小腸・大腸・肛門
大腸がん
1. 疾患の概要
大腸がんとは、大腸の粘膜に発生する悪性腫瘍の総称で、結腸および直腸にできるがんを含みます。大腸の粘膜細胞が異常な増殖を続けることで発症し、多くの場合、良性のポリープ(特に腺腫性ポリープ)ががん化して進行します。進行度に応じて周囲組織への浸潤や、リンパ節・肝臓・肺などへの転移が生じることもあります。
発症の原因としては、高脂肪・低食物繊維の食事、喫煙、過度な飲酒、運動不足、肥満などの生活習慣のほか、遺伝的素因や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)もリスク因子とされています。また、家族歴のある方は特に注意が必要です。
日本では高齢化の影響もあり、大腸がんの患者数は年々増加傾向にあります。がん全体の中でも罹患数・死亡数ともに上位に位置し、特に50歳以上の男女に多く見られますが、食生活の欧米化により、40代以下での発症も増えてきています。
2. 主な症状
大腸がんの症状は、がんの発生部位や進行度によって異なりますが、代表的なものとして以下のような症状が挙げられます。
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血便(特に鮮血や黒っぽい便)
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便秘と下痢を繰り返す
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便が細くなる(鉛筆状便)
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腹痛や腹部膨満感
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体重減少
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貧血(とくに右側大腸がんに多い)
早期の大腸がんでは無症状のことも多く、症状が現れたときにはすでに進行している場合も少なくありません。過敏性腸症候群や痔核と誤解されることもあるため、持続的な症状がある場合は早期受診が重要です。
3. 診断に必要な検査
大腸がんの診断には、以下のような検査が行われます。
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便潜血検査:最も基本的なスクリーニング検査。血液が混じっているかを調べます。
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大腸内視鏡検査:腸内を直接観察し、ポリープや腫瘍を確認。必要に応じて組織を採取(生検)します。
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胸腹部CT検査:がんの進行度やリンパ節・他臓器への転移の有無を評価します。
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血液検査(腫瘍マーカーCEA・CA19-9など):補助的に使用されますが、進行例では有用な情報となります。
検査の流れとしては、まず便潜血検査や問診により疑いを持ち、必要に応じて大腸内視鏡検査を実施。病理検査で確定診断を行い、画像検査で進行度(ステージ)を評価します。
4. 主な治療方法
大腸がんの治療は、がんのステージ(進行度)に応じて選択されます。
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早期がん(粘膜内にとどまる病変):内視鏡的切除(ポリペクトミーやEMR、ESD)で根治可能な場合があります。
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進行がん:外科手術(結腸や直腸の切除)が基本。リンパ節郭清も行います。
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補助療法:術後の再発予防や、転移がある場合には抗がん剤治療(化学療法)や分子標的薬が用いられます。
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放射線治療:特に直腸がんで局所コントロールを目的として行われます。
当院では、早期発見を目的とした大腸内視鏡検査の実施と、内視鏡によるポリープ切除を積極的に行っております。必要に応じて、専門機関との連携のもとで外科的治療や化学療法への橋渡しも行います。
5. 予防や生活上の注意点
大腸がんの予防には、以下のような生活習慣の見直しが重要です。
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食生活の改善:動物性脂肪の過剰摂取を控え、野菜・果物・食物繊維を多く取り入れたバランスの良い食事を心がけましょう。
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適度な運動:肥満や便秘の予防にもなります。
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禁煙・節酒:喫煙は全てのがんのリスクを高めるとされています。
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定期的な検診:特に50歳以上の方、家族歴のある方は、年に一度の便潜血検査や2,3年に一度の大腸内視鏡検査が推奨されます。
大腸がんは、早期発見・早期治療によって高い治癒率が期待できる疾患です。当院では、苦痛の少ない内視鏡検査や、患者様一人ひとりの病状に応じた丁寧な治療計画の立案を行っております。症状がある方はもちろん、検診をご希望の方もお気軽にご相談ください。
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