症状
貧血
■ 貧血を起こす主な鑑別疾患(全10選)
1. 鉄欠乏性貧血
体内の鉄分が不足し、赤血球の産生が低下することで生じる最も頻度の高い貧血です。
月経のある若い女性や消化管出血のある方に多く、倦怠感・動悸・爪の変形を伴います。
【検査】血液検査(Hb・MCV・血清鉄・フェリチン・TIBC)、便潜血検査。
2. 消化管出血(胃潰瘍・大腸がんなど)
上部・下部消化管からの慢性出血が鉄欠乏性貧血の重要な原因となります。
中高年に多く、黒色便・血便・体重減少を伴う場合は精密検査が必要です。
【検査】便潜血検査、胃内視鏡・大腸内視鏡、腹部CT。
3. 胃がん・大腸がん
腫瘍からの慢性出血や腫瘍による栄養障害が貧血をきたします。
50歳以上に多く、食欲低下・体重減少・便通変化を伴うことがあります。
【検査】胃内視鏡・大腸内視鏡、腹部CT、腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)。
4. 萎縮性胃炎(ビタミンB12欠乏・悪性貧血)
胃粘膜の萎縮により内因子の分泌が低下し、ビタミンB12の吸収障害から大球性貧血が生じます。
高齢者やピロリ菌感染歴のある方に多く、舌炎・末梢神経障害を伴うことがあります。
【検査】血液検査(Hb・MCV・ビタミンB12・葉酸)、胃内視鏡。
5. 潰瘍性大腸炎・クローン病
消化管の慢性炎症による出血・栄養吸収障害が複合的に貧血を引き起こします。
10〜30代に多く、血便・下痢・腹痛・体重減少を伴います。
【検査】大腸内視鏡、血液検査(CRP・鉄・フェリチン・アルブミン)、便中カルプロテクチン。
6. 慢性疾患に伴う貧血(炎症性貧血)
慢性感染・炎症・悪性腫瘍などにより造血が抑制され、正球性〜小球性貧血が生じます。
高齢者や慢性疾患を持つ方に多く、原疾患の治療が貧血改善の鍵となります。
【検査】血液検査(Hb・フェリチン・CRP・EPO)、原疾患の精査。
7. 糖尿病性腎症・慢性腎臓病
腎機能低下によりエリスロポエチン産生が低下し、正球性貧血が生じます。
長期の糖尿病・高血圧患者に多く、倦怠感・むくみ・息切れを伴います。
【検査】腎機能(クレアチニン・eGFR)、尿検査(蛋白・潜血)、血液検査(EPO)。
8. 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの低下により造血機能が抑制され、正球性〜大球性貧血が生じます。
中高年女性に多く、倦怠感・むくみ・体重増加・寒がりを伴います。
【検査】甲状腺ホルモン(TSH・FT4)、血液検査(Hb・MCV)。
9. 溶血性貧血・再生不良性貧血
赤血球の破壊亢進または骨髄での産生低下により重篤な貧血が生じます。
発症年齢は疾患により異なり、黄疸・脾腫・出血傾向などを伴うことがあります。
【検査】血液検査(網状赤血球・LDH・ハプトグロビン・直接クームス試験)、骨髄検査。
10. 血液疾患(白血病・悪性リンパ腫・骨髄異形成症候群)
骨髄の造血障害により進行性の貧血・出血傾向・感染症への脆弱性が生じます。
発熱・リンパ節腫脹・体重減少・全身倦怠感を伴うことが多いです。
【検査】血液検査(末梢血塗抹・白血球分画)、骨髄検査、CT・PET検査。
■ 補足
貧血は消化器・血液・内分泌・腎臓など多くの疾患で生じます。特に急速に進行する貧血・消化管出血のサイン(黒色便・血便)・体重減少・リンパ節腫脹を伴う場合は、悪性疾患を念頭に置いた速やかな精密検査が必要です。