生活習慣病
糖尿病
■ 疾患の概要
糖尿病は、体内の血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなる疾患です。血糖値は主にインスリンというホルモンによって調節されていますが、このインスリンの分泌量が不足したり、うまく働かなくなったりすることで、血糖が適切にコントロールできなくなります。
糖尿病は大きく分けて以下の4つの型があります:
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1型糖尿病:自己免疫によって膵臓のインスリン分泌細胞が破壊されることで発症し、若年発症が多い。
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2型糖尿病:インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」や、分泌の低下によって生じ、多くは生活習慣に関連します。
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妊娠糖尿病:妊娠中に初めて認められる糖代謝異常。
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その他の特定の原因による糖尿病:膵臓疾患、薬剤、遺伝的要因などが関与します。
なかでも日本人の糖尿病の約95%は2型糖尿病です。
■ 発症の原因と傾向
2型糖尿病は、食生活の乱れ(過食・高脂肪・高糖質)や運動不足、肥満、喫煙、ストレス、遺伝的素因などが複合的に関与して発症します。特に内臓脂肪の蓄積は重要なリスク因子とされています。
日本では、40歳以上の成人の約6人に1人が糖尿病もしくはその予備群と推定されており、年齢とともに増加傾向にあります。男女差は少なく、誰にでも起こりうる疾患です。
■ 主な症状
糖尿病の初期は無症状のことが多く、気づかずに進行してしまうことがあります。症状として現れるのは以下のような状態です:
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喉が渇く、多く水を飲む
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尿の回数が増える(多尿)
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体重が減少する
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疲れやすく、だるい
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傷が治りにくい
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手足のしびれや感覚異常
血糖コントロールが長期間悪いまま放置されると、以下の合併症が進行する可能性があります:
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網膜症:視力障害、失明
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腎症:腎不全、透析の原因に
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神経障害:しびれ、感覚低下、足潰瘍
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動脈硬化性疾患:心筋梗塞、脳梗塞のリスク増加
■ 診断に必要な検査
糖尿病の診断には以下の検査が行われます:
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空腹時血糖値:126mg/dL以上で糖尿病型
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随時血糖値:200mg/dL以上で糖尿病型
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HbA1c(ヘモグロビンA1c):過去1〜2ヶ月の平均血糖を反映。6.5%以上で糖尿病型
上記の結果が複数回認められることで、診断が確定します。
また、尿検査での糖の有無や蛋白尿の有無(腎症スクリーニング)、眼底検査、神経障害評価などの合併症チェックも重要です。
当院では、血液・尿検査に加えて、必要に応じて連携施設での精密検査や眼科紹介も行っています。
■ 主な治療方法
糖尿病の治療は、病型や進行度、合併症の有無によって個別に選択されます。基本となるのは以下の3本柱です:
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食事療法:糖質・カロリーの適正な摂取と栄養バランスの改善。過食や不規則な食事を避け、毎日の食習慣の見直しが最も重要です。
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運動療法:ウォーキングや軽い筋トレを日常的に行うことで、インスリンの効きを改善し血糖コントロールを向上させます。
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薬物療法:内服薬(ビグアナイド、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など)やインスリン注射が用いられます。
当院では、患者さま一人ひとりに応じた生活指導や薬剤調整を行い、合併症予防とQOL(生活の質)の維持・向上を目指した診療を心がけています。
■ 当院の処方パターン
腎機能や重症度によっても変化しますが、当院では下記の処方を基本としております。
当院採用のSGLT2阻害薬は朝1回だけの内服でよく、心機能・腎機能の保護作用があるため当院では第1選択として使用しています。
2剤目はGLP-1受容体阻害薬との組み合わせか、合剤で朝1錠のみで続けられるDPP-4阻害薬との組み合わせを用いています。
- 1剤投与
SGLT2阻害薬 - 2剤投与
SGLT2阻害薬+GLP-1受容体阻害薬 or SGLT2阻害薬+DPP-4阻害薬(合剤) - 1日2回以上の投与が許容できる場合
ビグアナイド薬
これらの薬剤でHbA1c 7%以下にコントロールができない場合に適宜追加を行いますが、実質4剤でコントロールできない場合には注射薬への移行を検討します。
■ 予防と生活上の注意点
糖尿病の予防および進行防止には、日常生活の改善が不可欠です:
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バランスの良い食事を規則正しく摂る
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毎日の適度な運動を習慣化する
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十分な睡眠とストレス管理
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禁煙
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定期的な健診と早期発見
また、糖尿病は「自覚症状が乏しいからこそ怖い病気」です。健康診断などで「血糖値が高め」と指摘された方は、放置せず早めにご相談ください。
糖尿病は「一生付き合っていく病気」とも言われますが、適切な治療と生活管理により、健康的な日常を維持することが可能です。
気になる症状がある方や、生活習慣に不安のある方は、ぜひ一度当院にご相談ください。かかりつけ医として、丁寧にサポートいたします。