症状の診療にも対応しており、必要に応じて専門医療機関と連携しながら診療を行っております。お気軽にご相談ください。