口腔内・のど・食道

逆流性食道炎

■ 疾患の概要

逆流性食道炎とは、胃の内容物(胃酸・消化酵素など)が食道へ逆流することで食道粘膜に炎症が生じる疾患です。本来、胃と食道の境界にある下部食道括約筋(LES)が弁の役割を果たし逆流を防いでいますが、この筋肉が弛緩・機能低下することで逆流が起こります。

日本では食生活の欧米化・肥満の増加・高齢化を背景に患者数が増加しており、成人の約10〜20%が罹患しているとされています。40歳以降の中高年に多く、男性にやや多い傾向があります。

主な原因・リスク因子は以下の通りです。

下部食道括約筋の機能低下(加齢・薬剤の影響など)
食道裂孔ヘルニア(胃の一部が横隔膜を越えて胸腔内に入り込む状態)
肥満・内臓脂肪の増加(腹圧上昇により逆流が起きやすくなる)
過食・脂肪分の多い食事・アルコール・カフェイン・チョコレート
喫煙(下部食道括約筋を弛緩させる)
妊娠(子宮増大による腹圧上昇と女性ホルモンの影響)
ストレス(胃酸分泌亢進・知覚過敏)
特定の薬剤(カルシウム拮抗薬・硝酸薬・抗コリン薬など)


■ 逆流性食道炎の分類

逆流性食道炎は内視鏡所見によって以下のように分類されます。

びらん性逆流性食道炎(ERD):内視鏡で食道粘膜のびらん・潰瘍が確認できるタイプ。ロサンゼルス分類(Grade A〜D)で重症度を評価します。
非びらん性逆流性食道炎(NERD):胸やけなどの典型的な症状があるにもかかわらず、内視鏡では粘膜障害が認められないタイプ。患者の約60〜70%を占めます。
バレット食道:長期にわたる逆流により食道下部の粘膜が胃粘膜に類似した組織(腸上皮化生)に置き換わった状態。食道腺がんのリスクが高まるため定期的な内視鏡観察が必要です。


■ 主な症状

逆流性食道炎の代表的な症状は胸やけ呑酸(どんさん)です。

胸やけ:胸の中央部が焼けるような感覚。食後・前屈み・横になったときに悪化しやすい
呑酸:酸っぱい・苦い液体がのどまで上がってくる不快感
のどの違和感・つかえ感:後鼻漏と間違われることもある
慢性的な咳・声のかすれ:胃酸が気道を刺激することで生じる(咽喉頭逆流症)
みぞおちの痛み・不快感
胸痛狭心症心筋梗塞と症状が似ることがあり注意が必要
腹部膨満感・げっぷ
口臭・口の中の酸っぱい感覚

症状が軽度の不快感のみの場合もありますが、炎症が進行すると食道潰瘍・出血・食道狭窄(飲み込みにくい)・バレット食道などの合併症を引き起こすことがあります。

なお、胸痛が強い場合は心疾患との鑑別が重要です。心臓に問題がないか確認するために心電図検査も行います。


■ 診断に必要な検査

✅ 当院で施行可能な検査

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):最も重要な検査です。食道粘膜のびらん・潰瘍・炎症の程度をロサンゼルス分類で評価し、バレット食道胃がん食道がんなどの重篤な疾患も同時に確認できます。症状が典型的でも、PPIやP-CABの継続処方には内視鏡による確定診断が原則必要です。
血液検査:貧血(食道炎による出血)・ヘリコバクター・ピロリ感染の有無などを評価します。
心電図検査:胸痛を伴う場合に心疾患(狭心症心筋梗塞)との鑑別のために行います。
腹部超音波検査:胆石など逆流症状に類似した疾患の除外に用います。

⚠️ 当院では施行できない検査(必要な場合は専門医療機関へ紹介)

24時間食道内pHモニタリング:食道内の酸逆流頻度を24時間にわたって測定する検査です。NERDの診断・治療効果判定に有用ですが、専門設備が必要なため当院では施行できません。
食道内圧検査(マノメトリー):食道の運動機能・下部食道括約筋圧を測定します。アカラシアなど運動障害との鑑別に用います。
上部消化管バリウム造影検査:食道裂孔ヘルニアの形態評価などに用いますが、当院では施行できません。


■ 主な治療方法

治療は薬物療法・生活習慣の改善・再発予防が基本です。当院では患者さまの症状・内視鏡所見・生活背景に合わせた治療を提案しております。

薬物療法

プロトンポンプ阻害薬(PPI):オメプラゾール・ランソプラゾール・エソメプラゾールなど。胃酸分泌を強力に抑制する第一選択薬です。通常4〜8週間の内服で症状・粘膜の改善が得られます。
カリウム競合型アシッドブロッカー(P-CAB):ボノプラザン(タケキャブ)・テゴプラザンなど。PPIより速効性・持続性が高く、夜間の胸やけにも有効な最新の胃酸分泌抑制薬です。
H2ブロッカー(H2受容体拮抗薬):ファモチジン・ラニチジンなど。PPIより効果はやや弱いですが比較的安価で、軽症例・維持療法・頓服使用に適しています。
制酸剤・胃粘膜保護薬:アルギン酸・スクラルファートなど。症状緩和の補助として使用します。
消化管運動改善薬:胃の排出を促進し逆流を減らします。

PPIおよびP-CABの2回目以降の処方には、原則として胃カメラによる確定診断が必要です。症状があっても未受診の方は早めの内視鏡検査をお勧めします。

症状が改善した後も再発しやすい疾患であるため、重症例・バレット食道がある場合は維持療法(長期服薬)が推奨されます。

生活習慣の改善

薬物療法と並行して生活習慣を改善することが再発予防に重要です。(詳細は下記「予防や生活上の注意点」をご参照ください)

手術療法

内科的治療で改善しない重症例・大きな食道裂孔ヘルニアを伴う場合は、腹腔鏡下噴門形成術(ニッセン手術など)が検討されます。手術適応と判断した場合は外科専門医療機関へ紹介いたします。


■ よくある質問

Q. 薬を飲めば症状が改善しますが、胃カメラは必要ですか?

症状が改善していても、内視鏡で確認しなければ食道がん・胃がん・バレット食道などの重篤な疾患を見落とす可能性があります。また、PPIやP-CABの継続処方には内視鏡による確定診断が原則必要です。症状が軽くても一度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。

Q. 逆流性食道炎は完治しますか?

適切な治療と生活習慣の改善で症状の改善・粘膜の回復は期待できますが、再発しやすい疾患です。特に食道裂孔ヘルニアを伴う場合・バレット食道がある場合・重症例は長期的な管理が必要です。薬を自己判断で中断すると再発することが多いため、医師と相談しながら治療を進めることが重要です。

Q. 市販の胃薬で様子をみてもよいですか?

市販の制酸剤やH2ブロッカーで一時的に症状が緩和することはありますが、根本的な診断・治療にはなりません。2週間以上症状が続く場合・体重減少・飲み込みにくい・血便などの症状がある場合は必ず受診してください。

Q. 逆流性食道炎と食道がんは関係がありますか?

長期にわたる胃酸の逆流がバレット食道を引き起こし、バレット食道は食道腺がんのリスク因子となります。バレット食道と診断された場合は定期的な内視鏡観察が重要です。


■ 予防や生活上の注意点

食べすぎを避け腹八分目を心がける(食後の胃内圧上昇を防ぐ)
食後2時間は横にならない(食後すぐの就寝・前屈みの姿勢を避ける)
逆流を悪化させる食品を控える:脂肪分の多い食事・チョコレート・コーヒー・炭酸飲料・柑橘類・辛い食べ物・アルコール
禁煙(喫煙は下部食道括約筋を弛緩させ逆流を促進する)
適正体重の維持(内臓脂肪型肥満は腹圧を上昇させ逆流を悪化させる)
就寝時に上半身を高くする(枕を高くする・ベッドの頭側を10cm程度高くする)
締め付けの強い衣服・コルセットを避ける(腹圧上昇の原因になる)
ストレス管理(適度な運動・十分な睡眠・リラクゼーション)
処方された薬を自己判断で中断しない
・症状が再発・悪化した場合は早めに受診する


■ ご予約はこちら

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