小腸・大腸・肛門
メッケル憩室
■ 疾患の概要
メッケル憩室とは、胎児期に存在する卵黄腸管(おうそうちょうかん)の遺残によって生じる小腸(回腸末端)の先天性憩室です。消化管の先天奇形の中では最も頻度が高く、一般人口の約2%に存在するとされています。「2の法則」として知られており、回腸末端から約60cm(2フィート)の部位に多く、長さ約2cm、2歳以下で症状が出やすく、約2%が生涯で何らかの合併症を起こすとされています。
多くは無症状で生涯発見されませんが、一部では出血・炎症・腸閉塞などの合併症を引き起こします。憩室内に胃粘膜や膵組織が迷入していることがあり、これが出血や炎症の原因となります。
■ 主な症状
多くは無症状ですが、合併症が生じた場合は以下の症状が現れます。
・消化管出血:painless(無痛性)の鮮血便または暗赤色便。小児に多く、迷入した胃粘膜からの酸分泌による潰瘍出血が原因となります。
・憩室炎:右下腹部痛・発熱を伴い、急性虫垂炎と症状が酷似するため術前診断が難しいことがあります。
・腸閉塞:憩室索状物による絞扼性腸閉塞を起こすことがあります。
・腸重積:憩室が先進部となって腸重積を起こすことがあります。
小児における無痛性の下血は、メッケル憩室を強く疑う所見です。
■ 診断に必要な検査
・メッケルシンチグラフィ:迷入胃粘膜に集積する放射性同位体を用いた核医学検査で、最も特異度の高い検査です。
・腹部CT検査:憩室の位置確認・炎症・穿孔の評価に有用です。
・腹部超音波検査:炎症を伴う場合に壁肥厚などが確認できることがあります。
・カプセル内視鏡・ダブルバルーン内視鏡:出血源の同定に有用です。
・血液検査:貧血・炎症反応を評価します。
■ 主な治療方法
・外科的切除(憩室切除術):出血・炎症・腸閉塞などの合併症が生じた場合は外科的切除が標準治療です。腹腔鏡下手術が広く行われています。
・保存的治療:出血が軽微な場合は輸血・補液などの保存的治療が行われることもありますが、再出血のリスクがあるため手術が推奨されます。
当院では疑わしい症状がある場合、速やかに専門医療機関と連携して対応いたします。
■ 予防や生活上の注意点
先天性疾患のため予防は困難ですが、小児で繰り返す無痛性の血便・貧血がある場合は早期に専門医を受診することが重要です。無症状で発見された場合の予防的切除については、合併症リスクと手術リスクを勘案して担当医と相談してください。