上気道
新型コロナウイルス感染症
■ 疾患の概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症です。2019年末に中国で最初に報告されて以来、全世界的に感染が拡大し、パンデミック(世界的大流行)として大きな社会的影響を与えました。
ウイルスの変異により、アルファ株・デルタ株・オミクロン株などさまざまな系統が報告されており、それぞれに感染力や重症化リスクが異なります。現在では季節性のウイルス感染症の一つとして扱われつつありますが、高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては依然として注意が必要な疾患です。
■ 発症の原因と流行傾向
COVID-19は、感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染、および手指や環境表面を介した接触感染が主な感染経路です。ウイルスの潜伏期間は1〜5日程度(最大14日)で、症状が出る前から周囲に感染させることがあるため、感染拡大を防ぐうえで特に注意が必要です。
現在では、季節性の流行がみられ、冬から春にかけての感染者数の増加が多く報告されています。また、変異株によって感染力や再感染の可能性が異なるため、動向に応じた柔軟な対応が求められます。
■ 主な症状
新型コロナウイルス感染症は、無症状から重篤な肺炎まで幅広い臨床像を示すことが特徴です。主な症状は以下の通りです:
-
発熱(37.5℃以上)
-
咳・のどの痛み・鼻水
-
全身のだるさ(倦怠感)
-
頭痛・筋肉痛
-
味覚・嗅覚の異常(比較的特徴的な症状)
-
呼吸困難、肺炎症状(重症例)
オミクロン株以降は、上気道感染症に近い症状(咽頭痛・鼻水・せきなど)が多く報告されており、従来のインフルエンザや風邪と区別が難しいこともあります。
高齢者や基礎疾患を持つ方、免疫が低下している方では、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心筋炎、脳症など重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期の対応が重要です。
■ 診断に必要な検査
COVID-19の診断には以下の検査が使用されます:
-
抗原検査(定性)
ウイルスのタンパク質を検出する簡易検査で、15分程度で結果が判明します。迅速ですが、発症初期やウイルス量が少ない場合は検出されないこともあります。 -
PCR検査
ウイルスの遺伝子(RNA)を検出する高感度な検査です。結果判明まで数時間〜1日程度かかる場合があります。より正確な診断が必要な場面で使用されます。 -
抗原定量検査
ウイルス量を数値として評価する検査で、PCRに近い感度があります。医療機関での確定診断や療養期間の判断材料にもなります。
当院では、症状やご希望に応じて、迅速抗原検査やPCR検査の実施が可能です。検査結果に基づいて、適切な治療や療養のアドバイスを行っています。
■ 主な治療方法
軽症〜中等症の患者さまには、以下のような対症療法が基本となります:
-
解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)
-
咳止め、去痰薬
-
水分・栄養補給、安静
高齢者や基礎疾患を持つ方、重症化リスクのある方には、症状発現早期から以下の抗ウイルス薬の使用が検討されます:
-
モルヌピラビル(ラゲブリオ®)
-
ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド®)
-
レムデシビル(ベクルリー®)(点滴投与)
これらの薬剤は、発症から5日以内の使用が推奨されており、重症化のリスクを軽減することが知られています。
■ クリニックでの対応
当院では以下のような対応を行っております:
-
発熱・風邪症状のある方への別室診療・検査の実施
-
抗原検査・PCR検査の提供
-
高齢者や基礎疾患をお持ちの方の経過観察と療養指導
また、ご家族内の感染や濃厚接触の対応についての相談も承っております。
当院では抗ウイルス薬の処方は行っておりません。
中等症以上やリスクが高く投与が必要な患者さんは専門施設にご紹介いたします。
■ 予防と生活上の注意点
感染予防には以下の対策が重要です:
-
定期的なワクチン接種(特に高齢者やリスクの高い方)
-
手洗い、マスク着用、換気の徹底
-
体調がすぐれない場合は早めの受診と療養
-
混雑した場所の回避、会食時の注意
感染力の強いウイルスであるため、自分自身の予防が周囲への思いやりにもつながります。
新型コロナウイルス感染症は、発症後の迅速な対応と適切な療養が重症化のリスクを下げる鍵です。
体調に不安を感じた際は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。かかりつけ医として、丁寧にサポートいたします。